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1.不思議な二宮くん



秋を少し過ぎ肌寒さを覚えたこの頃、俺の教室では席替えが行われた。



もうクラスにも十分慣れたしクラスメイトともほとんど話したことがあるので、席替えはさほど緊張しなかった。



俺は席替えのクジを引き選ばれた席へ着く。


俺の隣に人が座った。




「隣、伊藤くんか、よろしく」



「あ、よろしく二宮くん」




隣に座ったのは二宮(にのみや)君だ。彼とはほんの少し話した事があるだけでそこまで親しいわけではない。


席替え後の休み時間に俺は二宮くんと話す。

二宮くんは頬杖をついて俺と話す。



「伊藤くんと話すの久しぶりだよね?」



「確かにそうだな、最後に話したのは……6月くらいかな?」



「君と同じクラスになって半年は経つのに何で話さなかったんだろう……不思議だね」




二宮くんは無邪気な笑顔を浮かべた。




「前から席も遠かったし話す機会も全然なかったからな、これからよろしく二宮くん」



「うんヨロシク!」




ほんの少し話しただけだが、これから仲良くなれる気がする。

俺はこの前、彼の噂を聞いたのでその真相を聞いてみることにした。


あ、いや別に二宮くんが人を殺したとか、犯罪を犯したことあるとか、そんなやばい噂ではない。




「二宮くんってずっと東京の人じゃないんでしょ? 確か遠いとこから引っ越してきたって聞いたことが……」




「え?」 二宮くんは急に笑みが無くなり無表情になる。



「ん?」 聞こえなかったのかな……俺は今と同じ言葉を言った。二宮くんは無表情のまま僕に聞いてくる。




「遠いところから来たって? ごめんどういうこと?」




俺は少しビビって言葉が詰まる。悪いこと聞いちゃったか? 色々事情があってここに来たのかもしれないけど……




「あ、いや何か標準語がなまってるというかなんというか? なんか悪いこと聞いちゃったらごめんね?」




二宮くんはギロっと細い一重の目で俺の目を見る。それからニコッと笑って答えてくれた。




「ああそうだよ、昔は関西の方に住んでたんだ」



彼が笑ってくれたのでホッと息を吐いて安堵する。



「伊藤くんは?」



今度は二宮くんが聞いてきた。



「ん? 何が?」



「伊藤くんはどこから来たの?」



「どこから? あー俺はずっと生まれてここら辺に住んでるよ」



「やっぱりかー……ずっと地元で過ごせるっていいな」




二宮くんは教室の窓から見える景色を見てどこか寂しそうだった。俺は気をかけてあげる。




「関西から東京に行くって結構大変だよな」



「わかる? 本当その通りだよ僕も全然慣れないんだ」




二宮くんの話を聞いてると俺は彼のカバンについたキーホルダーに目がいった……知ってるキャラクターだ!




「ところで気になったんだけど、そのカバンについてるキーホルダーって『馬鹿ばかりスクール』のミサちゃん?」



「え、知ってるの? 可愛いよね」




二宮くんは嬉しそうにキーホルダーを見せながらそのアニメについて俺とずっと学校が終わるまで話した。



二宮くんと一緒に下校しながらアニメの話をし、すっかり意気投合。






そして数日後、授業の合間の休み時間に退屈だった俺は二宮くんとしりとりをする事に。




「じゃあ二宮くん、お題しりとりをしよう」



「お題しりとり……?」



「1つのジャンルに絞ってしりとりするんだよ。例えば食べ物とか動物とか」



「いいね面白そうじゃん」



「じゃあテーマは『趣味』で行こう! 俺からな? じゃあ散歩」



二宮くんは顎を触りながらうなって考える。 いきなり趣味は難しかったかな?




「ポー、ポー……あ! ポーランド!」



「ポーランド? それは国だろ? 趣味になるものだよ?」



「そうかー……じゃあポジティブ?」



「だーかーら、趣味になるやつだってば」



やっぱり趣味は難しいな。 でもなんか妙だ。普通高校生なら『趣味』と聞かれてポーランドとかポジティブって意味不明なこと言わないはずだ。 確かに『ぽ』で始まる趣味が中々頭に浮かばないのも分かるが……



よしお題を変えよう。しりとりの次のお題は子供でも分かりやすいように『動物』にした。最初は俺から。




「じゃあ俺からな? 猫!」



「コースター」



どういう意味かわからず二宮くんに聞いた。



「コースター?」



「え? ほら、コップの下に引くやつ」



「……」


駄目だ。ルールになっていないし意味不明だ。二宮くんは成績もいいし運動もできたはずなのに何故だろ……? 彼は少し変わっている。






そう言えば2日前、体育のマラソンでもこんな事があった。



僕と二宮くんは一緒に河川敷(かせんじき)を走っていた。



「11月始まったばかりなのに寒いなぁ~」



僕は走りながら手のひらを擦って温める。



「何で学校まで来て走らないと行けないんだよ……前で走ってるヤツら張り切りすぎだろ……なぁ二宮くん」



「……あっ」



と言って二宮くんは走りながら前で走ってる同じクラスの山田くんの後ろ姿をジーッと見ている。




「二宮くんどうしたの? 」



「ちょっと前に山田くんが走ってるだろ?」



「走ってるね。あ、そう言えば山田くんと二宮くんって仲良いよな?」




そう、僕と二宮くんが仲良くなる前、二宮くんと山田くんが一緒に教室の隅っこで話してるのを何度も見かけたことがあった。




「俺と席横になるまでずっとアイツといたもんな」



「うんそうだね。ちょっと面白いことするから見てて!」



「え、何するの?」




俺は二宮くんが面白い事をすると言ったので少し期待した。


二宮くんは 「おーい山田くん!」 と言って俺から離れ、山田くんの後ろへ走って近づく。



走りながら後ろを振り向く山田くんを二宮くんは足払いをして転ばせる。




山田くんは 「うわっ!」 っと声を上げ派手に転んで膝を擦りむいて血が滲んだ。



派手に転んだ山田くんの腹を二宮くんは笑いながら蹴る……と言うより足で押し倒す感じで、彼を河川敷の坂に蹴り落とした。



悲鳴を上げながら山田くんは、河川敷の坂で岩のように凄い勢いで転がり落ちる。



危うく川に落っこちそうになった山田くんは足を痛めたのか、急に転ばされ状況の整理がついていないのか、足をおさえて中々起き上がらない。





「アヒャヒャヒャヒャヒャ!! ウギャハアアハアハハハ!!」




二宮くんは痛みに苦しむ彼を指でさしながら、高い声で大笑いする。



山田くんをこかし、河川敷に落として大笑いする彼を隣で見ていた俺は戦慄が走り背筋が凍った。 元々寒かったが更に寒く感じた。 今すぐ山田くんを助けに行きたかったが恐怖で体が動かなかった。




「どんくさいな~山田くん……ねえ伊藤くんも面白かっただろ?」




彼に答える場合ではない……急いで河川敷の坂を降りて彼の傷の具合を確かめる。




「山田くん大丈夫!?」




膝をおさえ、山田くんは


「ごめん大丈夫だから」


と言って立ち上がり、足を引きずりながら坂を登って再び走り出した。



山田くんが遠く離れ見えなくなった途端、急に二宮くんはクスクス笑いだした。




「伊藤くん見た? ほんとに面白かったね……」




俺はちょっとだけ怒って言った。



「友達だろ!? あまりあんな事しない方がいいぞ?」



「え、なんで?」



「なんでって……走ってる時だったし危ないだろ!? 山田くん大した怪我しなくて良かったからいいけど……」



「ふーん……」







二宮くんと話しながら俺は今の事を思い出した。山田くんとは前から仲良かったからイタズラ半分のつもりだろう……と、俺はそう心の中で言い聞かせた。


二宮くんと話す話題もなくなりお互いボーッとする。俺は教室の全体を眺めていると、ふと山田くんと目が合った……いやずっと二宮くんと話してる時からずーっと、彼は俺の方を睨んでいたんだ……

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