第53話
寺院での激闘を終え、ラビィたちはイースタリアへの帰路を歩いていた。
戦闘の緊張から解放され、どこか空気が軽い。
その時だった。
「どうっスか、似合ってるっス?」
マヤがぽんっとステータス画面を開き、衣装を変更する。次の瞬間、装備が東方風の和柄衣装へと切り替わった。
袖はゆったり、布地には艶やかな文様。戦闘服とはまるで違う、しっとりとした雰囲気だ。
「可愛い!」
ナナミが目を輝かせる。
「それどうやるの? ラビィちゃん!」
「えっとですね、ステータス画面の“装備”から“衣装カスタム”を選んで、和柄を指定して決定です」
言われた通りに操作したナナミの装いも、ふわりと和柄へ変わる。
「じゃーん!」
くるりと一回転して見せるナナミ。
「良いっスね! さあラビちんの番っス!」
急かされる形で、ラビィもおそるおそる衣装を変更した。
淡い色合いの和柄衣装に身を包んだラビィは、どこか落ち着かない様子で二人を見る。
「ど、どうです? お二人ほどスタイルに自信は無いので……」
「可愛いし似合ってるよ!」
「問題ゼロっス!」
即答に、ラビィの耳がほんのり赤くなる。
「そもそもアバターなんスからスタイルは……」
「……あ」
三人同時に気付く。
「これ全部ショーンさん作なんスよね」
顔を見合わせ、吹き出す三人だった。
⸻
イースタリアへ戻った一行は、そのまま街をぶらつくことにした。
「どうするっス? もう一個クエストでも行くっスか?」
「私、この街でお買い物したいな」
ナナミの一言に、ラビィの目が少し丸くなる。
「良いですね。行きましょう」
石畳の通りには、東方風の店が軒を連ねている。布屋、装飾品店、甘味処。どこも色鮮やかで賑やかだ。
「ゆっくりショッピングなんて私、初めてです」
「えっ、マジっスか!?」
「ラビィちゃん、いつも何してるの?」
「え、クエストしかしないですね」
やっぱり、と言いたげに苦笑いする二人。
衣装屋の前でナナミが一着の服を手に取る。
「これ良い! 可愛いよラビィちゃん」
「い、いやー……ちょっとその服は……動きにくそうです……」
即・戦闘基準。
「ラビちん、これなんか良いんじゃないスか? 動きやすそうっスよ」
「うーん……防御が低そうですね……」
完全にクエスト脳だった。
「もーラビィちゃんたら! じゃあ何が欲しいの?」
二人に見つめられ、ラビィは少しだけ視線を泳がせる。
そして、小さな声で言った。
「私……水着が欲しいです」
「水着!? た、確かに動きやすいけど、防御も何も無いよ!?」
「さすがに水着で戦わないですって!」
慌てて手を振るラビィ。
「いや、その……南の方に綺麗な海岸があってですね……すごく綺麗な海があるんですよ……そこでちょっと泳いでみたいなぁって……」
語尾がだんだん小さくなる。
「最後聞こえないっス。何て言ったんスか?」
「一緒に行きたい人が……その……いて……」
みるみる顔が赤くなるラビィ。
「ちょ、ちょっとラビィちゃん!? もしかして男の子!?」
ナナミのテンションが跳ね上がる。
ラビィはもう何も言えず、うつむいたまま。
「これは気合い入れて探さないとだね」
「任せるっス! ラビちん!」
妙な使命感に燃える二人。
そして三人は、水着を扱っていそうな衣装店へと入った。
⸻
店の奥。
色とりどりの水着が並ぶコーナーの前で――
ラビィの動きが止まった。
ぴたり、と。
「……ラビィちゃん?」
「ラビちん?」
視線の先には、可愛らしい水着、上品な水着、大胆な水着。
(こ、これを着るの……?)
想像してしまったのだ。
海。青い空。白い砂浜。
そして――隣に立つロランの姿を。
「~~~~っ!!」
顔から湯気が出そうな勢いで真っ赤になるラビィ。
完全にフリーズである。
「固まってるっス」
「固まってるね」
両側から覗き込まれ、さらに赤くなるラビィだった。
「だ、大丈夫です! えっと、その、えっと……!」
まともに商品も見られないまま、挙動不審になるラビィ。
そんな彼女を見て、ナナミとマヤはにやにやと笑うのだった。
「これは選びがいあるっスねぇ」
「うんうん、気合い入れてコーディネートしよ」
恋の気配に、女子二人のテンションは最高潮。
ラビィの受難は、まだまだ続きそうだった。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!
更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




