第45話
南の孤島は、入口こそ白砂と青い海の楽園だったが、奥へ進むにつれ景色は一変していった。
足元は黒く焼けた岩場。
空気は熱を帯び、かすかに硫黄の匂いが混じる。
「さっきまでリゾート気分だったのにね……」
ラビィが額の汗をぬぐう。
「この感じ……いかにも“奥にヤバいのいます”って地形だよね」
ロランが苦笑した、その直後だった。
岩山の向こう、赤い光が脈打つ。
「見えたね」
ロランの声が静かに低くなる。
「あれがフレイムリング……いや」
巨大な影が、ゆっくりと呼吸に合わせて上下している。
「フレイムドラゴンだね」
真紅の鉱石のような鱗に覆われた巨体。
山の一部と見間違うほどの大きさの竜が、岩盤の上で眠っていた。
「めちゃくちゃ硬そうな身体だね……」
ラビィが率直な感想を漏らす。
「うん、めちゃくちゃ硬いよ」
ロランは苦い顔で続けた。
「僕、一度ソロで挑んだことがあったんだ。でもまるで歯が立たなくてさ。すぐリタイアした」
悔しさを飲み込むように拳を握る。
「ラビィとなら何とかなるかもって思って、誘ったんだ」
その視線に、ラビィはニッと笑ってみせた。
「んー、何とかなるかな……まっ、やってみなきゃ分かんないってね!」
ウインク一つ。
その軽さに、ロランの緊張が少しだけ和らぐ。
「じゃあ――いこう」
起こさないよう、慎重に距離を詰める一行。
ラビィが二刀を構え、振り返らずに小さく頷いた。
ロランの手には蒼く光る槍。
呂布は方天画戟を肩に担ぎ、慶次郎は朱槍を回す。
趙雲と利家も、それぞれの槍を静かに構えた。
準備は整った。
「一点集中でいくよ!」
ラビィの声を合図に――
六人は同時に地を蹴った。
ズバッ!
ズドン!
ザンッ!
刃と槍と戟が、フレイムドラゴンの腹部へ一斉に叩き込まれる。
衝撃で岩盤が砕け、爆風が周囲に広がった。
次の瞬間。
ゴゴ……と地鳴りのような音が響く。
巨大な瞼が開いた。
黄金の瞳が、ゆっくりと六人を見下ろす。
「おいおい……マジかよ……」
慶次郎が呆れ声を漏らす。
「これだけの攻撃を受けて、傷一つ無しとは……」
利家も唖然としていた。
竜の腹部。
そこには――
傷どころか、白い跡すら残っていない。
「こりゃ、参ったね……どうしよっか」
ラビィが苦笑する。
ロランの表情が沈む。
「これだけの戦力でも無理なのか……」
視線を落とし、静かに言った。
「ラビィ……残念ですが、諦めましょう。あなたのメンバーまで消失させる訳にはいかない」
ステータス画面を開き、指が“クエストリタイア”に伸びる。
その手首を、ラビィがそっと掴んだ。
「ロラン」
振り向いたロランの目を、まっすぐ見る。
ラビィは、いつもの無邪気な笑顔ではなかった。
戦う時の顔だ。
「諦めるのは――まだ早いかもよ」
背後で、フレイムドラゴンが咆哮を上げた。
灼熱の戦いは、ここからが本番だった。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




