第十一話 魔族VSエルフ
「私は反対。アイリもだよね?」
「えっ、私は別にいいと思うけど……」
レファの言ってることがさっきと違うよな?
エルフが理由で雇わないことはないって言ってなかったか?
だとしたらなにか他に理由が……
「なんで? ヤマトの横で寝られなくなるかもしれないよ?」
「えっ!?」
アイリは俺を見てくるが、俺にはレファが言ってることの意味がわからない。
俺の横で寝られなくなる?
エルフを雇うことで?
どういう繋がりがあるんだ?
「だって一人増えるんだよ? ベッドも狭くなる」
「えっ!? そういうことなの!?」
またアイリが俺を見てくる。
いったいなにを言ってるんだレファのやつ。
なんでいっしょに寝ること前提なんだよ?
それになんでここに住むこと前提なんだよ。
「だから男性のほうがいい」
「それもそうね!」
アイリまで乗っかったらダメだろ。
そこは勘違いだと言ってくれなきゃ。
「でも女性を募集してたんじゃ……」
「あーっ! レファはなにか勘違いをしてるぞ!?」
俺はエルフの女性の声をかき消すように少し大きめの声を出した。
女性限定で募集してたなんてレファに知られたら面倒くさいからな。
「……あっ、いえ、一度お話を聞いていただいてからでも遅くはないかと」
一瞬で俺の考えを察するとはなかなか話がわかりそうなエルフじゃないか。
うん、もう採用でいいと思う。
「レファ、この人はここには住まない。夜だけの従業員として働いてもらうんだ」
「そうなの? ならいい」
レファは納得してくれたのか、上に戻っていった。
「すみません、お騒がせして」
「いえ、私も魔族の方がいらっしゃるなんて驚きましたし」
「彼女は魔族でも特別なんです。襲ってきたりしないと思いますのでご安心を」
「はい。でも本当にエルフを雇っていただけるんでしょうか?」
気にしすぎじゃないか?
やはりレファに事情を聞いたほうが良さそうだな。
……と思ってたらレファが再びやってきた。
「これ食べる? 美味しいよ」
「えっ……これはなんですか?」
「お寿司。ヤマトが作ってるの」
「えっ!? ということは上のお店もやってらっしゃるんですか!?」
「はい、ですがこのことは内密にお願いします」
「……はい」
入り口は別だから普通は違う経営者がやってると思うか。
この人は周りに言うようなこともないだろう。
「良かったらどうぞ。お口に合うかはわかりませんが」
「……遠慮なくいただきます」
エルフの女性はおそるおそる食べはじめた。
「……凄く美味しいです! お寿司というものを初めて食べました」
「他にはないですからね。ウチで働いていただけるんでしたら賄でたまにお出ししますよ」
「賄までいただけるんですか!?」
賄くらいで喜んでくれるのか。
可愛いし、いい子じゃないか。
よし、採用!
「(ねぇ、雇う前に私たちもエルフのこと知っておいたほうがよくない?)」
アイリが小声で耳打ちしてきた。
「そうだな。レファ、エルフやドワーフのことを教えてくれないか?」
「いいよ。なに?」
エルフの女性を気にすることなく聞くことにした。
「なにか人間に差別を受けてたりするのか?」
「そうだね。私たちほどじゃないけどね」
「魔族とエルフの仲はどうなんだ?」
「魔族と人間ほど悪くはない。外で会ったら戦うかもしれないけど」
……ここは家の中だからセーフだよな?
「いまいち関係性がわからないな。それなら人間と同じじゃないか」
「エルフは魔族の味方になることもある」
「どういうことだ?」
「エルフが闇に堕ちるとダークエルフになる」
「ダークエルフ!?」
ってなんだ?
闇だからダークってのはわかるが。
つまり人間側のときはエルフで、魔族側のときはダークエルフってことか?
「この人はエルフ。ダークエルフになると見た目も魔力も黒くなる」
どうやったらエルフからダークエルフになるんだ?
逆もあるのか?
人間はエルフがダークエルフになるのをおそれているのか?
「そんな簡単にはならない。なっても私がなんとかする」
レファは雇うことに賛成してくれているのか?
寿司を持ってきたりさっきから優しいな。
「そういえば名前をお聞きしてませんでしたね」
「……あっ、失礼しました。ジャスミンと申します」
食べてるところを邪魔してしまったか。
それにしても美味しそうに食べてくれるな。
「ジャスミンさんは冒険者なんですか?」
「元ですけど。今は危険の少ない依頼しかこなしてません」
危険が少なくても依頼をこなしてるんなら冒険者だよな?
なんとなく強そうな雰囲気を感じるぞ?
「けっこう魔力あるよ。私ほどじゃないけど」
「レファさんの魔力量は凄いですね。でもなんで魔族の方がここに……」
レファが言うんならそうなんだろう。
ならもう決定でいいよな?
疑問はおいおい聞いていくことにしよう。
「じゃあレファもジャスミンさんを採用することに賛成でいいんだよな?」
「うん。よく見ると年齢もだいぶ上みたいだし」
「えっ!?」
気のせいかジャスミンさんが申し訳なさそうにしている。




