表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/77

第73話

ラビィは自陣を後にし、先ほど来た道とは反対の方角へと歩き出した。


拠点の喧騒が遠ざかる。

代わりに耳に入るのは、あちこちで響く金属音と叫び声。


「囲め!」「回復回せ!」

戦場はまだ熱を失っていない。


その中を、ラビィは静かに進む。


前方から、一人のプレイヤーが後ろを気にしながら早足で近づいてきた。

ラビィは咄嗟にナイフを抜き、構える。


――だが。

胸元の紋章が目に入る。


レガリアの紋章……味方だ。


そのプレイヤーもラビィに気付き、ほっとした顔で駆け寄ってくる。


「おい、あんた! あっちの方へは行かないほうが身のためだぞ」

息を荒げながら言う。


「どうしたんです?」

ラビィが静かに尋ねる。


「あっちでとんでもない戦闘しててな……若い兄ちゃんたち数人が必死で戦ってるんだが……」


一瞬、言葉を詰まらせる。

「一人の槍使いのプレイヤーに、手も足も出ないんだよ」


胸の奥が、微かに疼く。


「そうですか。ありがとうございます」

それだけ言うと、ラビィは歩き出した。


「あ、おい! 無茶すんなよ!」


背後で声がするが、もう止まらない。


「そこにいるんだね……ロラン」

小さく呟く。


やがて、空気が変わる。

悲鳴めいた声が、風に乗って届く。


「うっ……」


「も、もうやめてく……れ……」


さらに進むと視界が開けた。


夕日が傾き、赤く染まる地面。

その中央で――蒼い閃光が舞っていた。


槍が翻る。

弧を描く残光。


ラビィの目が細まる。


「ロラン!」

叫び、駆け出す。


そこにいたのは、蒼い槍を手にしたロラン。

そして、その前で必死に食い下がるアースと佐助。


二対一。


だが、均衡はすでに崩れかけている。

ラビィの声に、アースと佐助の意識が一瞬だけこちらへ逸れた。


その刹那。

蒼い軌跡が二本、交差する。


「うわっ!」


「またかよ……!」

アースと佐助の身体が光に包まれた。


「ラビィさん……その人めちゃくちゃ強いです……気を付け……」

言い終わる前に、粒子となって消えるアース。

佐助も悔しげな表情のまま、転送の光へ。


「うん……知ってるよ、アースくん……」

ラビィは静かに呟く。


そして視線を上げる。

その先に立つのは――蒼の槍使い。


ロランが、こちらを見てニヤリと笑った。


夕日に照らされたその表情は、どこか楽しそうで。

どこか、獲物を見つけた獣のようでもあった。


「ラビィ……楽しもう」

槍を肩に担ぎ、ゆっくりと構える。


「誰にも邪魔はさせない」


風が止む。

戦場の音が、遠のいた気がした。


赤い空の下。

二人だけの空間が、静かに閉じる。


ラビィはナイフを握り直す。

「うん。全力で行くよ、ロラン」


蒼と影。

夕暮れの戦場に、再び火花が散ろうとしていた。

ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。


《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!


更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。


平日:7時頃、19時頃の1日2話

土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話

です。


また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ