第56話
「はぁ……マヤさんの家、凄かったなぁ……」
自室のベッドに寝転がり、ラビィは端末を胸の上に乗せたまま天井を見つめる。
「ご飯も美味しかったし……なんか、修学旅行みたいで楽しかったな」
小さく笑って、端末を起動する。
「よし、ログイン」
視界が白く染まり――
次の瞬間、イースタリアのギルドロビーに立っていた。
「さてと、今日は何しよっかな」
受注端末をスライドしていく。
討伐、護衛、採取、連続クエスト――
その中で、ふと指が止まった。
「ん? これ面白そう」
⸻
クエスト名:光と影
クエスト内容:自身の影に打ち勝て
クエスト条件:プレイヤー専用(メンバー同行不可)
クリア報酬:スキルブック
⸻
「メンバーは連れて行けないんだね」
ステータス画面を開き、編成からドラキュを外す。
完全ソロ。
「よし、これで受注……っと」
端末から通知音が鳴る。
受注完了。
補足情報を開く。
「ふんふん……フィールド限定で、自分の好きな場所で戦闘開始……なるほどね。よし、広い所行こーっと」
⸻
街を抜け、以前採取をした草原へ。
見渡す限り、障害物は少ない。
「うん、ここなら思いきり動けるね」
端末を操作。
クエスト:光と影
▶ 戦闘開始
『まもなく戦闘を開始します』
カウントダウン。
5
4
3
ラビィは静かに二刀を抜き、構える。
2
1
目の前の空間が歪み――
現れたのは。
自分と、まったく同じ姿の“影”。
装備も、構えも、視線も同じ。
影ラビィも、二刀を抜いた。
BATTLE START
地面を蹴る音が同時に響く。
ガキンッ!!
開幕から全力の衝突。
「っ……強いじゃん私!」
ラビィはニヤリと笑う。
弾き上げて隙を作るが――
影ラビィは後方宙返りで距離を取る。
着地と同時に再突進。
「それは読んでるよ!」
ラビィも同時に踏み込む。
ガキィン!!
刃と刃が押し合い、火花が散る。
ほぼ互角。
一度離れる両者。
「いけるかな……よし、やってみよう」
ラビィは細かいフットワークで左右に揺さぶりながら前進。
的を絞れず、一瞬止まる影。
「行っくよー!」
大きく跳躍。
影ラビィが見上げる。
「スキル――空中歩行!」
空中を蹴り、急降下。
斬ッ!!
だが――
影は致命傷を紙一重で回避。
代わりに右腕が霧のように消えた。
「初見でアレ避けるの!? マジ神ムーブだね私!」
しかし。
片腕になった影ラビィが再突進。
腕一本分、加速力が上がった。
「速くなってる……!」
ギン! ギンッ! ザッ!
連撃を受け、ラビィのHPが削れる。
「なかなか参ったね……」
間合いがじりじり詰まる。
来る――直感。
紙一重で回避し、二連撃。
だが影も回避。
互いに限界域の攻防。
その瞬間。
ラビィのHPが半分を切る。
戦闘時間表示――10:02
ラビィの口元が上がった。
「今だ……舞兎」
一瞬、世界が静止したように見えた。
次の瞬間。
超高速の多重斬撃が影ラビィを包み込む。
斬撃音すら遅れて響く。
影の身体が、光の粒子になって崩れ落ちた。
静寂。
「はぁ……はぁ……」
膝に手をつき、息を整える。
「初めて使えたよ……舞兎……」
霧散した影の残光が消えていく。
ラビィの端末に表示が浮かんでいる。
⸻
スキル名:舞兎(二刀流専用)
効果:超高速多重連撃
条件:HP50%以下・戦闘開始から10分以上経過
⸻
「……条件きつ」
でも。
ラビィは満足そうに笑った。
「でも、私らしいスキルだね」
草原の風が吹き抜ける。
ソロで掴んだ、確かな自信。
ラビィは静かに、二刀を納めた。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




