第7話 都知事・藤子作加
押し入れが、トトリの寝泊まり場所。
月曜日の朝。
静かに目覚めたトトリは、ゆっくりと押し入れを開けた。
すばるの寝息がする。
昨日は、最高の写真が撮れたことを喜んで、上機嫌だった。
寝顔は、穏やかだ。
しかし、テレビがついたままだった。
「学生さん、テレビを消し忘れたんですね…」
音量の低いテレビの中では、早朝のニュース番組が流れていた。
トーキョーの都庁で、都知事が新しい法律を作るという。
“国民のトリを買うことの義務化”
そして。
“買うトリは、オスドリに限ることの義務化”
「国民の皆さまの買ったメスドリは、政府が完全に回収します」
トーキョー都知事・藤子作加が、ボサボサの茶髪から、目つきをするどく覗かせている。
比較的、若い都知事だ。見た目は、20代か30代。
このトーキョーでは、40年前から、年を取ることが無くなったので、実年齢は、60歳を越えているだろう。
トトリは、その姿を、よく知っていた…。
「…サッカさん?何を考えているの?」
第7話 都知事・藤子作加
朝食は、トトリが用意してくれた。
ハムマーガリントーストだ。
飲み物は、牛乳。
それが、三人分。
「ボクたちの分もあるよーん」
「トトリちゃん、ありがと〜ん」
すばると城田兄妹は、そろって、朝食をすませた。
「学生写真コンテストのテーマって、トリだったっけ〜ん?」
「ボクたち、まだトリを買ってないよーん」
テレビでは、丁度オスドリの通販番組がやっていた。
品行方正、家事が得意、力仕事もオーケー。
オスドリは、何の非の打ち所も無く、経済的。
「欲しいーん。買うーん」
通販番組の電話番号を登録して、すぐ電話するシロアニ。
「こちら、テレビ通販の売り子でございます」
「もしもし?今、テレビでやってるオスドリを買いたいんだよーん」
「千円になります。着払いとなります。よろしいですか?」
片手で、財布の中身を器用に確認する。シロアニは、千円札が、入っているのを見る。
「よろしいよーん。買うよーん」
「受付いたしました。現在、メスドリなどは、いますか?」
「いるよーん。トトリだよーん」
「わかりました。そちら、無料で引き取らせていただきます。30分以内のお届けとなります」
ピッ
通話が切れる。
「買えたよーん」
「うちでも、トトリちゃんみたいなトリが、家事をしてくれるのね〜ん」
個性的な兄妹は、スマホを取り出した。
もちろん、買ったオスドリを撮るためだ。
家事をやってもらうのも必要だが、城田家のオスドリには、被写体になって欲しい。
自身の買ったトトリで、ベストショットを撮った、すばるに負けるわけにはいかない。
ピンポーン
遠くでドアのチャイム音がする。
やけに速いが、通販番組で買ったオスドリが届いたのであろう。
シロアニは、外へ出る。
隣の部屋の前には、黒服にサングラスの怪しい集団が密集していた。
「ここに、メスドリがいるんだな?」
「トトリ様と、言ったよな?」
「え?え?何だよーん?」
ハテナマークが、シロアニの頭の中を埋め尽くした。
黒服の集団は。
「そっちの部屋か?」
すばるの部屋に次々と土足で上がり込む。
「…!」
トトリは、驚きを隠すこともなかった。
「トトリ様だ!」
「トトリ様!」
「不死鳥、トトリ様!」
口々に、トトリの名前を連呼する黒服の集団たち。
すばるは、動けず。
シロイモは、そのすばるの腕にしがみついている。
「トトリ様、トーキョー都知事・藤子作加氏がお待ちになっています」
「トーキョーの永遠維持のため、お戻りください」
「不死鳥、トトリ様!」
言葉を荒げていく集団を前に、トトリは、静かにうなづいた。
学生たちは、これからも、学生写真コンテストに、夢に挑戦し続けて行くのだ。
自分の、“不死鳥”の問題に巻き込むわけにはいかない。
「…学生さんたち、さようなら…」
トトリは、サングラスに黒服姿の集団に導かれるまま、出て行った。




