第54話
「はい次これー!」
「え、まだあるんですか!?」
試着室のカーテンの向こうで、ラビィの悲鳴にも似た声が上がる。
店内の水着コーナーは、すっかりナナミとマヤの遊び場になっていた。
「うーん、さっきのも良かったけど、こっちの色も似合いそうだよね」
「ラビちん細いっスから、こういうのも絶対アリっス」
ぽんぽんと新しい水着を差し入れられ、ラビィは中で目を回していた。
(ま、まだ続くの……これ?)
だが二人は完全に善意。しかも楽しそう。
自分のために真剣に選んでくれているのが分かるだけに、「もういいです」とはとても言えない。
「ど、どうですか……」
そっとカーテンを開けるラビィ。
「良いっス!」
「可愛い!」
即決の高評価。
だが次の瞬間、
「はい次これ!」
「次はこれっス!」
両側から新作投入。
ラビィは心の中でそっとつぶやく。
(これ、終わるタイミングどこ……?)
数着後――
ラビィはついに決断した。
白から水色へと淡く変化するグラデーション。腰にはふわりと揺れるパレオ。
「わ、私! 気に入りました! こ、これ買います!」
半ば強引に購入宣言。
「あ、逃げたっスね」
「でもそれめっちゃ似合ってるよ!」
二人も満足そうだ。
⸻
会計を済ませ、店を出た三人。
「いやー楽しかったねー」
ナナミは自分の水着袋をぶんぶん振ってご機嫌だ。
「今度のお泊まり会では、ラビちんの言ってた海に行きましょうっス」
マヤも新しい水着に満足げ。
その横でラビィは、
(水着……8000L……高っ……)
と、そっと震えていた。
(回復薬何個分だと思ってるの……)
だが口には出さず、にこにこ頷く。
⸻
三人はそのままギルドへ戻った。
「よし、じゃあ〜あと一つクエスト行って寝まスか」
「うん!」
元気なナナミ。
「ラビちん、何かおすすめあるっスか?」
受注端末を操作しながらラビィは素早く検索する。
(安全・簡単・報酬そこそこ……)
「あ、これどうですか?」
⸻
クエスト名:東方採取録
内容:東エリア限定のアイテムを一定数採集し、ギルドへ報告
報酬:2000L
⸻
「簡単そうで良いっスね」
「これなら私も出来そう!」
(これ4回やれば水着代回収……)
ラビィの目が静かに燃える。
三人は受注。
端末に完了通知が届く。
「よーし、サクサク探すぞー!」
なぜか一番やる気に満ちているラビィ。
「ラビィちゃん、テンション高くない?」
「なんでっスかね?」
二人は首を傾げる。
⸻
街の外へ出て、少し歩いた草原地帯。
「この辺ですね」
ラビィは地面近くを注意深く探す。
「あ、あった。これです」
指差した先には、ほのかに光る小さな花。
「この花が対象アイテムなので、集めてくださいね」
「了解っス」
「がんばる!」
三人はメンバーを連れ散開し、それぞれ採取を始める。
「もし魔物に襲われたらすぐ行くんで呼んでくださいねー!」
少し離れた場所からラビィが声を張る。
返事をしながら花を探すナナミとマヤ。ライオットとユッキーもキョロキョロと辺りを見回している。
そしてラビィは――
(水着代……水着代……)
静かに燃える金欠ハンターの目で、次の光る花を探していた。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!
更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




