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2.怖いよ山田くん

俺は山田くんに話を聞かれないように小さな声で二宮くんと話した。



「山田くんっていつもあんな感じなの? なんか暗いというか冷たいというか……」



「あー、アイツはずっとあんな感じだったよ」






そして数日後の昼休み、俺は二宮くんと飯を食べていた。彼と本格的に話すようになって1週間は経った。




変わり者だけど特別悪いやつではないと思う。この前は山田くんを河川敷で突き落としたのを除いて……




二宮くんはため息をつきながら俺の後ろをキョロキョロ見る。



「どうかした?」



俺は二宮くんに聞いた。



「またアイツが見てくるよ……」



「誰?」



「ほら……僕の目線の先にいるんだけど山田くんだよ」



俺は後ろを振り向いて山田くんを見た。

俺と目が合った山田くんはすぐに目線をずらす。




「あー最近お前らつるんでないよな? 何であんなに仲良かったんだ?」




そう聞くと二宮くんは弁当のオカズを噛みながら話す。




「僕が仕方なく仲良くしてあげてるんだ」



「仕方なく? どういう事? 詳しく聞かせてくれよ」



二宮くんは「うん」と頷いてお茶を飲む。



「彼とは幼なじみなんだ。僕が関西から引っ越してから家が近くてすぐ仲良くなったんだ。 だけど彼とは気が合わなくて山田くん、すごい酷いことをするんだ」



「酷いこと? でもこの前マラソンのとき山田くんをからかってたじゃん」



二宮くんは箸を起き、下を向いて話した。




「今では彼は普通だけど昔は何度も酷いことされたよ……急に僕に馬乗りで殴りかかってきたり、バケツに入った雨水を僕にかけてきたり……」



「マジかよ……そんな事する奴には見えない……」




だからこの前のマラソンの時に山田くんを容赦なく突き落としたのか……



俺も小学生の頃はよくいじめられていたので気持ちはわかる。でもいきなり走ってる人に足払いはいじめと同じじゃないのか?



俺はその事を言おうとしたが彼の雰囲気が暗くあまり口に出せなかった。




「今も無害に見えるけど、こうしてる間もずっと僕を監視するようにジーっと見てるんだ。僕が他の子と仲良くしてるからさ、彼はずっとあーなんだ」




二宮くんの過去を聞き、俺は口を閉じて黙った。




「あ、ごめんね伊藤くん……僕のことは気にしないで? ほんとごめんねこんな話して」












放課後、二宮くんは用事があるらしく先に帰っていった。日直の仕事をしたので帰るのもすっかり遅くなった。

眩しい夕陽の中、俺は考え事をしながら歩く。



二宮くんにも色々あったんだな……まあイジメあったら精神状態おかしくなっても仕方ないか……同情するべきだろう。



















「伊藤くん……」







「うわあぁっ!!」





校門をでると突然後ろから肩に手をおかれ声をかけられ、ビックリした俺は心臓が止まりそうになった。




聞き覚えのある声、いや声を聞いただけで誰かが分かった。だから俺はビックリした……警戒しながら俺は振り向く。




「や、山田くん……どうした?」



「ちょっと歩きながら話さないかい?」





俺より背が高い山田くんは隣で口角を上げて笑う。

俺はウンと頷き、一緒に歩き始めた。ナイフとか持ってないだろうな……恐怖と緊張で彼と顔を合わせられない。



山田くんは細々しい声で話す。




「二宮くんと……最近仲良いみたいだね」



「!!」



秋を過ぎたはずなのにジワーっと冷たい汗がひたいに流れた。




「い、いやーまぁ席が隣だし仲良いというかたまたま……」




「もう彼とは関わらない方がいい!」




山田くんはさっきまでの細々しかった声が腹に力を入れたようにハッキリとした大きい声で話した。



「でもさ、山田くんも二宮くんと仲良かっただろ?」





山田くんは口で息を吸い歩く足を止めた。




「質問するけど、君は二宮くんをどう思ってるんだ?」




俺はまだ彼に目を合わせられず足下を見て話す。




「どうって……少し変なところあるけど……いい友達だと思う……」



「変なところ? おかしな所はあったんだね?」




山田くんは電柱にもたれて手を組んで空を見上げながら話す。





「 僕は小学生の頃から彼と幼馴染でね、よく学校終わりに近くの河原で遊んだんよ。二宮くんと会って4ヶ月くらい経って、子供ながらに彼のおかしさに気付いた……まず、話が通じにくいんだ……」





話が通じにくい……それを聞いた俺は今初めて彼に目を合わせた。

山田くんは唾を飲んで再び話す。





「なぜか分からない……突然話が通じなくなったりする。普段は普通に喋ってても違和感ないんだけど、ふとそうなるんだ」





「確かに……あ、この前な? アイツとしりとりしたんだ……動物縛りでしりとりしたんだけど全然ルール通りに答えなかったんだ……」



「やっぱりあったか……」



俺はその事を話すと山田くんは何回か縦に首を振って続きを話した。






「 僕が彼を本気でヤバイと思い始めたのは彼と会って半年くらい、相当仲が深まった頃、いつものように河原で遊んでた時だ。





向こう岸で遊んでた僕に嬉々とした顔で手を振る二宮くんが見えたから、何かと思って向かったんだよ。





二宮くんはオタマジャクシを10匹ほど集めて一本の木の棒で串刺しにして、なんとも言えない顔で笑ってたんだ……





僕はその日はすぐに帰宅して、それ以来できるだけ彼からの誘いは断るようにした。





でもある日近所の集まりで親に連れられ子供達の集まる小さな祭りに参加させられた。




そこには彼もいて、僕が誘いを断ったからか二宮くんは不機嫌そうだった。




祭りが佳境で保護者達も子供から目を離し始めた頃、二宮くんが僕を呼び出しいつもの河原に連れられた。




そこにはどこの子か分からないけど僕たちより一回り小さい男の子がいて、とても怯えていた。




そして二宮くんはこう言った。




人間(これ)を川に落とすからそっちの足持って』




冗談と思ったけどその時の彼は笑ってなかった……




彼は本気で男の子を落とす気でいた。一度生きてる人の溺れるところを見てみたいって言ってた。




僕は初めて人を殴ったよ。怖くて何度も殴った。




それが問題になってしばらくは二宮くんとは会わなかったけどもう時間の問題だった。




彼の飼ってる猫をオリに入れて水を浴びせ続けている姿を見かけた時は僕は彼にバケツの水をぶっかけてやった。




中学時代は彼の友人が事故で入院した時、押していた車椅子を車の通りの多い道路で離し、友人は車に衝突……怪我は軽かったが二宮は反省の色もなかったという……




もう分かっただろ? 奴はサイコパスだ。




社会常識に欠けていてプライドが高く、普通の話は通じず、考え方が人と違うんだよ…… 」




俺は山田くんから異常者(二宮)の話を詳しく長く教えて貰った。山田くんへの恐怖感はすっかり消えたのでずっと彼の目を見て話す。




「山田くんはなぜ今でもそんな奴と?」




「アイツのおかしさはまだ大きく知られてない……仲良くなった人間にしか本性を現さないんだ……これ以上被害者がでないように僕ができるだけ彼の近くにいるんだ」





彼の本性を知った俺は二宮の明るい笑顔が頭に浮かんで身震いする。山田くんは俺の両肩に手を置いて必死に話した。




「だから、最近関わりの増えた伊藤くんに……警告がしたかった」




俺は決意し、しっかり山田くんの目を見る。




「わかった山田くん……あいつとは関わらないようにするよ……」




この後横断歩道を渡り、俺は山田くんと別れた。 嫌な話を聞いてしまった。俺は日が沈み真っ暗になった道を歩いて家に帰る。






そして翌朝、俺は席に着き本を読んでいた。




「伊藤くん、おはよう何読んでるの?」




二宮くんはニッコリ笑顔で俺の隣の席に座る。




「おうおはよう」




あくまで不自然にならない程度に距離を置くことにしよう……それが一番だ





ホームルームが始まり、先生は教室に入り、名簿を教卓に置いた。 今日は先生の元気がない……いつもならホームルームが始まっても喋るのをやめない俺達を怒ってるのに……




「お前ら席につけ……話がある」




クラスメイトも先生の異変に気づき黙って席に着く。

教室の空気がシーンと静かになる。





「いいか、みんな……落ち着いて聞いてほしい。ウチのクラスメイトの山田くんなんだが……昨日亡くなった」





先生の報告に教室がざわめき出した。

先生は震えた声で暗い顔をして話す。





「いきなりの事で整理がついていないかもしれない……先生もものすごく驚いている……」




「そんな……」

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