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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第三十八話 勇者爆誕

 ガチャ屋のリニューアルは大成功し、今までの売り上げ記録を大幅に更新した。

 だがその日の営業が終わっての食事の時間、衝撃的な事実を知ることになる。


「勇者!?」

「勇者が誕生したの!?」

「うん。間違いない」


 レファはいつもと変わらない様子で淡々と話す。

 勇者のことより目の前のしゃぶしゃぶの肉のほうが大事なようだ。

 あまり火を通しすぎても美味しくないからな。


 そんなレファがさっき急に口にした言葉が「あっ、そうだ、勇者爆誕」だ。


 爆誕という言葉についてはまぁいい。

 勇者と聞いて色々な疑問が浮かんでしまった。


「今まで勇者はいなかったのか?」

「少し前までいたけど死んだ」

「勇者って一人だけなのか?」

「基本は。でも勇者って自分で言う人間はいっぱいいる」


 誰しもが勇者に憧れるから言ってみたくなるよな。

 気持ちは凄くわかるぞ。


「少し前ってのはどれくらい前のことだ?」

「私がここに住みだすより少し前」


 俺とアイリは顔を見合わせる。

 アイリも同じことを考えてるらしいな。


「勇者が誕生したってどうやってわかったんだ?」

「なんでだろう? 勘?」


 魔族には知らされるようになってるのかもな。

 魔王に近いレファだからかもしれないが。


「まだ生まれたばかりの赤ちゃんってことか?」

「違う。十七歳の人間女。急に勇者に目覚めることはよくある」

「そこまでわかってるのか」

「一応ここ三日間ほど調査はしたからね」


 こないだ早く起きてどこかに行ってたのは勇者が誕生したからだったのか。

 魔王にとっては一大事だからな。


「ということは見つけたんだよな?」

「うん」

「なにもしないのか?」

「するよ。でも制限があるからね」

「制限?」

「うん。同じくらいのレベルの相手しか戦えないの」


 そんな設定まであるのか。

 確かにゲームでは自分が強くなるにつれ敵も強くなるのが当たり前だけど……。


「もし勇者が今魔王城に乗り込んできたらどうするんだ?」

「それは大丈夫。相手がバカだってことで殺せる」


 ちゃんと順を追って強くなりなさいってことか。

 今は雑魚モンスターばかりの初期村周辺にいるんだろうな。


「勇者ってわかるなにかがあるのか?」

「オーラ? 他の人間とは色が違う」


 また俺にはわからない類のやつか。

 てことは勇者はこの世界の住人から常に監視されているようなものじゃないか。


「勇者が魔王城に来るのはいつになるんだ?」

「普通は何年も先だね」

「その間魔王はなにをするんだ?」

「魔族やボスモンスターにちょっかいかけさせる」

「ちょっかい? モンスターをけしかけたりってこと?」

「うん」


 おそらくそれもレベル設定がされてるんだろうな。

 まさにリアルRPGだ。


 アイリの目が少し輝いているように見える。

 勇者に憧れてたんだから無理もないか。


「レファの魔族としての仕事になにか影響はあるのか?」

「うん。モンスターの数を増やすことになった」

「リリアンヌもか?」

「そうよ! 勇者なんて早く死ねばいいのに!」


 そうか二人ともこれまでより忙しくなるんだな。


 勇者が誕生したからモンスターを増やすのか。

 てっきりモンスターが増えたから勇者が誕生するもんだと思ってたが逆なんだな。


 まぁどっちにしろ俺には関係ないことだ。

 レファたちの体調は気遣ってやらないといけないかもしれないが。

 もっと色んな食事を美味しく作れるように努力してみるか。


「他は今まで通りの生活で問題ないんだよな?」

「うん。なにも変わらない」

「だからもっとお肉を追加しなさい! 豚がいいわ!」


 それにしても勇者対魔王か。

 ますますゲームっぽくなってきたな。


◇◇◇


「どう思う?」

「あのタイミングは勇者が死んだすぐあとだったのね」


 地下一階の作業部屋でアイリと二人になったので勇者の件について話をする。


「そうらしいな。それと今度の勇者だが」

「転移者の可能性はあるよね」

「やっぱりそう思うよな」

「でも私たちがいた世界からとは限らないけど」

「わざわざ同じ世界からは呼ばないか」

「うん。それに神様はいくつも世界があるみたいな話ぶりだったし」


 普通に考えたらこの世界の住人の可能性が大きいだろう。

 レファは急に勇者に目覚めることはよくあるって言ってたからな。


「もしだぞ、勇者が転移者だった場合はどうする?」

「……スルーでいいんじゃない?」

「もし会っても気付かないフリをするということでいいんだな?」

「……今の生活が壊れてほしくないし」

「わかった。ガチャ屋に来る可能性はあるからな」

「でも寿司屋に来ない限り私たちが会うことはないからね」

「それもそうか」


 それに外国人の可能性もあるからな。

 となると転移者でも寿司屋に来る可能性なんて物凄く低くなる。

 

 だがどれだけ俺が考えようがなにも変わらないよな。

 もう勇者は誕生してしまってるんだし。


「それより格闘場のアイデアはどう?」

「う~ん、やはり難しそうだ。なかったことにしてくれ」

「えぇ~!? じゃあガチャ券は!?」

「ガチャ券じゃなくても十連を二十回連続で回したら虹箱確定とかは?」

「それじゃ面白くないじゃん」

「ダメなのか?」

「ガチャ券だからいいの! 虹ガチャ券が手元にあると嬉しいでしょ!」

「そういうもんか。俺だとラストエリクサー的な感じになるだろうな」

「なにラストエリクサーって?」

「もったいなくて使えないってことだよ。いざというときのために残しておきたいんだ」

「その見極めが大事なんだよ! 次にさらにいいガチャが出るのはわかってるからね!」

「なるほど。俺は優柔不断だからな」

「もちろんガチャ券を貯めたくなるって気持ちもわかるけどね!」

「なら虹箱確定じゃなくて虹ガチャ券ならいいのか?」

「それはガチャ券のためにガチャを回してるからダメ!」

「違いがよくわからないが……」

「お金の問題じゃないの!」


 なにかアイリなりの拘りがあるようだ。

 他にアイデアを考えるしかないか……。

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