第39話
前田家の陣で一晩を過ごしたラビィたち四人と二騎。
朝の空気は張り詰めているはずなのに、どこか穏やかだった。
「今日、戦があるっていうのに、昨日の夜はみんな楽しそうだったね」
焚き火の名残を見ながらラビィが言う。
「そうですね。みんなラビィと同じなんじゃないですか?」
ロランが肩をすくめる。
「私と同じ?」
「ええ、バトルマニアでしょ?」
にやりと笑う。
「バトルマニアって失礼な! ちょっと戦うのが好きなだけだもん……」
頬を膨らませるラビィ。
「違いますよ」
静かな声で趙雲が話し始めた。
「兵たちは、今夜が最後の食事かもしれない……それならしんみりするより楽しんだ方が良い。いつの時代もそんな物ですよ戦の前なんて……」
そう言うと趙雲は空を見上げた。
その時、陣の中央から太い声が響いた。
「皆の者、集まってくれ!」
前田利家だ。
兵たちが一斉に集まる。
「此度の戦は、この場を守りきる事にある! ワシらが守りきれば、殿が戦況をひっくり返してくれる! 良いな!」
「おおーーッ!!」
地鳴りのような鬨の声が上がる。
「ねーねーロラン。殿って誰のこと?」
緊張感ゼロの声でラビィ。
「ああ、織田信長公ですね。第六天魔王って呼ばれる凄い人ですよ」
「ふーん……」
「聞いといてその態度はどうなんですか……」
ロランが苦笑する。
次の瞬間、戦の始まりを告げる法螺貝が鳴り響いた。
敵の足軽たちが押し寄せてくる。
「行くぜぇぇぇ!!」
慶次郎が巨馬に跨り、朱色の大槍を振り回しながら敵陣へ突っ込んでいった。
「よし、僕たちも行きましょうか」
趙雲は白龍へ軽やかに跨り、呂布は無言のまま赤兎馬の腹を蹴る。
二騎は風のように駆け出した。
「よーし、私も負けないぞ!」
ラビィは腰の二刀を抜き、地を蹴る。
「行きます!」
ロランも蒼く光る槍をくるりと回し、後に続いた。
四人――いや、慶次郎を加え五人の周囲だけ、戦場の景色が変わる。
敵兵が次々と宙を舞う。
「な、なんだあいつらは!?」
敵の隊列が一気に乱れた。
「うぉー!」
ラビィがさらに加速する。
ズババババッ!!
一瞬で五人の兵が地に伏した。
「やるねぇ嬢ちゃん!」
慶次郎が豪快に笑いながら並走する。
「慶次郎さんも!」
「やるかい? 一緒に!」
「はい! せーのっ!」
ドガァァン!!
二人が同時に敵陣へ飛び込むと、土煙が爆発のように舞い上がった。
「ははっ、バトルマニア確定だねラビィ」
ロランが楽しそうに呟く。
やがて――
「退却! 退却ーー!!」
敵軍が総崩れになり、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「よし! 終わりだ嬢ちゃん」
慶次郎がラビィの肩に手を置く。
「えっ、もうですか? 今からが楽しくなるのに……」
「ハッハッハ! こいつは良いや!」
慶次郎は腹を抱えて笑った。
陣へ戻ると、利家が大股で近付いてくる。
がしっとラビィの手を掴んだ。
「ワシの所で働かんか!」
「えっ」
バシン!
慶次郎が利家の頭をはたいた。
「あいたっ! こらっ慶次!」
「戦のたびに連れ回す気かよ叔父貴!」
兵たちのどっとした笑いが陣に広がる。
空は晴れ渡り、前田の旗が誇らしげにはためいていた。
前田軍、勝利である。
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平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




