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闇ガチャ、異世界を席巻する  作者: 白井木蓮


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第十七話 宣伝をしてみる

 闇ガチャ屋がオープンした次の日、俺は朝から酒場に来ていた。


「なるほど。お話はわかりました」


 従業員増員について、エミリアさんに相談したのだ。


「ですがまずは広告を貼ってみてはいかがでしょうか?」

「広告ですか?」

「はい。さらに人を雇うとなると人件費がかかりますので」


 広告か、そういやこの世界には新聞や雑誌がないな。


「広告を貼るのもスペース代のお金がかかるんじゃないですか?」

「それはもちろんそうですが、効果はあると思いますよ?」


 この町のどこかに広告がいっぱい貼ってあるのか?

 そんなところがあるのなら早く教えてくれよ。


「場所を聞いてもいいですか?」

「場所って、ここですよ? あの壁です」


 エミリアさんが壁を指差す。

 依頼書が貼ってある壁とは別の壁だ。


 ……あれは広告だったのか。

 てっきり依頼書かと思ってた。


 酒場内で広告が貼れるのなら好都合か。

 冒険者に見てもらえる可能性が一番高い場所だ。


「少し地味すぎません?」

「え? なにがですか?」

「広告ですよ。あれも依頼書かと思ってましたよ」

「確かに同じ大きさの紙に同じ色使いですが……」


 エミリアさんが困惑している。

 困らせるつもりはなかったんだ。


「いえ、すみません。もう少し個性的なものでもいいんじゃないかと思ったもので」

「個性的……ですか」


 エミリアさんは考え込んでしまった。

 なんか悪いことした気分だ。


「あの、せっかくなんで広告お願いしてもいいですか?」

「はい。掲載期間は三十日間で銀貨十枚となります」

「じゃあ大銀貨一枚で」

「はい。確かにお預かりいたしました」


 ……で、俺はなにすればいいんだ?

 広告の文言を考えるんだよな?


「……エミリアさん?」

「え? ……あっ、すみません!」


 なにを書こうか。

 インパクトがないと見向きもしてくれないよな。

 でも紙が小さすぎてそんなに多くのことは書けないからな。

 短く簡潔にだな。


「あの、ヤマトさん」

「はい?」

「私に作らせてもらえませんか? 広告」

「えっ?」


 俺が言うのもなんだが広告の重要性をわかってるのか?

 これが店の運命を左右するかもしれないんだぞ?

 銀貨十枚も払ってるんだからな?

 それにガチャ屋のことが理解できてるのか?


「お願いします! 一度やらせてください!」


 酒場従業員の仕事ってなんなんだろ?

 依頼を受けつけたり、依頼達成の確認がメインだよな?

 広告作りなんてやってていいのか?


 でも熱意は凄く伝わってくる。


「わかりました。じゃあ一度お願いします」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「インパクト重視でお願いしますね」

「お任せください! また昼過ぎにでも来てもらえますか?」

「了解です」


 広告作成をエミリアさんに託し、俺は家へ帰ることにした。


 家に帰ると、ジャスミンが起きていた。


「おかえりなさい」

「あぁ、ただいま」

「コーヒーお飲みになりますか?」

「あぁ、頼むよ」


 メイドそのものだな。


「どうぞ」

「ありがとう」

「酒場へ行ってきたんですか?」

「あぁ、広告を貼ることにしたよ」


 ガチャ屋には昨日誰も来なかったからな。

 闇ガチャ屋は大盛況だったのに。


 ジャスミンになにも責任はないのに、さらに落ち込んでしまったみたいだからな。


「酒場の広告コーナーは私もたまに見てましたよ」

「俺はてっきり依頼書が貼ってあるかと思ってた」

「ふふっ、確かにそう見えますね」

「少し見たが、ただ店の名前と場所と売ってる物が書いてあるだけのが多かったな」

「シンプルでわかりやすいですよね」


 わかりやすいか。

 それはいいことなんだろうか?

 例えば同じ業種の店の広告があったらなにを基準に選ぶんだ?


「俺はインパクトが大事だと思うんだ」

「インパクトですか?」

「うん。広告の色や文字を工夫したりとかさ」

「ふむふむ」

「あとはお得情報だな」

「といいますと?」

「そうだなぁ、単ガチャ一回無料! とかだな」

「なるほど」


 エミリアさんがどんなものを作ってくれるのか少し楽しみだな。


「じゃあ俺は少し寝るから」

「はい。おやすみなさい」


◇◇◇


 十三時過ぎ、目が覚めたのでリビングに行くとアイリとジャスミンがなにか話していた。


「あっ、ヤマトおはよう!」

「おはようございます。これみてください」


 ジャスミンが一枚の紙を渡してきた。


 ……ウチの広告のようだ。


「今だけ十連ガチャ一回につき単ガチャ一回無料。冷やかし冒険者大歓迎」


 内容はまぁいい。

 十連につき単ガチャ一回くらいならただのサービスだ。


「なんだこの色? それにデカくないか?」


 広告は一面ピンク色だったのだ。

 それに大きさは壁に貼ってあった広告四枚分はありそうだ。


「エミリアさんが実験だからと言ってサービスしてくれたんです」

「実験……」

「いいんじゃない? インパクトあるよ?」


 確かにインパクトはあるが。

 ピンク広告って……。


◇◇◇


「松セットお願いします!」

「はいよ」

「(外に何人か待ってる人いるよ!)」


 アイリが小声で嬉しそうに言ってくる。

 早速広告の効果があったようだな。


 さっき買い出し前に酒場に寄ってきたんだ。

 壁にはデカデカとあの広告が貼られていた。

 少し恥ずかしかった……。


 でもエミリアさんは凄く満足気な様子だった。

 上司に褒められたのかもしれないな。

 これから広告のフォーマットは自由なものになるらしい。


 さて、それよりガチャ屋だ。

 ちょうど十八時だが……入ってきたな。


「いらっしゃいませ」

「これがガチャ屋ってところか……」

「そのガチャってのはどこにあるんだ?」


 そうだ、まずはガチャがなにかを知ってくれ。


「見学ですか? 見学でしたらあちらの椅子でどうぞ」


 おいおい、なんてことを言うんだ。

 大事なお客様だぞ?


 わけもわからずホントに何人かは壁際の椅子に座ったじゃないか。

 でも一人は熱心にジャスミンに話を聞いているようだ。


「十連お願いします! 単ガチャも一回無料でついてくるんですよね!?」

「はい、十連後に一回サービスさせていただいております」

「わかりました! どうすればいいんですか!?」

「ではこちらへどうぞ。この十連用の銀貨投入口に銀貨をお入れください」


 客の女性が銀貨を入れると演出がガチャシステムが動作を始めた。


「おぉ!?」

「なんだ!? 暗くなったと思ったらキラキラしだしたぞ!?」

「見てあの月! なんだか本当に外にいるみたい!」

「あっ!? 流れ星だ!」

「それよりあの大きな月の中でなにか動いてない!?」

「あのシルエットは……猫か?」

「あっ、見ろ! なにか降ってきた!」

「クリスタルってやつか? いや、中に宝箱もあるぞ!?」

「あのクリスタルだけ虹色に輝いてない!?」

「宝箱も虹色だ!」

「あ~、全部床に置かれたと同時にクリスタルは消えたようだ」

「きれいだったね~」


 なかなかのレア演出だな。

 猫のココアが出たときは虹色が出る確率大だ。

 犬のミルクも出てたら虹確定だったんだけどな。


「開けていいんですか!?」

「はい、どうぞ」


 女性は銅箱、銀箱、金箱、虹箱の順に開けていった。

 彼女は低レアリティから開ける派か。

 俺も虹箱は最後に確認したい派だ。


「これは……鉄の剣ですか!?」

「はい。おめでとうございます」

「おぉ! やったぁ!」

「スゲェ~!」

「鉄の剣って銀貨十五枚はするんじゃないか!?」

「あの皮の鎧だって銀貨五枚はするはずだ!」

「めちゃくちゃ得じゃない!?」


 椅子に座って見てた冒険者たちも立ち上がって歓声をあげている。


「では追加の単ガチャいきますね」


 ジャスミンは単ガチャ用の銀貨投入口に銀貨一枚を入れる。


「えっ? さっきの演出は?」

「いきなり宝箱だけ落ちてきたぞ?」

「しかも銅箱だ」

「あれはハズレだな」


 一番寒いパターンの結果だ。

 これを見るとガチャをやりたくなくなる。


「はぁ、まぁサービスだから仕方ないですね」


 女性はがっかりしながら銅箱を開ける。


「えっ? ポーションが入ってますよ!?」

「あら、それはラッキーですね。おめでとうございます」


 普通は銀箱からしか出ないはずのポーションが銅箱から出たのか。

 ジャスミンが入れ間違えたのか?


「銅箱からもポーションが出ることあるのか」

「それなら最大でも銀貨五枚の損失にしかならないよな?」

「よほど銅箱の確率が高いんじゃない?」

「でもさっきの十連は銀貨二十五枚以上の価値はあったぞ?」

「店の儲けのほうが少ないんじゃないか?」


 店での定価なら確かにそれくらいはするな。

 でもここにある物はモンスターから格安で買い取った物だからな。

 虹箱が複数出ない限り利益は出る予定だ。


「どうしようかなぁ、もう十連いっちゃおうかなぁ」


 先ほどの女性はもう十連するか悩んでいるようだ。

 さっきの引きなら俺ならいってしまうだろうな。


「う~ん、今日はこれでやめときます! ありがとうございました!」

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 女性はあっさり店から出ていった。

 周りで見てた冒険者たちは立ち上がりガチャへ向かった。



「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。松セットお願いします!」

「はいよ」


 ……ん?

 なんだ今のアイリのやり取りは?

 注文聞かずに松セットって言わなかったか?

 今来た客まだ席へ座ってなかったよな?

 もしやこの店にも常連ができてきたか?


 俺は寿司を握りながら客の顔を見る。


 ……さっきガチャをしてた女性だよな?

 服からしても間違いない。

 でもどこかで見た顔だな。


 もしかしてこないだのジャスミンの知り合いか?

 小さなモニター越しに見る小さな顔だから自信はないが……。


「松セットあがったよ」


 アイリが料理を運ぶ。

 女性は嬉しそうに食べはじめた。

 うん、女性が美味しそうに食べてくれると特に嬉しいな。


 そうじゃなくて、これはどういうことだ?

 俺はアイリを見る。

 するとアイリはウインクをしてきた。


 ……やりやがったな。

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