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注射  作者: 八味とうがらし
26/52

注射 生物増加装置

「白根さん緑川さん私行きます。行かせてください」

「えっどうしたんです。突然」

「いやなんの自信もないです。お役に立てるのかもわかりません。でも行かせてください」

「・・・・」

誰もが赤土耕太の突然の決意に言葉を失った。

「ありがとう赤土さん俺も一緒に行くから現地での生活やなんやらは安心してほしい」

「私も行くよ流司。絶対に私たちの赤ちゃんを取り戻すんだ。それと何一人で行こうとしてるの」

「と言うわけだよ。桜木。準備はできてるんだよ」

 白根達は桜木大臣と別れ一度嫁入り新聞社に帰った。

「赤土さん大丈夫ですか。あんな事言って流司も大丈夫とか言ってましたけど、何もないし・・・、何もないんですよ」

「まあオレの性格上何の問題もないと思います」

「いやもっとしっかりと考えた方が・・・」

「あのぉオレをどうしたいんですか」

「桜木が議会に上げて予算をとるまでに時間があるんだししっかり考えて見てください」

「はぁ・・・・」

「それにしても大臣とお友達だったなんて。ところで・・・」

「あっ美月ひょっとしてお前白根の決意表明の内容を聞いてみたいんだろ。オレが代わりに言ってやるよ。な白根」

呆れ顔の白根は携帯をかけに応接を出てしまった。

電話を終えて白根を待っていたのは美月の執拗ないじりだった。

「お前ら今からオレの言うことをよーく聞けよ・・・フフフフフ」

「み ど り か わぁ〜」

「どうした白根オレ何にも知らないからな」

赤土耕太は不思議な充実感に浸っていた。

「うん皆さん。ありがとうございました。やっぱりオレ行きます」

「緑川さんあっちでも変わらずよろしくお願いします。ただ、オレは生物を増加させる事は前にも言ったように大丈夫ですど・・・。減らす事はもう一度検証してみないとなんとも・・・」

「赤土さん減らす必要なんてないですから・・・」

「いやそれはそうですが・・一度削減したものを復活させる事ができるのかどうか・・・。とにかく一度家に帰って増産システムの計画を立ててみます」

「そうしていただけますか」

 赤土は一度家に帰っていった。緑川夫妻は食物増加は赤土に任せ本格的に胎児消滅について取材を進めることにした。白根は桜木大臣との連絡密にし、いつでも行動できるよう会社への根回しを進めた。


「ねぇ流司。この前赤土さんが言いてたよね、一色が事務を雇ったってやつだけど、あれって赤土さんの監視役だったのかな」

「それは・・えーっと黄島ってやつを見つけて聞かないとわからないな。でも赤土さん結構黄島ってやつを買ってたよな」

「綺麗だったのかな」

「赤土さんがそんな目線で事務を評価すると思うか」

「違うよね」

「一度黄島ってやつの住所を調べてインタビューしてみよう」

二人は出雲大学の総務に黄島について聞いていた。

「黄島美波さん?」

「はい。以前いらっしゃった赤土教授の研究室の事務員です。一色さんが個人で事務契約をしていたと聞いてますが・・・」

「黄島美波さんと言う方はいらっしゃいませんでしたが・・・。」

「いやでも確かに赤土さんから伺っておりますが」

「そう言われましても・・・」

総務の奥から聞き返す声が聞こえてきた。

「赤土さんの所で事務をしてた方ですよね」

「はいそうですけど・・・ご存知ですか」

「お探しの人物かどうかわからないですが、最初はたしか黒崎さんって方でしたよ。次は我々の総務からパートタイムで研究室で事務処理を行なったていましたが・・・」

「黒崎さんていつ頃いらっしゃってたんですか」

「えーっと、あれって赤土さんが講演会で各地を回っていた頃だったかな。なんせ総務が採用したわけじゃないので資料がないんですよ」

「ありがとうございました。何かその黒崎さんが書かれていたものって残ってませんか」

「さぁどうでしょうか、全てプリントアウトしたものばかりですからね」

緑川夫妻は手詰まりの中、大学を後にした。

「ねぇ流司。これってどういうことなの」

「さっぱりだよな。赤土さんのまわり・・・というより一色ってやつがかかわったとされるすべてが謎。まったくわけがわからんな」

「だよねぇ。その一色の足取りもそれらしい人物が事件の少し前に出国してるってくらいだよね」

「そうなんだな。しかもその後のことは全くなんだろ。・・・こんなやつだからどっかのリゾート地に潜んで優雅に暮らしてるんだろうな」

「これが本当なら、すっごいやな奴」

「白根に連絡を入れてから会社に戻ろう」

「取材戦略の立て直し必要かもね」

 メディア各社はもちろん国の捜査機関も一色の周到且つ巧妙な計画に全く手掛かりをつかめないでいた。

 赤土耕太は、白根達と分かれた後自らの頭の中にある設計図を元に生物増加システムを作っていた。

「前に白根さん達がきた時は生物増加システムを活用するなんてと思ってたけど・・・。まさかまた作るとは思っても見なかったな。まぁでもこれは一色教授・・・いや一色の思惑で作るんじゃない。オレが作るんだから。これがうまくいかないと子ども達をすくえなくなるからな」

 赤土耕太が生物増加システムに取り掛かって二か月が来るまでに赤土耕太は電話をかけていた。

「赤土です。生物増加システムが完成するんで一度見ていただきたいんですけど」

「凄いですねでは今度緑川夫妻と一緒に伺います」

赤土耕太は白根にシステム運用に最適な日時を2〜3ピックアップした。

「じゃあ最初の日に伺いますのでよろしくお願いしますね」

「待ってます。あーくれぐれも時間厳守でお願いします」

「わかりました。緑川にも言っておきます」

二人は笑い合って電話を切った。

 そして当日、白根達は赤土耕太の住む場所へ朝早くから出掛けていた。前乗りも考えてはいたが、白根のスケジュールが合わず早朝出発となった。

「白根間に合うのか?」

「ギリギリかもしれない」

「時間厳守でしたよねデスク」

「そうなんだよ。何せあのシステムは生物に生命が宿る瞬間に発生する磁場にロケットを打ち込むものらしいからな」

「その磁場を逃したら次回に持ち越しというわけだよな」

「そうなったら次回ってことなんですかデスク」

「いやそうならないためにも急いでるんだけど・・・」

「流司時間だったら余裕で到着なんですけど」

「美月そこでオレの名前を出すなよな」

「あのぉお二人さんおのろけは・・・」

「いやお前が遅刻したからだろう」

ここぞとばかりに二人がかりでツッコミを入れた。

「会議が長引いてそのまま仮眠を取ったら・・」

「ガッツリ寝込んだんだろ」

「すまんそんなところだ」

「デスク!ビールでいいですよ。ビールで!」

「おいおい。お前たちと一緒だといつも漫才ぽくなるよな」

「お前が遅刻しなかったら大人しくしてたよな。美月」

「そうそうふふふふ」

「・・・・。そろそろ赤土さんところに着くぞ。ギリギリだけど間に合いそうだ。オレに遅刻はないんだよ」

緑川夫妻は顔を見合わせた。

「お疲れ様です。赤土さん白根です」

「お疲れ様です。皆さん。意外と早く着かれましたね」

「えっ。聞いた時間ギリギリですけど」

「あぁ緑川さんの時間を考慮して連絡してしまいました」

「ほら見ろ緑川お前がやっぱり・・」

「赤土さんそれはないよな。美月お前も赤土さんになんとか言ってくれよな」

「赤土さん。大大大正解でした」

「美月お前ねぇー」

「さぁさぁこちらにきてくださいシステムをご覧ください。」

 赤土耕太が作っている畑に行くと既に生物増加システムがセットされていた。

「赤土さんシステムってこんなに可愛い大きさなんですか」

「美月さん今回のシステムはこの畑に植えてある野菜に対応させるんですが、それも赤いテープで囲ったところが対照予定なんです」

「それでこんな小規模なんですね」

「はい対象となる生物や規模でシステムも大掛かりになってきます」

「それだからあの一色が打ち上げたロケットはあんなに大掛かりなものだったんだ」

「はいそうなんです。一色が打ち上げたのはほぼ世界中を網羅しているからです」

「えっ赤土さん今一色っておっしゃいませんでしたか」

「はい。言いました。もうわたしには関係ないと思えましたので!今から立ち向かうことを考えたらいつまでも過去に囚われていたってダメですから」

「なるほど・・いや心強いです」

「それで今回の実験なんですが、注目していただきたいことは磁場の確認と、その磁場へどのようにロケットを発射するのかを見ていただきたいのです」

「確かに赤土さんの講演を何度も見てるんですけどデモは初めてですから大変興味があります」

「赤土さんこのロケットってよく親子が河川敷などで打ち上げるペットボトルロケットですよね」

「あっバレました。ハハハ!そうなんですよ。今回はすごく小規模なためロケットもこんな小さいので大丈夫なんです。なのでペットボトルを少し改良しただけです。まぁ実際に起きる磁場も私たちの手が届くところで起きるはずですので手で磁場に押し込んでやっても良いのですけど・・・。皆さんに小規模でも本格的なものを見ていただきたいと思いまして」

「ありがとうございます。ところでいつその磁場ができるのでしょうか」

「後20分てところですね。皆さんこの画面を見てください。画面の右上が少し緑がかってますよね。これが磁場です。この画面が磁場の発生場所と規模を見えるようにしています。予定時間になると明確な磁場の筋が見えますその中心にロケットを打ち込むんです」

「打ち込まれるとどうなるんですか」

「このロケットを見てください。ロケット先端部についているのが磁場を突破するためのセンサーです。このセンサーから磁場とシンクロする電波を発生させながら磁場の中に入っていきます」

「磁場の中・・・?」

「そうですねこれは誰もいったことがない世界です。多分一色も行ったことはないでしょう。こういったところをよくメディアとかは亜空間といってますけど、ちょっと違うような気はしています」

「磁場の中に入った後はどうなるんですか」

「このセンサーに直結したシステムが磁場の中で対象となる生物に増加をさせるプログラムを追加していくのです」

「・・・はぁ?」

「多分この先は説明してもご理解はいただけないでしょうから。そのプログラムを受け取った生物はこちらの世界にプログラムごと降り立ち沢山の生物を育んでいくことができるんです」

「・・・・」

赤土耕太以外全くわけがわからないといった様子だった。

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