第3話:自由と隣国の溺愛(完結)
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「返済計画案……?」
クライド殿下が書類を受け取る。
「はい。金銭での返済が難しい場合、同等価値の『鉱山採掘権』および『関税の免除権』を我がヴァルハイト公爵家に譲渡していただく形でも構いません。それと……」
「それと?」
「私の『退職願』でございます」
私は胸ポケットから、綺麗に折りたたまれた手紙を差し出した。
「私は本日をもって、王宮筆頭政務官の職を辞させていただきます。これからは自分の人生を、自由に楽しむつもりですの」
ルイス殿下の不始末を押し付けられ、毎日午前二時まで書類仕事に追われる日々はもう終わりだ。
これからは公爵家の豊富な資金と、今回手に入れた採掘権を使って、南の島でスローライフを送るのだ!
「待ってくれ、リリアーヌ嬢!」
去ろうとする私の腕を、クライド殿下が咄嗟に掴んだ。
その顔には、いつもの冷徹な面影はなく、焦りと切なさが入り混じっていた。
「君に辞められたら、我が国の内政は崩壊する! いや……そうじゃない。私はずっと、陰で国を支える君の優秀さと、その美しさに惹かれていたんだ」
「……はい?」
「愚弟との婚約が破棄された今、正式に君に求婚したい。私と結婚し、この国の王妃として私を支えてはくれないだろうか!?」
会場から「おおおっ!?」と今日一番の大歓声が上がった。
まさかの第一王子からの公開プロポーズ。
しかし、私は笑顔で、その手をそっと解いた。
「お断りいたします」
「即答!?」
「私、これからは『残業のない人生』を送ると決めておりますの。王妃様なんて、絶対に残業確定じゃありませんか」
私がきっぱりと言い放つと、クライド殿下はガーンとショックを受けたように固まった。
「ですが……もしクライド殿下が『完全週休二日制・有給休暇年間三十日・定時退社保証』という条件で、公的な契約を結んでくださるというのでしたら……考えてあげなくもありませんわよ?」
私がクスリと笑うと、クライド殿下は一瞬目を見開き、それから弾けたように笑った。
「いいだろう! 君のために最高の労働環境を用意しよう! 誓うよ!」
こうして、私は無能な元婚約者から全額を回収し、ブラックな王宮からホワイトな最高環境(+将来の国王からの過保護な溺愛)を手に入れたのだった。
立ち去る私の背後で、修道院へ連れて行かれるルイス殿下の悲鳴が響いていたが――まあ、自業自得ですわね。
(完)
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