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注射  作者: 八味とうがらし
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注射 狂気・・・そして序曲

一色はテレビを切った。

「紺野未知子やったぞ」

「はい」

「これで世界の人口爆発的な人口増加に歯止めが掛かる」

「おめでとうございます一色教授」

「110億と言われる全世界の人口をこの方法なら自然減と併せてればわずか数年で60億まで削減できる」

「その反対側で赤土耕太が喧伝していることを取り組めば全てがうまく行く」

 全く人の心を無視した人口削減方法。それが最善として実行しようとする狂った対応なのだ。

 赤土耕太は黄島美波が辞めた後自らも1週間ほど休暇をとった。研究員から教授になって休みらしい休みを取った事がなかった。

 赤土耕太は街をぶらぶらと歩いていた。赤土耕太は自分が街からはみ出している様な錯覚を覚えた。普段きているものといえば白衣かスーツが定番。休みの日に街を歩くのは数年ぶりの事。あまりにも街ゆく人の活気に思わずファミレスに逃げ込んだほどだ。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」

「あっ一人ですけど」

「こちらは全席禁煙となっております。空いている席へどうぞ」

 言われるがまま席に着いた。

「ファミレスなんて入るつもりなかったのにな」

 赤土耕太耕太はここまで流され続けてきた。目的や夢があって勉強をしていたわけでもなく、たまたま入れる大学が出雲大学だっただけ生物研究室に入ったのも教授以外誰もいなかったから、ただそれだけだった。

 周りから見ればトントン拍子で出世している様に見える赤土耕太だったが大袈裟に言えば赤土耕太は空っぽだった。

 ファミレスに入ってしまった為仕方なくモーニングセットを注文した。

「たまにはファミレスで朝食するのもいいのかもしれないな」

そう言いながら外を眺めていた。

「それにしてもみんなどうしてあんなに元気なんだろ。わぁっあの女の人金髪に派手な服着て、すごいなぁ」

 赤土耕太はまるで小学生が初めて電車に乗った様に外を眺めていた。



 ニュースは不可解な妊娠消滅現象を一つの事件として捉え毎日続報を伝えていたが、誰もが全く原因がわからずにいた。また専門家と言われるこれまた不思議な肩書きのコメンテーターが出演料欲しさに?根拠のない仮説を説明していた。

「白根デスク我々も産婦人科病院取材に行ってきます」

「あっ産婦人科に行くならこれも聞いてくれ」

「え、なんですか」

「昨日のミーティングで取材内容を確認した後、家に帰りながら考えていたんだ」

「それでこれですか」

「『6ヶ月前と以後では妊婦や胎児はどの様に違うのか』ですね」

「そうだな、今世間の話題はなぜ起きているのかを主眼とした記事なり番組なりその方向ばかりなんだよな」

「だからですかもっと差別化してものを捉えていかないと見えるものも見えなくなってしまうからな」

「承知です。では行ってきます」

「たのんだぞ」

 白根はこの不思議な現象がどこに繋がって起きているのか考えていた。

「あのエリアには大きな工場もないし、川の汚染も無い。地震や落雷・・・。

処方されている薬・・。薬かぁ」

 白根は先ほどの取材班に連絡を取った。

「白根です。さっきの取材の話だけどし処方されている薬も調べてくれ、それと製薬会社も」

「なるほど薬かぁ!それは盲点かも知れないですね」

「あの地域一体の産婦人科取材してきますね」

 白根達は落胆の色を隠せなかった。6ヶ月を境とする違意を見出せなかった。また、薬についても病院によって薬はもちろんメーカーもバラバラだった。

「今から政府が会見を開くそうだ」

「今頃なんについてだ」

 ネットでの政府会見を行なっていた。

「国民の皆様今世の中では大変不思議な事が起きています。それは妊娠途中の妊婦のお腹の中でスクスク育っている赤ちゃんがある日突然いなくなった。この事例は我々人類がこの世の中に出現して以来全く経験したことの無いのです。政府としては関係各位に早急な対応と原因究明を指示したところであります症状を発症された妊婦の皆様またご家族の皆様一刻も早い原因究明を目指して行きます。また産婦人科の皆様は少しでもおかしなことに気づかれましたら保健機関にご連絡くださいますようお願いします」

「政府も手詰まりっぽいですね」

「でもなぜ妊娠時期で症状が別れたのだろう・・・」


 あまりにも辺鄙なところにいる為唯一の通信手段が小包のやり取りため情報が遅くなっている。

 緑川流司は定期的に小包が来ているのかを確認する為にバス停に行っていた。

 毎月20日前後が小包の到着予定日となっていた。ただし時間の概念がゆるい為1日や2日は予定通りに着いたとなる。

 今回は一週間のズレで収まっての到着となった。こちらで居を構えた頃はあまりの時間に対する思いが緩い為そのことでイライラしていた。その事を文章にして白根に送ったこともあった。

「美月ただいま白根から小包届いたぞ」

「今回も無事に届きました。ありがとうございました」

「美月何にありがとうなんだい」

「だってここまでの道中を考えたら無事に届くことの方が奇跡だと思うから、この小包に関わった皆さんに感謝の気持ちなの」

「確かに美月の言う通りだな!無事に到着してくれてありがとうございます」  

 緑川夫婦はこの異国の地でささやかにそして幸せな時間を過ごしている。

「今回はどんな事があったの」

「美月なら知ってると思うけど撫子市で妊婦のお腹の赤ちゃんが突然いなくなったんだって」

「誘拐?」

「お腹の中の赤ちゃんをどうやって誘拐できるの」

「それはそうだ」

「ええどう言う事」

「それがわからないそうだ」

「こっちきて一緒に見ようよ」

「本当だ。これって前にあった変なウィルスとかのせいじゃ無いよね」

「今政府も躍起になって調べてるそうだけどわからないそうだ」

「なんなんだろうね」

「さぁ今日はどのエリアの取材に行くんだい」

「できればあの工場みたいな建物がある一帯に行きたいんだけど」

龍司は首を横に振ってダメだと言った。

「美月わかっているだろあそこのヤバさを余りにも異様すぎるんだ。国の施設であるならばまだ近づきようがある。でも手がかりとなるものが一切ない。まだ遠くから眺めながらの変化を確認するにとどめておかなければ・・・」

「わかりました」

美月は渋々流司に言う事を聞き入れた。

「それよりもここまでの取材をしたまとめはできているのか」

「次こっちからデスクに小包を送る時までには余裕で完成できるから」

「でも流司もフリーの記者だったなんてそれも私の新聞社専属だなんて」

「まぁそれは色々あったんだよなぁ。俺と白根は同期入社で配属先も同じだったんだよな」

「デスクって向こうにいる時何にも話してくれなかったし」

「・・・」

「あれいつだったけかなぁ30年くらい前に俺1人海外取材に行った時があったんだよな。その時世界の動きが全くわかってなかったことに、驚いちゃったんだよな。そのまま会社を退職して取材をしながら世界を転々として今ここにいるんだな」

「えへぇ〜いるんだなってもう20年近くいるんでしょ」

「そうだなぁ〜うん20年かぁ」

「でなんの取材でここまで来たの」

「人口増加と食糧危機がどこの地域が一番被害を被っているのかって事を追い求めてたらここに行き着いたってわけだな」

「なるほどね。でも今日の流司はいつもに増して語尾に『な』をつけるね」

「そうかな」

「ほらな」

「美月お前もだな」

 二人はこの辺鄙なところの生活を背いっぱい楽しんでいた。

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