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第6話 学生写真コンテスト

「私、名前があります。『トトリ』といいます」

唐突に、トリが自己紹介した。

「トトリ?」

「はい…」

「トトリちゃーん?」

「トトリちゃんなの〜ん?」

「はい」

あまり、代わり映えのしない名前であるが、すばるたちは、その名前を、きちんとおぼえた。

「私は、とある夢を追った人を知っています。学生さんたちにとても近い、絵を描く夢を持った男性です」

トトリは、広い空を見上げた。

「その人は、青い空を描くのが好きでした」

青い空は、毎日違う表情を魅せる。

あの人の表情も、感性豊かで、ころころと笑ったり、泣いたりしていた。その隣には…。

感傷にふけるトトリを、すばるが、ジッと見つめる。

そして、言った。

「トトリを被写体に、朝の青空が撮りたい。それなら、コンテストに入賞できるかもしれない!」


第6話 学生写真コンテスト


トーキョーシティ。

日曜日の朝。

快晴。

近所の小さな公園に、すばるとトトリがいた。

朝に弱い、城田兄妹は、いない。

時間は、朝6時。

人通りの少ない朝方だ。

「綺麗に撮る。待っててくれ」

スマホを、タオルで拭きながら、すばるは言った。

日曜日なので、朝の早い小学生が、公園に、いつ来るかわからない。

素早く、納得する写真が撮りたかった。

学生写真コンテストは、文字通り、学生だけが参加できる大会だ。

最優秀賞と優秀賞、佳作がある。

受賞者には、記念バッジが贈られる。

半年ごとに開催されているもので、すばるは、城田兄妹と共に、毎回、写真を投稿している。

もちろん、今まで、一度も入賞したことは無い。

しかし…。

「トリを…。いや、トトリだったよな。トトリを被写体にすれば、コンテストの賞が、とれる気がするんだ」

大きく、深呼吸をする、すばる。

「…私なんかで、良いんですか?学生さん」

「今回のコンテストのテーマ、『トリ』なんだよ」

「そ、そうなんですか?」

コンテストのことが、いつも頭に入っているすばるは、今回の被写体を、実家の両親が通販番組で買ったトリにしようと考えていた。

しかし、実家のトリは、確かオスドリだった。

女の娘のトトリのほうが、カメラ映えするに決まっている。


カシャ


スマホのカメラで撮影したが、トトリは、そっぽを向いていて、失敗だった。

トトリに、文句を言いたいすばるだったが、その目線の先で、理由がわかった。

「…あの〜、学生さん。小学生の僕たちに、公園をゆずってよね!」

小学生数名が、スケボーを持って、口をとがらせている。

場所を変えるしかないようだ。


「ここに、しよう!」

すばると城田兄妹の住むアパート。

外階段を上った、廊下。

そこを、ベストスポットと決めた。

いつもの見慣れた場所。

そこに、トトリが、カメラ映えする気がした。

良し、と。気合を入れる。


カシャ


いつもの朝の街並み。

玄関を出たすぐの場所。

瞳を輝かせる、すばるは、カメラチェックをして、何度もうなずく。

「良いぞ、良いぞ。綺麗に撮れた!」

スマホをズボンのポケットにしまったすばるは、そのまま、トトリに抱きついた。

「ありがとう、トトリ!」

「が、学生さん?」

トトリは、頬を赤くしながらも、懸命に夢を持ち続ける学生・すばるに優しい眼差しを向けた。

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