第十二話 ジャスミン、住む
「みなさん! お昼ですよ! 起きてください!」
んん?
うるさいな。
誰だよこんな昼から。
「ほら! ヤマトさん! もう十三時ですよ!」
誰の声だ?
……ジャスミンか。
まだ十三時ならもう少し寝ても大丈夫。
…………ジャスミン!?
急にパッと目が覚めた。
「なにしてんの?」
「なにって、みなさんが起きてこないから起こしにきたんです!」
「いや、そういうことじゃなくてさ……」
なんでここにいるんだってことだよ。
「……もしかして忘れてます?」
「……」
忘れてるってなにを?
今日ジャスミンになにか用事あったっけ?
その前になんで家に入ってきてるんだ?
「私、昨日からここに住んでるんですよ?」
「えっ!?」
……そうだった。
昨日ジャスミンが宿暮らしだって聞いて、ならウチに住めばってなったんだ。
アイリとレファは俺の部屋で寝るから、もう一部屋のベッドは余ってるしな。
で、早速昨日の夜から住みはじめたんだ。
って流れだったよな?
「服着ないと風邪ひきますよ? 外は凄く寒いです」
アイリとレファはまだ寝ているのでベッドからそっと出る。
そして服を着た。
「二人はまだ寝かせてやってくれ」
「はい」
部屋を移動してリビングのソファに座る。
ジャスミンはコーヒーを入れてくれるようだ。
なかなか気が利くじゃないか。
さすが俺と同い年だな。
まだ若い二人とは気遣いが違う。
……そうだ!
ジャスミンは俺と同い年の三十歳だったんだ。
エルフは長生きする種族らしく、見た目も若い状態が長く続くらしい。
レファがジャスミンに優しかったのも年齢がだいぶ上だったからだ。
それに最初はいっしょには住まないって話だったからな。
でもここに住むことが決まった後も寝る部屋は違うから大丈夫って話になったよな?
ジャスミンがコーヒーを持ってきて、俺の横に座った。
なんで正面のソファじゃなく俺の横?
「私は三日に一回でもいいですから」
「……」
なにが?
なんの話をしてるんだ?
「二日酔いなどはしてませんか?」
「あっ! そうか、久しぶりに酒飲んだんだ!」
どうりでなんか変な感じがすると思った。
昨日はこの世界に来て初めて酒を飲んだ。
アルコールには元々強くないとはいえ、久しぶりだったからすぐ酔いが回ってきたんだ。
「眠れたのか?」
「はい。とはいえ私も昨日は遅かったので十時に起きました」
「酒場は?」
「行ってきました。エミリアさんにも報告してきました」
結局依頼書は貼り出されることはなかったのか。
あとで俺も報告に行かないとな。
「ん? 掃除してくれたのか?」
「もちろんです。それも私の仕事ですから」
ここに住めばと言ったのは帰りが夜遅くなるかもしれないこともあった。
ガチャ屋の営業終了後も掃除や明日の準備があるからな。
といってもガチャ屋に関して営業時間外にジャスミンにできることは少ない。
なので空いてる時間は好きにしてもらっても構わないと言ってある。
「家の掃除は業務内容に入っていないと思うけど?」
「えっ!? メイド的な仕事も任せるって言ってくれたじゃないですか!?」
……そうだっけ?
全く記憶にございません。
まぁ言っちゃったもんは仕方ないか。
「給料の話はしたっけ? 覚えてなくてさ」
「それは変わらずです。その代わり家賃や食事代は払わなくてもいいと」
いいのかそれで?
こちらとしてはありがたいが。
「空き時間はどうするんだ?」
「しばらくはアイリさんとレファさんのお手伝いをしてみます」
本当にいいのかそれで?
二人は助かると思うが。
「わかった。もうすぐオープンだからな」
「はい。詰める作業も急がないといけませんね」
「そうだな。頼むよ」
ガチャ屋のことはどこまで説明したんだっけ?
まだ演出は見てないよな?
レファの手伝いもするということは地下二階のことも知ってるのか?
「凄く面白そうなお店ですね」
「そうか? 冒険者たちは来てくれるかな?」
「はい。冒険者はギャンブルめいたことが好きですから」
やはりガチャはギャンブルなのか。
運が良ければ銀貨一枚で銀貨二十枚相当の商品が手に入るんだからな。
それにジャスミンみたいな可愛い子が接客してくれたら客も増えるはずだ。
「人間の冒険者たちはエルフのことを差別したりしないのか?」
「全くではないですが、ほとんどありませんね」
「へぇ~。理由は?」
「冒険者同士は仲間意識が強いですしね。それにエルフは魔法が得意ですから」
いい話じゃないか。
冒険者は種族の垣根も超えるのか。
パーティメンバーに色んな種族がいたら楽しそうだな。
「冒険者としての生活に未練はないのか?」
「今はここのことで頭がいっぱいです」
「……」
まだここに来て二日目だよな?
そしてなんで俺にくっつく?




