第34話
「もう少しでサービス開始から半年ですね」
フィールドで魔物を斬り伏せながら、ロランがしみじみと言った。
「そうだねぇ」
ラビィも軽い調子で返しつつ、目の前の敵にナイフを突き立てる。光の粒子となって消える魔物。
二人はいつものようにクエストの最中だった。
「レガリアは一周年祭はありましたけど、ハーフアニバーサリーは無かったですし。レジェンズはあると良いなぁ」
「う、うん。そうだね」
あるよ。
めちゃくちゃあるよ。
しかも私、内容ほとんど知ってるよ。
(言いたい……! でもダメ……!)
心の中でだけ大騒ぎのラビィ。
「よし、クエストクリア!」
ロランの端末に完了表示が出る。
少し遅れてラビィの視界にも同じ表示が浮かんだ。
「こっちも終わったー」
「じゃあ、そろそろ僕落ちますね。明日、仕事早いんで」
「うん! あっ、ロランって社会人なんだよね?」
「え? ああ、そうですよ。このアバターだと年齢分かりませんもんね」
ロランは自分の白髪ロングの青年アバターを見下ろして笑う。
「今年から社会人の一年生です」
「えっ! 私も! 同い年なんだ!」
「え、マジですか? 年下だと思ってました」
「どういう意味ー!?」
笑い合う二人。
「じゃあラビィもそろそろログアウトしないと明日に響きますよ」
「うっ……正論」
二人はギルドへ戻り、入口前で立ち止まる。
「また明日も時間合ったらやりましょう」
「うん! お仕事頑張ろうね、同級生!」
「ですね」
そう言ってロランはログアウト。
隣に立っていた姿がふっと消える。
「……よし、私も落ちよ」
ラビィもログアウトした。
――翌朝。
「おはよう、ラビィちゃん」
「おはようございます、ナナミさん」
出社したラビィに、ナナミがにこやかに声をかける。
そこへフィニスが入ってきた。
「今日、午後からみんな会議室に集まってね」
「はい」
開発チーム全員が返事をする。
午後になり、ぞろぞろと会議室へ移動。
指定された席にそれぞれが座る。
会議の内容は、レジェンズのハーフアニバーサリーについてだった。
最終決定したイベント内容一覧。
PRイベントの日時と会場。
特別イベントの内容と報酬。
ハーフアニバーサリーに関する事案を、各部門ごとに担当者が説明していく。
ラビィは真面目な顔でメモを取りながらも、内心は複雑だった。
(うわぁ……こんなに聞いちゃっていいのかな……でも仕事だもんね……仕方ないか……)
自分に言い聞かせる。
会議が終わり、開発室へ戻る一同。
ラビィは資料を抱えたまま、フィニスに声をかけた。
「あのー……」
「なに?」
「さっき会議で説明されたのがハーフアニバーサリーの内容なのは分かったんですけど……その……隠しイベントとか、実はまだ秘密の何かがあるとか、そういうのは無いんですか?」
ショーンが即座に振り向いた。
「ねーよ! そんなもん!」
「即答!?」
フィニスも肩をすくめる。
「そうね。隠しイベント作ってる時間も無いし、私たちにまで隠す必要も無いわ。さっき説明した分で全部よ」
「そうですか……分かりました」
ラビィは素直に引き下がり、資料を見直す。
「何かあったんスか? ラビちん」
マヤが椅子をくるりと回して聞いてくる。
「いえ……私プレイもしてるから、内容分かっちゃうとちょっと楽しみ減るなぁって……」
「自分の為かい!」
ショーンの鋭いツッコミが飛ぶ。
ナナミは苦笑い。
フィニスも呆れ半分の表情。
そしてマヤは腹を抱えて笑っていた。
「アハハハ! さすがラビちんっスね!」
ラビィは頭をかきながら照れ笑いする。
プレイヤーでもあり、運営でもある。
その微妙な立場に、今日も少しだけ振り回されているラビィだった。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




