第十八話 サクラ
広告を貼り出した今日の客は十人だった。
昨日まではたった一人だったのに。
いかに広告効果が大きかったかがわかる。
またエミリアさんにお礼を言わなきゃいけないな。
「で、どこまでがヤラセなんだ?」
「ヤラセって言わないでよ。サクラって言ってよね」
「どっちも同じだろ」
やはりあの女性はジャスミンの知り合いだったようだ。
仲が悪くなってなくて少し安心した。
「報酬は銀貨十枚と寿司の松セットです」
「それだけか?」
「はい。十連用の大銀貨一枚も渡しましたが」
「景品は?」
「あとで返してもらってます」
「単ガチャは? なんで銅箱からポーションが出たんだ?」
「単ガチャの銅箱からは全部ポーションが出るようにしただけです」
つまり報酬として銀貨十七枚相当を渡しただけってことか?
十連ガチャの虹は本当に引き当てたってことでいいのか?
あれは結構いい引きだったぞ?
「単ガチャの銅箱以外はなにもいじってないからね?」
「本当か?」
「それをしたら終わりでしょ」
といっても確率を公表してるわけじゃないからな。
確率をいじろうが誰にもわからない。
でも銅箱からポーションは冒険者にとってはいいことだからな。
「まぁあれでみんな十連引きだしたからな」
「でしょ!?」
「大損した人もいませんでしたしね」
こちらとしても少しだが利益が出た。
やはりもっといっぱい引いてもらわないことにはな。
「そういやレファは?」
「下でモンスター生成してる」
「闇ガチャ屋は昨日より客増えてたからな」
モンスターの原価はレファの魔力だけだからな。
売り上げは全て利益に繋がる。
「じゃあここは掃除と宝箱への商品補充を頼むぞ」
「はい、わかりました」
「アイリは卵の作成か?」
「うん!」
アイリはここで作業するようだ。
俺は地下二階へ行く。
するとそこには営業時間が終わってご飯を食べたら帰るはずのリリアンヌがまだいた。
「どうしたんだ?」
「なに? いたら悪い?」
口調はこんな感じだがご飯は凄く美味しそうに食べてくれる。
「いや、なにかあったのかと思ってさ」
「なにもないわよ。姉様が大変そうだから魔力をあげてるだけよ」
なかなか優しいところもあるんじゃないか。
それにしても魔力を分け与えるなんてことも可能なのか。
「レファ、大丈夫か?」
「なんとか。想定してたよりだいぶ多い」
それはつまりモンスターの数が増えまくってるってことだよな?
人間としては少し心配になる。
闇ガチャ屋としては嬉しいことなんだが。
「定休日を増やしてもいいかもな」
「それはダメよ。まだオープンしたばかりなんだからしばらくは続けなさい」
リリアンヌがそんなことを言うとは意外だな。
……もしかしてご飯が食べたいだけじゃないだろうな?
「リリアンヌ、この後なにか食べてくか?」
「えっ!? ……仕方ないから食べてあげるわよ」
やはりご飯が目当てだったようだ。
さっき食べてからそんなに時間はたってないはずだが。
でもこんな時間まで頑張ってくれてるからそれくらいはいいか。
「ヤマト、甘やかしちゃダメ」
「ちょっと姉様!? 魔力あげてるでしょ!?」
「それとこれとは別」
「なんでよ!? いいでしょご飯くらい!」
「これ以上はダメ」
「……あっそ。じゃあ帰る」
リリアンヌは怒ってどこかへ転移していった。
「レファ、さすがに可哀想じゃないか?」
「いいの。きっと泊まるつもりだったから」
もうすぐ二十三時だから眠たくなっても仕方ないか。
「そういやリリアンヌは何歳なんだ?」
「十五」
「へぇ~、レファとは一つ違いか」
レファもまだ十六歳なんだもんな。
毎日遅くまで働かせるのも問題か。
……いや、毎日十時間以上は寝てるし大丈夫か。
これからは定休日もあるし、その日くらいは自由に過ごしてもらおう。
レファは神様のせいで不自由な生活を送る羽目になってるんだからな。
神様というより俺のせいか。
ここにきてから魔王城には一度も帰ってないんじゃないか?
というかこの家から一歩も出てないんじゃないか?
でも転移の魔法が使えるからいつでもどこにでも行けるもんな。
俺はこの町からは一歩も外に出たことがないな。
「なぁ、町の外ってどこにでもモンスターがいたりするのか?」
「モンスターだらけ。だから普通人間たちは転移魔法陣で移動する」
そういった仕組みも神様が作ったのか?
町の中はおそらくモンスターが入ってこれないようになってるんだろう。
外にモンスターがいるんじゃ町から出るのは冒険者だけになるよな。
「海はどうなんだ?」
「近場にはいない。でも遠いところには出る」
寿司屋としてはありがたいと思ったほうがいいのか。
港には一日中船が出入りしてるからな。
そもそも冒険者も町で働く人も年中無休の生活に疑問を感じてる様子がない。
この世界はよりゲームの中の世界って感じがする。
俺たちなんて所詮神様が作ったオモチャにすぎないってことだ。
なんのために生きてるんだろうって気になるな。
「ヤマト、そろそろご飯にしよ」
「……そうだな」
レファは俺の変な質問に疑問を持っていないのだろうか?
やはり神様にいじられてるのか……




