第2話:払えないなら差し押さえです
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「た、他人の金を踏み倒すだと!? 無礼だぞリリアーヌ! 私は次期国王(候補)だぞ!」
「候補、ですわね。しかも筆頭は第一王子殿下です」
私がにっこりと微笑むと、ルイス殿下はぐぬぬと口を噤んだ。
隣にいる男爵令嬢のマリアも、何が起きているのか分からずオロオロとしている。
「マ、マリアに買い与えたネックレスくらい、婚約者だったのだからプレゼントとして計上すればいいだろう!」
「いいえ、プレゼントとは『贈る本人のポケットマネー』で買い与えるものです。私の個人の口座から無断で引き落とすのは、ただの【横領】および【窃盗】に該当いたしますわ」
「ひっ……!」
マリアが青ざめて自分の首元を押さえた。
ちなみにそのネックレスは、今彼女の首でキラキラと輝いている。
「さあ殿下、即日お支払いいただけますか? それとも、年率一五%の遅延損害金を上乗せして分割払いにいたしますか?」
「くっ……! 払えるわけがない! 支払いは拒否する! 王家の権威をもって、この請求を無効とする!」
ルイス殿下は半狂乱になって請求書を破り捨てようとした。
しかし、私は用意周到だった。
「あら、破かれても予備は百枚ほどございますわ。……そして殿下、そう言われると思い、本日この場に『特別なお方』をお招きしております」
会場の重厚な扉が開き、一人の人物が入ってきた。
漆黒の軍服に身を包んだ、冷酷厳格で知られる当国の財務大臣――そして第一王子のクライド殿下だった。
「なっ……兄上!?」
「静かにしろ、愚弟」
クライド殿下は冷ややかな目でルイス殿下を射抜いた。
「リリアーヌ嬢から事前に相談を受け、すべての帳簿を確認させてもらった。ルイス……お前が公爵家の資金を私物化し、国政の書類を放置してリリアーヌ嬢に丸投げしていた証拠は、完全に揃っている」
「あ、兄上! これはリリアーヌの罠です! 私は騙されて――」
「見苦しい。王家の名誉を泥に塗ったお前には、本日をもって第二王子の地位を剥奪し、地方の修道院への幽閉を命じる」
「え……? しゅ、修道院……!?」
ルイス殿下はその場に崩れ落ちた。マリアも「そんな、話が違いますぅ!」と叫びながら近衛兵に拘束されていく。
「さて、リリアーヌ嬢」
クライド殿下が私に向き直り、申し訳なさそうに頭を下げた。
「愚弟の不始末、真に申し訳なかった。王家として、金貨一二〇、〇〇〇枚の負債は責任を持って返済する。……だが、一括での支払いは国庫が破綻してしまう。どうか猶予をいただけないだろうか?」
私はパチリと扇子を閉じた。
「もちろんでございます、クライド殿下。返済計画案については、すでに作成してございます」
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