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注射  作者: 八味とうがらし
24/52

注射 自立

「どんな感じで接待受けてたんですか」

「ひたすら会社の自慢話とこれからの展望という夢を誰もが口々に話て、その後愛想笑いが起こる・・・」

緑川流司は首を横に振って赤土耕太に追加で注文していた瓶ビールをついだ。

「赤土さんそれだからあんな辛い顔をしてたんですね」

「えっ」

「あぁ緑川夫妻がこっちに帰ってきた頃の話だったんですが、偶然赤土さんを見かけたって私に言ってたんですよ」

「そんな顔でしたか」

「それはもう」

「だから美月お前赤土さんに慣れすぎだって」

「でももう一緒にお酒もいただいてますし。ねぇ!」

 緑川美月は、赤土耕太に向かって同意を求めた。

 以前赤土は企業との接待で同意を求められたことが度々あったが、いつも返答に困るようなものばかりだった。緑川美月の純粋で、これから仲間になれそうな雰囲気に改めて嬉しさを感じていた。

白根が赤土耕太に今日の宿泊先について説明をした。

「赤土さん今日は△ホテルにお部屋がとってありますので、そこ使ってください」

「えっいいんですか」

 緑川流司は美月のお株をとって赤土耕太に言った。

「なんせ白根は赤土さんを誘拐してしまったんですから」

「緑川!オレだけじゃないだろ、お前達も共犯だろ」

赤土耕太は何年振りかに心が晴れた気がした。

「赤土さん明日なんですが。青木に迎えによこしますので今日はゆっくりしてくださいね」

「ありがとうございます」

 翌日10時過ぎに美月が迎えに来た赤土耕太は、昨夜の夕食がよほど楽しかったのか緑川美月をロビーで待っていた。

「緑川さん赤土ですおはようございます」

「おはようございます赤土さんお疲れは出ないですか」

「いえ全然ですよ。昨日はご馳走様でした」

タクシーに乗り込むと嫁入り新聞社に向かった。

「緑川さん皆さんいつもあんなに楽しそうに居酒屋で飲まれるんですか」

「はぁ〜。いつもはもっと酷いんですけど・・・」

「ハハハそれはいいですね」

「・・・・」

 緑川美月は赤土の反応が不思議でたまらなかった。企業に接待される立場になるってなかなかないと思うのだが、この赤土耕太はそれを苦痛と感じている。全く知らない人同士ならそうかもしれないが何度も仕事をした関係なのにだ。

「デスク赤土さんをお連れしました」

「赤土さんおはようございます。こっち来てください」

 白根は赤土を応接に招いた。

「白根さんおはようございます」

緑川流司は応接で書類に書き足したり赤線を入れてながら何やら仕事の最中だった。緑川も赤土耕太に気づくと顔をあげ笑顔で出迎えた。

「緑川さんおはようございます」

「おはようございます。赤土さんさぁ座ってください」

緑川が赤土耕太に席をすすめた。

「今何をされているんですか」

「今緑川がやっているのは、昨日赤土さんとの話をまとめて、いままでの事に対して希望の光が見えたとなる記事を仕上げているところなんです」

「希望ですか?」

「赤土さん。希望です」

「それで赤土さんこれからなんですが、一度私と一緒にあのロケットが打ち上げられた場所に行ってみませんか」

「あの亜空間ロケットの所ですか」

「そうですロケットの場所です。そこで生物増加システムをつかって作物を量産してみませんか」

「でもそのシステムは・・・」

「大学に確認したろころ、〇〇◯会社との契約は白紙になったそうです。お互いの担当が私利私欲に走りすぎた為だそうです。権利についても表向きは規制しているそうなんですが実際は使用目的と月一での査察を受け入れれば使用を許可するそうです」

「つまりはフリーと言う事らしいです」

「ですが・・・」

「その生物増産システムで食物を増やしていただきたいんです」

「それと赤土さんいなくなった赤ちゃんも取り返してほしいんです」

緑川美月が話に割って入ってきた。

「確かに赤ちゃんが産まれて来なければ人口増加に歯止めがかかるんですけどそれって結局マイナス思考の最たるものじゃないですか!しかも全世界の家族の体力まで奪った」

「そうですね」

「ですから赤土さんにはこのむずかしい問題二つをどうしても解決してほしいんです」

この緑川美月の思いに二人は何も言わなかった。

「赤土さんそれで、我々と一緒に来て欲しいところがあるんですが・・」

「今度は何処へ誘拐するんですか」

「ハハハこれからは誘拐でも拉致でもないですよ。赤土さんに委ねますから」

「・・・・」

「赤土さん!今緑川美月が桜木大臣にアポイントを入れております。アポが入り次第一緒に来てもらいたいんです」

赤土耕太は想像の上を行く面会に驚いていた。大臣に会う考えなど生まれてから今まで一切考えたこともなかった。大臣を見ることなど、せいぜい国政選挙の時地元の立候補者の応援で遠くに確認する程度だった。

「こちらからアポを入れるって!そんなことできるんですか」

「目的と時間そして大臣に有益であればアポは入りますよ」

「そんなものなんですか」

「そんなものなんですよ」

「デスクアポ入りました。今日の午後4時からなら30分時間を作れるって」

「おっさすが青木だな」

「赤土さんというわけです。大臣のところへ行っていろいろ話を聞いてみましょう。その後も赤土さんには我々と一緒に来ていただきたいのです」

大臣の所へ行く事が自身の判断と思っていた赤土耕太だったので、それ以上の場所が何処なのか不安になってきた。赤土耕太は一色の居場所を突き止め、一色にこの償いをさせれば全てがうまく行くと考えていた。

「それで一色教授は何処にいるんでしょうね」

「今世界中の警察が探しているようです」

「どこにもいないというか全く足取りがつかめないそうです」

「そんなことってあるんですか」

「一色の捜査は警察にとりあえず任せるとして・・」

「赤土さん、まずは一番最初に妊婦のお腹から子供がいなくなった記事を見ていただいて考察いただければ」

白根達は赤土に過去の記事を時系列に手渡した。赤土耕太が記事を読み終えたところに緑川美月がコーヒーを淹れて帰ってきた。

「赤土さん一息入れてください」

「ありがとう・・」

赤土耕太は少しずつ白根達に慣れ始めていた。

「赤土さんどう思われますか」

「・・・まず最初に思うことは、一番最初に起こったことと今起きていることは同じ理由によって起きたと思います。一色教授によるものなんでしょう」

「ではなぜこんなに時間をかけてこんなことをしたんでしょうか」

「多分ですが最初のは実験だったと思うんです。極力小規模で実験をしたと思うんです。その実験が成功すれば世の中は今のように大騒ぎになります。実際になってますよね」

「それでほとぼりが冷めるのを待ってたのか」

「多分そうだと思います」

「白根この一色って奴って」

「あぁそうだなすごいよ、赤土さんをずっと隠れ蓑にして機が熟すのを待っていたんだからな」

「そんなことってあるんですか、そうだとすると赤土さんが可哀想じゃないですか」

赤土耕太は一人静かに三人の話を聞いていた。三人の話が落ち着くと・・・

「あのぉオレって可哀想なんですか」

「いやそういうわけではないんですけど、ただ・・・」

「ただ?」

「ただ一色っていう人があまりにも赤土さんをを利用していたように見えたから」

「今思うと利用されたかもしれないという気持ちが強くなって来ています」

「赤土さんこれからは利用するとかされるとかじゃなく赤土さんの考えが最優先ですよ」

「みなさんと会えて気持ちが軽くなっていくようです」

赤土耕太は気持ちが軽くなると言いながらも何処か疑う気持ちがあった。

緑川流司が赤土耕太の気持ちを痛烈に射抜いた。

「赤土さん赤土さんて数年かけられた裏切りって言うのを直ぐに振り払えるんですね」

「流司。そんな酷いこと言わなくったって」

「そうだぞ緑川」

「待ってくれよ、俺たちはこれから赤土さんと共に行動するようになるかも知れないんだな。簡単に気持ちが晴れるって言うのは素晴らしいことだけど・・・」

緑川流司は赤土耕太の優しすぎる心に戸惑いを感じていた。

「緑川さんオレが何をしたって言うんだよ」

「赤土さんごめんなさい。流司何考えてんの」

「赤土さんごめんなさい決して赤土さんを馬鹿にしてません。そして嫌いでもありません。逆にすごく好意的に思っています。ただこれからのことを思うと逆もあるのかと思うと不安がよぎってしまったものですから・・・」

「緑川お前考えすぎだぞ。お前青木の後先考えずに進む行動力にかなり救われたはずじゃないか!お前の考えだと青木の行動は危なっかしくて・・」

「赤土さん本当にすみませんでした。変な感じになってしまいましたが今後ともよろしくお願いします」

「緑川さんそこまで自分を追い込まなくても大丈夫ですよ。なんとも思ってませんから。それよりも私の方こそよろしくお願いします・・・・ところで先ほどからおっしゃってたこれからの事って何ですか、その方が気になるんですが・・」

白根と緑川流司は顔を見合わせ白根が口を開いた。

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