第72話
荒れた戦場を抜けながら、ラビィは何人かのレジェンズ陣営プレイヤーと交戦した。
短い斬撃。
翻る影。
「ごめんなさい。通してもらいます」
ラビィの後ろに光の粒子が舞う。
積み上がる撃破数。
けれど足は止めない。
ようやく見えてきた、自陣の拠点。
撃退者が送られて来る転送陣が淡く光を放っている。
その中心では、次々とレガリア陣営のプレイヤーが転送されてきていた。
「くそっ、囲まれた!」
「一回立て直すぞ!」
疲労と悔しさが入り混じる声。
その中に、聞き覚えのある声が混ざる。
「あ、ラビィおかえり」
振り返ると、ユイが立っていた。
さっき撃退されたばかりのはずなのに、もう表情はいつもの調子だ。
「ユイちゃん。もうクールタイム終わったの?」
「うん、ちょうどね。今からまた行ってくるとこ」
弓を肩にかけ直す。
さすがというか、懲りないというか。
「そうそう、さっき佐助くんから聞いたんだけどね……」
少し声を潜めるユイ。
「アースくんと佐助くんが出会ったみたいなんだけど……レジェンズ側の凄く強い人に気をつけなよ!だってさ」
ラビィの目がわずかに細まる。
「どんな人って言ってたの?」
「佐助くんが言うには、青い槍使いって話だったよ」
その言葉で、空気が一瞬だけ止まった。
「なんかアースくんがまだ戦ってるとかで、走って行っちゃったから、詳しくは分からないけど……」
ユイは首をかしげる。
ラビィは、視線を落とす。
頭の中に浮かぶ、あの姿。
槍を構えるロラン。
笑いながらも、真っ直ぐ前を見る横顔。
「……蒼い槍」
小さく呟く。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
もし本当にロランなら。
きっと本気で来る。
だからこそ――。
「ありがとう、ユイちゃん」
顔を上げ、いつもの笑顔に戻る。
「あっ、あとブランクあるんだから無茶したらダメだよ!」
「はーい!分かってますって」
軽く手を振り、ユイは駆け出していった。
その背中を見送りながら、ラビィはそっとナイフに触れる。
「ロラン……」
戦場の向こう。
蒼い槍が舞っているのだろうか。
ラビィは静かに息を吐き、再び前を向いた。
「行こっか」
イベントはまだ序盤。
そして――本当の意味での戦いは、きっとこれからだ。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!
更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




