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注射  作者: 八味とうがらし
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注射 注射

「いえいえそうじゃなくて、赤土さんですよ」

「オレェー。えーーー!」

「また冗談きついですよ。黄島さん」

「これは冗談ではないですよ」

「本当なんですか」

「本当です。ただ正式には手続の関係で今週中の昇格らしいですけど」

「なんで・・オレ。どうしよう」

「おめでとうございます。赤土教授」

「いやちょっと待ってよ。どうして」

 赤土耕太は突然舞い込んだ教授昇進に喜びよりも『なぜ』しか頭の中になかった。

「一色教授と連絡って取れないかな」

「私も一色さんの連絡先知りませんし、知っていたら一番最初ここにお邪魔したとき一色さんに連絡を取ってから来てますよ」

「そうだよな」

「赤土教授は連絡先ご存じないんですか」

「オレも知らないんだ。と言うよりも教えてくれないんだよ」

「困ったな」

「オレ総務課に行ってなぜオレになったのか聞いてみる」

「あーそれなら聞いてますけど。一色さんが学長や理事長に一色さんが辞めた後この研究室を任せられるのは赤土耕太しかいないって猛烈にアピールされたらしいですよ。その上に最初の学会での説明プレゼンを出雲大学の多くの教授もご覧になってらしたので一切の反対がなかったとか!なので即決だったそうですよ」

「辞令が近々来ますよ赤土教授」

「・・・」

 これは異例中の異例のことではあるがやはりこの研究成果は世界へのインパクトが絶大の為皆赤土耕太の今後の研究を邪魔してはいけないと思っていた。

 黄島美波は赤土耕太が教授になって数日が経ったある日研究室を早退していた。

「一色教授きましたよ」

「黄島美波ちゃん待っていたよ」

「一色教授ここでは黄島美波はやめてください。本名でお願いします。ややこしいんです」

「わかったよ紺野未知子」

「ありがとうございます」

「それで教授完成まで後どれくらいなんですか」

「もう実験機は完成したよ」

そう言うと地下にある作業室兼実験室に紺野未知子を向かい入れた。

そこには高さ1m直形20cmほどのロケットが数機固定されていた。

「教授これって!」

「そうだよこれが赤土耕太が各会場で講演している亜空間ロケットだよ」

「ロケットと言うよりもミサイル!」

「まぁミサイルがロケットでも構わないけどこれがつまり亜空間に入り込みその世界の意志をコントロールするんだよ」

「この亜空間ロケットは小規模な為効果は限定的なものになってしまう」

「限定的ってどれくらいなんですか」

「距離で言うと半径2kmくらいかな!では明日よりスタッフを招集してくれないか」

「承知いたしました。一色教授」

「ところで、赤土耕太はどうしている」

「はい。なぜ自分が教授なのか不思議だと毎日言ってます」

「まあそれは仕方がない。赤土耕太には気の毒だがもう少し頑張ってもらわないと」

「紺野未智子もう少し黄島美波と黒崎彩音を演じてください」

「はい」

 今日の講演会から赤土耕太研究員を改め赤土耕太教授講演会となった。赤土耕太は違和感だらけの中日々をこなしていた。

 しばらく経つと講演会もひと段落ついてきた。

「赤土教授それでは私もお手伝いする事がなくなってきましたので、明日をもってアルバイトを辞めさせていただきます」

「非常に残念ですね。残ってきただきたいのですが・・・」

「すみませんこればかりは、私も次のアルバイトが決まってますので」

「そうですか・・重ね重ね残念です」

「ありがとうございます。明日は総務に挨拶をしてそのまま帰宅しますので、赤土教授とは今日が最後となります。短い間でしたがお世話になりました」

 翌日の講演会は朝10時からと早い為研究室には行かず直接会場に向かっていた。

「失礼します赤土耕太研究室の黒崎です。皆さま今までお世話になりました本日を持って研究室のアルバイトを止める事になりました。皆さまありがとうございました」

 黒崎彩音は総務課で挨拶をし何度か業務のやり取りをした職員と軽く談笑し大学を後にした。

「これで黄島美波も黒崎彩音も終わり。キツかったぁ」

 そう言うと予約を入れていた美容院に今までと全く違う金髪にした。とは言うもののこれが紺野未知子本来の格好なのだ。赤土耕太はこの紺野未知子とすれ違っても全く気づかないだろう。

 一色教授の実験に集まったスタッフは総勢20名皆大学の気象観測実験ロケットと触れ込みで集まっている。

「皆さんご協力ありがとうございます。いよいよ発射の時です。ただし初号機なので大変危ないですので発射台にロケットをセット出来ましたらこの地を離れてください」

「了解でーす」

「発射台設置完了です」

「気象ロケット発射台にセット完了」

一色教授は1人発射台やロケットの最終確認をしていた。

スタッフの方を振り向いて笑顔でokサインを出した。

皆が拍手をして完了を喜んだ。

「ではスタッフの皆様ありがとうございます。こちらでアルバイト代を手渡しいたします」

帽子を深々と被った紺野未知子が一人一人に丁寧にバイト代を渡した。バイト代を手にしたスタッフは素直に帰っていった。

「さていよいよだよ紺野未知子」

「はい教授」

「ではカウントダウンを始めます」「10 9 8 7・・・3 2 1」

一色が発射ボタンを押すとロケットは無事に空へ向かって飛び立った。飛び立って1分後ロケットの先端部分から緑色に発光し一瞬でロケットが消えていった。

一色と紺野は顔を見合わせ喜びを顔いっぱいにだし握手をした。

「よし成功だ。あとはニュースが騒いでくれるだろう」

 発射台を時間別で契約したアルバイト数名に撤収させ8tの箱型のトラックに積み込ませた。そして発射準備のバイトスタッフと同じ様にその場で解散させた。

「さて帰って今後の計画の確認をしますよ」

そう一色が紺野未知子に言うと二人は8t車に乗り込み空き地を後にした。

 それから数日が経った時のことだった。

「こんばんは7時のニュースです。本日のニュースはこちらです」

「始めに大変不思議なニュースからです。こちらは撫子市の産婦人科病院です」

「この産婦人科病院に通院している妊婦の方の妊娠が突然無くなったのです」

「では院長のインタビューです。院長この度の胎児消失について思い当たることはございませんか」

「全くもってわかりません今のところわかっているのは妊娠6か月未満の妊婦の皆さんのみの症状なんです」

「それ以外の妊婦の皆さんについては」

「今の所これといった症状は無いのですが全く原因がわからないので手のつけようが無いのです」

「続いて国立医科大学産婦人科から中継です」

「今回の事案についてですが全世界でも前例がなく全くもって分からないのです」

 

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