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12. 新たに挑むコンセプトは『セクシー&ダンス』

「それでは! 『ルミナ・ドリーム・ステージ本戦』の作戦会議を始めまーす!」


 冒険者ギルド『獅子の牙』の会議室。タケルは意気揚々と声を張り上げた。

 テーブルを囲むのは腕を組むヴァルガン、資料を準備するセレイナ、楽しげに笑うガルド、欠伸をするレオン。いつものRE:Genesisチーム……に加えて、エリオがしれっと同席していた。


「……なんでエリオがここに?」

「ギルド宛に、RE:Genesisをサポートしたいと連絡がありまして。有益な申し出ですので来ていただきました」

「今回はオレちゃん、特別顧問みたいなもんだしー。本戦で勝ちたいならオレちゃんの意見は役に立つっしょ? 帰れって言うなら大人しく帰るけどー」

「まあ、予選でもすごく助かったしな……。わかった、アドバイスは素直に受け取るよ」


 エリオの存在はテレビ業界を知る先輩として心強い。

 タケルはありがたく提案を受け入れ、本題に入ることにした。


「じゃあ、セレイナさん。資料の説明をお願いします」

「はい。こちらがテレヴィ局から届いた『ルミナ・ドリーム・ステージ本戦』の企画資料です」


 セレイナは手元の資料を配りながら、説明を始める。

 中を開くと本戦の舞台となる、豪華なステージのイメージ画像が載っていた。


「ルミナ・シティ中央公園にて特設野外ステージ有観客ライブと、テレヴィの生放送が同時進行する二重構造のイベントとなります。予選とは異なる形態ですね」

「ってことは、お客さんが目の前にいるんですね。投票もあるみたいですけど、予選と同じ形なんでしょうか?」

「いえ。今回は現地投票と、魔導通信の投票を合算して最終順位が決定するようです。恐らく半々といったところですね」

「ヴァルガンは目の前の客とテレヴィに同時アピールしなきゃいけねぇのか。今までと違う忙しねぇイベントだな」


 予選は無観客のスタジオだったが、本戦は観客が入る。

 だが、視聴者投票があるので現場が盛り上がればOKとはならない。むむ、と眉を寄せながらガルドが顎髭を擦る。


「そこが難しいよねー。ルナちゃんは現場でもテレヴィでも抜群のアピール力。盛り上がりは本家さんもいい勝負だろうけど……そのテンションをどうやってカメラに乗せるかが問題」

「色々考えてみたけど、ここは正攻法で行こうと思う。目線の意識、照明との位置関係、カメラへの魅せ方……あの子に言われたことは全部メモってあるし、自分でも調べ直した」


 タケルがノートを広げると、ルナから教わった内容が書き込まれていた。それだけではなく、図書館に改めて通って調べ直した情報も多数追記されている。ただ相手の指摘を鵜呑みにせず、自分の目で裏取りをした証だ。

 生放送のカメラで伝わらないヴァルガンのパワー、その課題をクリアしなければ本戦での勝利はあり得ない。


「悔しいけど、ルナの言ってる理屈は正しい。だから、それを俺たちのスタイルに落とし込む!」

「ガッハッハ、敵の武器を奪って自分のものにするってわけか! そういう正面からぶん殴りに行くスタイル、俺は好きだぜ」

「うむ。敵に塩を送ったことを後悔させてやるとしよう」


 ルナの容赦ないダメ出しを受け入れた上で、それを自分の形に昇華させる。

 魔王としてのプライドを持ちながらも、成長のため貪欲に技術を吸収する姿勢。それこそがヴァルガンの強さだ。


「具体的にどんなパフォーマンスで挑むかも決めましょう。俺は画面映えする強さを出したいと思っています。予選で足りなかった、ヴァルガンのキメを作りたいんです」

「それだが、俺から提案がある」


 タケルが説明を続けようとしたところで、これまで黙っていたレオンが口を開く。その表情は自信に満ちており、これならいけるという確信めいたものがある。


「前に作った『サマー・スプラッシュ!』は陽気なノリに特化してた。今回はお前の言う見栄えも意識して、『セクシー&ダンス』ってテーマはどうだ」

「セクシー……?」

「RE:Genesisではやっていなかった路線ですね。意図をお聞きしても?」


 レオンから出てきた意外な提案に、会議室が少しざわついた。

 眼鏡を押し上げながら、セレイナが問い返す。


「まず、今までよりも見た目の印象を前に出す曲の方が勝負になると思ってる。こいつはクソ野郎だが、顔はいいからな」

「なんだと? 我は内面も身体も力も素晴らしいだろうが」

「一切照れずに言えるのがすげえよヴァルガン」

「で、ダンスに色気とキレを混ぜりゃ、筋肉アピールにもなるだろ? 向こうが計算された美しさなら、こっちは音楽も含めた野性味と色気で勝負するんだ」

「なるほどー。大人の魅力と肉体美をキレッキレに魅せるわけだ。カメラの寄り引きも活かしやすいし、ハデになりそーじゃん♪」

「……レオンさん、最高の提案ですよ! ライブとテレビを両立させるパフォーマンスになると思います!」


 魔王のワイルドさを、セクシーなダンスに落とし込んで魅せつける。

 これならルナから学んだ「カメラの切り替わりに合わせたアピール」や「筋肉の陰影を活かすポージング」を存分に発揮できる。


「だろ? 現場に来た客が思わずノリたくなる、イケてるダンサブルなナンバー。もう頭の中には構想ができてるぜ」

「よし、方針は決まりですね。みんな、本戦に向けて準備を進めましょう!」


 黒板に大きく『セクシー&ダンス』と文字を書いてから、タケルはパンッと手を叩いて指示を出し始めた。


「レオンさんは新曲制作をお願いします! とにかくカッコよく、超セクシーに仕上げてください!」

「またカンヅメすることになりそーだな……酒の差し入れ、忘れんなよ?」

「セレイナさんとガルドさんは、衣装周りの進行をお願いできますか? 今回は、筋肉映えすることを意識してほしいです」

「おう! 『獅子の牙』お抱えの職人に発注しておくぜ! 素材はギルドで狩って集めてくるから安心しな」

「参考用に、照明やカメラの配置図も局から取り寄せておきます。それを元に練習すれば、本番での誤差を減らせるはずです」


 チームが一丸となって、打倒ルナに向けて動き出す。

 その熱気を感じながらタケルはヴァルガンに向き直った。


「これからはルナのアドバイスを元に、みっちり特訓だ。かなり細かい指示を出すことになるけど、ついてこれるか?」

「愚問だ、我に限界などない。壁があったとしても突破できるよう、貴様が導くのであろう?」

「もちろん! 絶対、テレビの向こう側に……RE:Genesisを届けるぞ!」


 プロデューサーとしての闘志を燃え上がらせるタケル。

 氷の完璧さに対し、計算を混ぜ合わせたパッションで挑む。RE:Genesisの新たな挑戦が始まろうとしていた。

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