第75話
夕日がゆっくりと地平へ沈んでいく。
赤が紫へ。
紫が群青へ。
やがて夜の帳が静かに落ちた。
その中で。
蒼と紅の光だけが、激しく交錯していた。
ガキンッ!
キィン!
一進一退。
突き、受け、斬り、躱す。
互いに決定打を許さないまま、時間だけが削られていく。
そこにクールタイムを終えたアースと佐助が駆け付ける。
だが……
二人の間に生まれた空間は、あまりにも濃密だった。
踏み込めない。
割って入れない。
ただ、見守るしかなかった。
「ハア……ハア……ロラン……しつこい……男の人は嫌われ……ちゃうよ……」
息を切らしながらラビィが笑う。
汗が頬を伝う。
しかし炎はまだ消えていない。
「ハア……ハア……ラビィ……僕の事……嫌い……?」
ロランも笑う。
肩で呼吸をしながら。
氷の粒が舞う。
「ううん……大好き……」
その一言。
ロランの目が、ほんの少しだけ柔らぐ。
「良かった……ハア……ハア……」
そしてまた。
蒼と紅が激突する。
夜空に火花が散る。
だが……疲労は確実に蓄積していた。
動きに、わずかな鈍り。
踏み込みが半拍遅れる。
刃の軌道がわずかに甘い。
それでも……
目の奥の光だけは消えていない。
絶対に負けない。負けたくない……
その意志だけが、燃え続けている。
ロランが槍を握り直す。
「次で決めるよ……ラビィ」
蒼い穂先の氷が、さらに凝縮する。
白を越え、淡く発光するほどに。
空気が凍りつく。
ラビィもナイフを構える。
「私も次で最後……これ以上はもたないよ……テロス」
その名を呼ぶ。
炎が揺らぐ。
赤を越え、青……
そして――漆黒へ。
夜を吸い込んだような黒炎が、刃を包む。
空気が震える。
アースが息を呑む。
佐助が唾を飲み込む。
静寂。
世界が止まったかのような一瞬。
「行くよ!」
二人同時に呟く。
地面を蹴る音が、重なる。
蒼光と漆黒が一直線にぶつかろうとしていた。
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です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




