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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第三十話 ドーラ……

「えっと……すみませんがもう一度お聞きしても?」

「いーよ慣れてるから。ドーラディスリピェナだ」


 ドーラ……ダメだ。

 二回聞いても覚えきれない。

 それに発音も難しくて舌が回らない。

 年取ったせいなのかな。

 もうドーラだけでいいんじゃないのか?


「なんてお呼びしたらよろしいでしょうか? 少し長くて……」

「じゃあドーラって呼んでくれ。ジャスミンもそう呼んでる」


 やっぱりそう呼んでるのか、助かった。


「ではドーラさん」

「ドーラでいい」

「……ドーラはドワーフなのか?」

「見たらわかるだろ」


 口悪くない?

 ドワーフよりもそっちのことが気になってしまう。


 背は小学生くらいだな。

 ドワーフはみんなこのくらいだから見分けがつきにくい。

 年齢は顔で判断するしかないが……若いよな?

 ドワーフもエルフみたいに長寿の種族なんだっけ?


「ウチがどういう店かは聞いてる?」

「あぁ、というか来たことあるし」


 それは気付かなかった。

 人間の子供だと思ってたのかもしれない。

 って子供がこんなところ来ないか。


「仕事内容は?」

「武器や防具の買取や交換をするってのは聞いた」

「冒険者だったんだよな?」

「今も冒険者だ」

「営業時間は十八時~二十一時だからその時間大丈夫?」

「夜に町の外行くやつなんかいねぇよ」


 口悪くない?

 大丈夫って言ってくれればいいだけなのに。


 俺はドーラの隣に座ってるジャスミンを見る。

 ……目を瞑ってやがる。

 俺の反応を予測してたな。

 いや、俺じゃなくても同じ反応をするに違いない。


 今朝、ジャスミンといっしょに酒場に行ってきた。

 ジャスミンのときと同じように雇用依頼書を出すためだ。


 いつものようにエミリアさんが担当してくれたんだ。

 だが、今回は依頼書すら作成しなかった。

 既に紹介したい冒険者に目途が立っていたようだ。


 聞けばジャスミンの知り合いらしい。

 知り合いというか同じパーティだったこともあるようだ。

 だからあとはジャスミンに任せて俺は先に帰ったんだ。

 朝早いから眠かったしな。


 そしていつものように十三時過ぎに起きた。

 するとリビングにはジャスミンと知らない女性がいるではないか。

 寝起きでもさすがにジャスミンの知り合いの従業員候補の人だとわかったさ。

 ドワーフってこともな。


 それで今に至る。

 起きたばかりだからまだ頭が完全には働いていない。


「じゃあとりあえずお試しってことで今日から働いてもらえる?」

「今日からいいのか? じゃあ荷物を持ってくるからいったん帰るな」


 そう言ってドーラは帰っていった。


「ドーラは私を見て羨ましくなったそうなんです」


 まだなにも聞いてないぞ?


「日中は冒険者としての活動を続けるようです」


 だからそんなことは聞いてないだろ?


「ああ見えてよく働くんです」


 へぇ~、意外だな。


「ドワーフですから鍛冶は得意ですし、もちろん装備品全般に詳しいです」


 そうか、ドワーフは鍛冶が得意な種族だったか。

 それならモンスターから買い取った物も修理できたりするんじゃないか?

 安くあがるんならそのほうがいいな。


「口は決してよくはありませんが、いい子なんです」


 ようやく俺が聞こうと思ってたことを答えてくれたな。

 まぁ見た目は可愛らしいし、多少口が悪いくらい許容範囲だ。


「まだ年齢も二十一歳と若いですし、肌もピチピチです」


 二十一歳か、俺からしたらまだまだ子供だな。

 そういやドーラは冒険者としてはどんな職業なんだ?


「もちろんアイリさんとレファさんのほうがお若いですが」


 二人とも十代だからな。


「私とドーラの二人で力を合わせれば負けません」


 ん?

 なにが負けないんだ?


「ヤマトさんを満足させてみせますので」


 うん、頑張って働いてくれよ。

 ガチャ屋さえ繁盛すれば給料も上げてやるからな。


「せめて週に一度お願いします」


 …………なにが?


 一時間後、ドーラは自分の荷物を全部持ってやってきた。

 といっても魔法袋があるから引っ越しも簡単。

 冒険者は町を転々とすることもあるため普段から荷物も少ないそうだ。


 ……住み込みなんて一言も言ってないし聞いてないぞ?


「ジャスミン、説明しろ」

「……一人より二人のほうがいいのかなと思いまして」


 だからなにが?


「まぁいいじゃねぇか。ジャスミンと同じ部屋で我慢してやるからさ」

「条件は私と同じで構いませんので」


 ジャスミンと同じ条件だと?

 給料の話か?

 ジャスミンと違ってドーラは日中は冒険者として活動するんだよな?

 なのに家賃や食事代はタダだと?

 おかしくないか?

 ドーラの出費が減っただけでこっちはなにも得がないじゃないか。

 確かにジャスミンのときは夜遅くなるからウチに住んでもいいとは言ったが……。


「ジャスミン」

「……はい」

「俺が言いたいことわかるよな?」

「はい……でも私はドーラちゃんといっしょに住みたいんです」


 はぁ~。

 ジャスミンがここまで折れないのも珍しいな。

 ……まぁ賄はどうせ出すつもりだし、家賃分くらいはいいか。


「わかったよ。地下二階やレファのことは?」

「それは言ってあります」


 もう伝えてあるのか。

 ドーラはそれを知ってなおウチで働く気があるということか。


 ジャスミンには最初地下二階やレファのことは内緒にしておくつもりだったからな。

 それがレファが急に来たせいで話すことになってしまったが。


「ドーラ、その件についてはなんて聞いてる?」

「モンスター相手の闇ガチャ屋があるってことと、魔王級の魔族やモンスターが何人かいるって聞いたぜ」


 ほぼ全て聞いてるじゃないか。


「なにも思わないのか?」

「そりゃ最初は驚いたさ。でも聞けば冒険者たちを殺さないようにって指示もしてるらしいじゃねぇか。それなら別に悪いことしてるわけじゃねぇからな」

「モンスターを量産してるんだぞ? 悪いことだと思うが」

「確かに増えてるが魔族がモンスターを作れる以上減ることはないってことだろ?」


 おっ?

 意外に頭がキレるな。


「でも魔族を倒せばモンスターが生成されることはなくなるんだぞ?」

「う~ん、それがアタイたちにとっていいことなのかがわからないんだよなぁ」


 アタイって言うタイプか、初めて聞いた。


「じゃあなんのために冒険者をやってるんだ?」

「それは……」


 急にドーラの顔色が変わった。

 悲しげな表情をしてるようにも見える。


「ドーラちゃん、ヤマトさんにはお話したほうがいいです」


 ジャスミンに促され、ドーラは意を決した表情で俺を見つめる。


「家出した姉貴を探してるんだ」


 ……聞くんじゃなかった。

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