注射 桜木大臣
「おっ。そろそろ時間ですよ。これを見てください。画面の中に蜘蛛の巣が張り巡らされたように緑色の筋がたくさん出てきていた。
「美月さんこのスイッチをカウントダウン0で押してください」
「わたしぃ」
驚いた顔で緑川流司を見た。
「美月大丈夫だよ」
「青木任せたぞ」
「では10秒前からカウントダウンしていきますね」
「・・・」
「10 9 8 7・・・3 2 1 」
緑川美月はスイッチを押した。
ロケットは磁場に向かって発射された。ただし誰の目にもただ空に向かってペットボトルロケットを打ち上げたようにしか見えなかった。しかし打ち上げてすぐにロケットは空間に消えていった。
「わぁ」
誰もが思わず声を上げた。
「どこ行った?」
「赤土さん?」
「成功です。これが生物増加システムです」
「なんか凄いですね」
「かなり凄いですよ。この後このテープで囲った所とその近くにあるところを時間の経過とともに違いを観察して行きましょう」
「どれぐらいで違いがわかるのですか」早ければ一週間ぐらいから違いがで始めるはずです」
「そんなに早く」
「これは成長の早い植物を使ったので結果が早いんです。こちらに定点観測用のカメラを用意してます。しばらくは待機となります」
一週間後三人は赤土耕太の招集に対応した。
「わぁ凄いですね。これ程までとは・・・」
比較対象と比べて一目瞭然あまりの違いに驚くしかないほどだった。
「実験は成功です。安心しました」
「よかった。これで沢山の生物を短期間に量産できますね」
赤土耕太は自らが収穫した野菜を使った料理を白根たちに振る舞った。
「白根さんそれでオレはいつ頃現地に行くことになるんでしょう」
「今桜木が関係各所に話を進めているところなんで、もう少し時間がかかると思います」
「その方が助かります。この間見ていただいたのはあくまでもスタンダードなんです。今世界が求めているのは一色が打ち込んで起きた状況を元に戻すことですよね。それはそう簡単なことではないんですよ」
「どう大変なんです」
「最大の問題は一色がどんなプログラムを作ってロケットを打ち込んだのか?なんです」
「それじゃ・・・」
「可能なんですが時間がかかると思います」
「では赤土さんには引き続きプログラムの構築をお願いします」
「じゃぁオレはあっちに行って今の現状を取材するよ。それを世界の現状とリンクさせながら赤土さんの成功につなげような」
「えっ私は?流司」
「青木お前は残ったほうがいいんじゃないか」
「なんでですかぁ。ちょっと流司どういうこと」
「まぁ皆さんせっかくこちらまで来ていただいてますので・・・。いい争いはその辺にしていただくとしてですね、これを見てください」
そういうと家の奥からひと抱えもある箱を持ってきた。
「これなんだかわかりますか」
誰もがわからないといった表情をした。
「これは私が作ったボックスですが、何の為に作ったのかと言うと・・多分なんですがこのボックスを10個ぐらいを搭載したロケットを打ち上げたんだと思います」
「このボックスを10個ぐらい打ち上げるロケットとなると自ずと大きさが判明するってわけだな」
「重さはどれくらいになるんですか」
「白根さん一個当たり3キロくらいになると思います」
「てことは単純に30キロ!」
「そうですね。このボックスが向こうに行った後に起動するプログラムが入っているものなんです。これに磁場を突破するセンサーが付きます」
「白根さんたちが見せてくれた映像と、世界中での影響を考えるとこれくらいの大きさになるんじゃないかと・・・」
「赤土さん前はシステム運用に自信がないとか言いてませんでしたっけ」
「そうなんですよ。大学にいる時は講演に次ぐ講演で時間がなくて運用については二の次だったんです。それでも講演会が落ち着き、企業との連携が図れるようになった時まずオレが企業の研究員にシステムを見せなければならないじゃないですか!そこで研究室で何回も一人でデモをしたんですよ」
「なるほどぉ。さすが赤土さんですね」
「美月さんオレこれでも一応大学で教授をしてた事もあったんですよ。多分知らないと思うんですが・・・」
「えっそうだったんですかぁ〜!知らなかったぁ」
どうやら緑川美月が絡むと必ず少しの脱線が起きそこに笑いが生まれるようだ。
「なるほどだから今回も短時間でシステムを完成されたんだ」
「なのでここまでの事なら対応可能ですよ」
「あとは一色が打ち込んだ亜空間ロケットに搭載したプログラムにどう対応するかですね」
「いや白根もう一つコレを打ち上げるロケットの準備が必要だ」
「・・・・そうだな。赤土さん大学ではロケットの準備をどうされてたんですか」
「大学の理工学部に依頼してたんです」
「あっそうか工学部か・・白根」
「そうか工学部なら桜木にもうひと頑張り願おう」
「どういう事流司」
「桜木と俺たちは高校は一緒だったんだけど、流石に大学はバラバラになったんだよ。で桜木は理科大の理工学部だったんだよな」
「じゃあ桜木大臣に作ってもらえば」
「いや流石にそれは無理だよ。でも大学に依頼したり、その流れから宇宙産業への働きかけは出来るんじゃないのかな」
「それと予算だよね」
「予算に着いては試算してますよ。これみてください」
「お金の話は後にしようせっかくの美味しい料理が半減すると思うな」
「・・・そうするか」
白根は赤土耕太の家から帰った翌日に桜木大臣のところにいた。
「凄いなこのシステムは」
「だろ。まさかこれ程とは」
「それでこれが赤土耕太がロケットの予算だ。でお前理科大工学部だったよな」
「まさか大学にロケット作らせろって言うんじゃないだろうな」
「いやどこで作っても構わないよ、ただ桜木大臣のお力が必要かなと・・・」
「お前たちってオレを何だと思ってるんだよ。大臣と言っても自由に使えるお金なんてほとんどないんだぜ」
「わかってるよ桜木大臣の収支報告は拝見させていただいておりますから」
「ならわかるだろ!山吹さんとは違うんだよ」
「はいはい。桜木さんならもっと誰もが納得できる方法で準備できるんじゃない」
桜木は大きくため息をついた。
「お前たちだけだぞオレを顎で使ってるのは・・・。いや後一人いらっしゃった・・・」
「じゅんちゃん!」
「そうだよ奥さまだよ!・・・・・ロケットについてはしっかり時間が必要だからな、今日の明日ってわけにはいかないぞ」
「わかってるよ。でも何とかしたいよな」
「あーそうだな・・・」
桜木は応接にある電話から次官に連絡を入れた。




