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3.二宮くんと山田くん

山田くんが死んだ。死因は何者かによる絞殺。



昨日山田くんと俺が分かれてから数時間後の出来事だったらしい。



俺はその話を聞いて真っ先にあいつを思い浮かべた。



でも怖くて隣を見れなかった……



山田くんが死んだ悲しみより先に、あの話を聞かれていたんじゃないかという恐怖感に襲われた。



次第に心臓の脈拍が早くなり、隣に座る二宮くんに鼓動が聞こえるんじゃないかと必死に手で胸をおさえる。




「伊藤くん」



「!!」



二宮くんに声をかけられた……今にも破裂する勢いの心臓が口からでそうだ。




「……震えてるよ伊藤くん……大丈夫?」



「先生……体調が悪くなったので保健室に行きます」




1mもない距離で俺の顔をジーッと見てくる二宮くんに耐えられなくなり俺はカバンを持って教室へでた。



教室から出ていくまで二宮くんの視線を感じた。



俺はトイレにこもり頭を抱えた。




どうすればいいんだ……まさか誰も二宮を疑ってる奴なんていないだろう……周りからみればただの仲良しだったし



警察に言っても俺の証言を信じてもらえるわけない……いや待てよ、山田くんの家族なら……行くしかない!



学校を抜け出し、俺は山田くんの家に走って向かった。




深呼吸し、山田くんの玄関のインターホンを鳴らした。



ガチャっとドアが開き、玄関からどんよりとした女性、山田くんの母だろう。 目の下にクマを大きく作っていて顔がやつれている。




「突然お邪魔してすみません、山田くんの友人の伊藤です。山田くんの件、ご冥福申し上げます」




俺は頭を下げて山田くんの母に挨拶をする。




「あぁ……息子の……学校はどうしたの?」




「お母さん、山田くんを殺した犯人に心当たりはないですか?」




「……まだ信じられなくてね……ごめんなさいね、そんなこと考えられる余裕なくて……」




お母さんは流れる涙を白いハンカチで拭いている。いきなり来たのは悪いと思うけどこのままじゃ山田くんは犬死だ。




「こんな時に来てすみません、でも今すぐ聞きたいことがあるんです」




お母さんは俺の足下をみて黙り込む。




「このままじゃ山田くんの死が無意味になってしまう」




「……どうぞ」




お母さんはドアを開けて俺を家に入れた。




山田くんの使っていた部屋……二宮とのツーショットの写真が勉強机に置いてある。



俺はお母さんに今までの事を全部詳しく話した。







「どうですか? 二宮を昔から知っていたんですよね!?」



「……話してくれてありがとうね」



お母さんは再び涙を流し崩れるように嗚咽する。 しゃがんで泣くお母さんの背中を俺はゆすった。



「ごめんなさい……息子をこんなに思ってくれるお友達がいた事が嬉しくてね……」



涙を拭いたお母さんは部屋の窓を開けて話す。



「でもね、伊藤くんは騙されている」



「はい?」


騙されている……どういう事だ?




「あの子ね……昔から虚言癖があるの」



「虚言癖……?」



「そう……昔は可愛い嘘ばかりだったの……ツチノコがいたとか虫が出てきたとか……



全くの嘘をまるで本当のことのように話すの息子は……本人はただ嘘をついて相手が本気にそれを信じる姿を楽しんでるの



あの子が嘘をつく理由はただそれだけ、明確な意図は今までなかった」




「そんな……」



「だから最初は今回のことも嘘だと思った。でもさすがにこれはやりすぎよって叩き起こそうとしたんだけど、返事はなくって……そのベッドで息を引き取ってた……」



「……」



俺は山田くんが毎日使っていたベッドに座った。 シーツと掛け布団は残酷に冷たかった。







最後にお母さんに挨拶をして山田くんの家を出た。 今日は学校はふけよう……




あの話は嘘だったのか?



だったらなんであのタイミングで山田くんは死んだんだ……。



でも確かに勝手に話を聞いて勝手にビビっていただけで……二宮にそういう実害を加えられたことはない



そもそもいくら変な言動や行動があるとはいえ人殺しまでするようには見えない。



考えすぎだな。








♢♢♢♢♢♢





俺は夜中、山田くんの事を考えながら勉強をしていた。

彼のことで内容が頭に入ってこない……今日はもうやめよう。



コーヒーでも飲んで一息つこうと冷蔵庫を開けるがコーヒーどころか飲み物が何一つ入っていない。



近所で殺人事件があったというのに無駄な外出は嫌だな……薄着で大丈夫かな……すぐそこの自販機寄るだけだし大丈夫だろ。



俺は500円玉を持って家を出た。 夜風の寒さに俺は白い息を吐きながら自販機へ向かい、500円を入れて温かい缶コーヒーを取りだす。




山田くんはちゃんと(とむら)ってあげないとな……今日はろくに悲しむ暇もなかったし…… 。



俺は缶コーヒーを取ると後ろに人の気配を感じた。飲み物を買うんだろう……俺は自販機の横に立って『すみません』と言って振り向く。














二宮だ。








一気に血の気が引いた。



なんで

なんでなんで……なんで二宮がここにいるんだよ……。





「今日どうしたの? 朝途中で保健室行ってそのまま戻ってこなかったでしょ……みーんな心配してたよ?」




なんだよ……この状況おかしいだろ。




俺はその場から逃げた。必死で腕を振って走った。 なんとも言えない恐怖感が俺を襲った。



追いかけてきてないよな? 俺は後ろを振り向く……









「アハハハハハハ!! アハハ!!」



無邪気な子供のように笑いながら、二宮は走って俺を追いかけてきていた。 静かな夜の道に、二宮の甲高い笑い声が道に響く。



なんでだよ……なんで俺も逃げてるんだよ……でも逃げ切るしかない……



家が見えた! いつもの道なのに、いつもの玄関なのに……安心して自然と涙が流れてきた。



助かった……。 急いで家に入った。






俺は自分の部屋に戻り電気もつけずに部屋の真ん中でしゃがんで頭を抱えた。



ダメだ……つい逃げてしまった。



だいたい、二宮(あいつ)もなんで自販機にいるんだよ。



でも山田のお母さんの話によると……アイツは犯人ではない……だとしたら悪い事したかもな……。



あぁ見えて一応は友達だし。



うわ寒……







――何で窓開いてるんだ……?


まさかな……ふふ、おるわけないよな……一応見ておこう。




俺は部屋の至る所を全て確認する。 クローゼットやベッドの下、本棚の裏やゴミ箱までも。



はは、何で俺こんな馬鹿な事してるんや。神経質になりすぎるだろ。













「伊藤くん、カーテンの裏は?」













「え?」










二宮……二宮が入ってきた……電気のついていない真っ暗な部屋で彼のシルエットしか見えない。



二宮は俺をベッドに押し倒し馬乗りになって首を物凄い力で絞めてきた。





「ぐ、う゛っ……あ゛っ……!? ぐびがぁ……あ゛?」





二宮は甲高い声で笑いながら、俺の首を締めながら言う。





「 僕、昔から生き物を殺すのが夢だったんだ……最初はオタマジャクシとか小さい生き物で満足してたんだけどね、もっと大きな生き物を殺したくなってね、


生き物の呼吸が止まる瞬間ってすっごく楽しいんだ、自分が人の命を今まさに奪ったって思うとゾクゾクするんだよ 」





「う゛う゛っ……あ゛っ……」





「 今度は人の体の中身がどうなってるか見てみたいんだ。君を使ってね? 伊藤くんさようなら……」




















♢♢♢♢♢♢♢♢






山田の母はポロポロ涙を流しながら嗚咽して泣く。




「どうしたんです、また泣き出したりなんかして」




母を慰めるように中年の男が母の背中をゆする。




「息子のことを…思い出して……なんであの子が……」




中年の男は山田の母を抱いて頭を撫でる。




「泣き虫な人だ、僕が慰めてあげないとな」




山田の母は男の胸の中で泣く。




「二宮君の父さんったら……こんなとこで触るのはやめてください」




「馬鹿なことを、いつもそう言って受け入れるくせに」




「やだっ♡ そういえば今日、ウチに生意気な高校生が来たの……それであろうことか二宮さんの息子さんを侮辱するようなこと言ってたわ」




「へぇ、それで?」




「二宮さんの息子はそんな子じゃないってタップリ言いつけて追い返してやったわ♡」





「…ふっ、僕は誇らしいよ、良い息子に良い愛人をもって」






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