第37話
ラビィがログインすると、視界の中央に赤い文字のウィンドウが浮かび上がった。
【注意告知】
バグにより大型魔物の出現事案が発生しています。
「おっ?」
思わず足を止め、ラビィはその告知を開いた。
マップが表示され、見覚えのあるエリアが赤く囲まれている。
「うわ……ここ、昨日私が教えた場所だ」
さらに文章を読み進める。
対象魔物への挑戦は個人の判断に委ねられますが、
本日以降のメンバー消失について運営は責任を負いかねます。
告知以前の消失対象者には精査の上、お詫びの品をお送りさせていただきます。
「うわー……急に重たい文章になったなぁ」
腕を組みながらも、どこか感心したように頷く。
「いやー、仕事早いね!ナナミさん」
「ん?」
背後から声がした。
振り向くと、ロランが立っていた。
「ラビィの知り合いに運営の人でもいるの?」
「えっ!? い、いないいない! ただ運営さん仕事早いなーって思っただけ!」
慌てて手をぶんぶん振るラビィ。
ロランは首を傾げつつも、すぐに告知画面へ視線を戻した。
「やっぱりバグだったんですね、あの魔物。僕一人じゃ絶対無理でしたよ」
「私もロランが居たから何とか勝ててるんだよ」
にこっと笑うラビィ。
その直後、ナナミに言われた言葉が頭をよぎる。
──好きな子でも出来たの?
(やばい……私、今めっちゃロランのこと意識しちゃってる……)
顔がじわっと熱くなる。
「ん? ラビィ、顔赤いよ。大丈夫?」
「だ、だ、大丈夫です!!」
即答。
ロランは不思議そうにしながらも、それ以上は追及しなかった。
「アニバーサリーイベントも、だいぶやること無くなってきちゃいましたね」
「だねー」
「そろそろ新しいメンバーのデータ、取りに行きません?」
ラビィの目が一瞬で輝いた。
「いいねー! どこ行く?」
さっきまでの動揺はどこへやら、完全にいつものラビィである。
ロランは端末を操作しながら言った。
「次は戦国時代の日本なんてどうです? この時代、槍の名手がたくさんいるんですよ」
「うん! いいよ!」
二人はギルドから遡行施設へと移動する。
後ろには呂布と趙雲の姿もあった。
施設へ着くとロランが端末を操作する。
「時代設定……エリア設定……よし、完了。準備いい?」
「おー!」
光が視界を包む。
⸻
次に目を開けた時、そこは見渡す限りの陣地だった。
はためく旗、並ぶ兵、遠くに見える山並み。
「わぁ……なんか懐かしい感じする。半蔵さんが居た時代みたい」
「そうそう、レガリア時代のラビィの初期メン、服部半蔵がいた頃に似てますね。それよりは少し前の時代になるんですけどね」
「今回、僕の目的は――前田 利家です」
「…………」
ラビィは真顔になった。
「うん、分からないのは知ってました」
「えへへ」
「加賀百万石の祖として有名な武将で、槍の腕も一流なんですよ」
「へぇ〜!」
感心した様子で頷いたラビィが、ふと手を叩いた。
「あっ! 前田さんなら知ってるよ!」
「え?」
「前田 慶次郎さん!」
ロランの目が丸くなる。
「おっ、傾奇者ですね!」
「それそれ! 派手で強い人」
「じゃあラビィは慶次郎狙いでいきます?」
「うん! そーする!」
目的が決まり、二人は顔を見合わせて頷く。
「前田家の陣、あっちですね」
ロランが遠くの旗を指差す。
風に揺れるその旗には、梅鉢の紋。
意気揚々とラビィが言う。
「よーし、戦国武将ゲットだー!」
呂布が無言でため息をつき、趙雲は静かに微笑む。
四人と二頭はゆっくりと、前田家の陣へ向かって歩き出した。
戦国の風が、甲冑の隙間をすり抜けていった。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




