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注射  作者: 八味とうがらし
23/52

注射 始動前夜

「・・・いやいやそんなことはないですよ。俺なんかとんでもなくネガティヴなんですよ。例えば一人考え事をすると・・・すぐに『あぁ〜永遠に睡眠してたい』とか。後は『早くあの世に行って死にたい』とか。『世界が滅びればいいのに』とか」

「私も赤ちゃんがお腹の中からいなくなった時言葉は違うんですけど物凄くマイナスな考えをしてました。今もふとその言葉が頭の中に出てきます」

「あー同じなんですね。一緒な人が一人でもいて少し安心しました」

「誰も一緒ですよ。私もさっき赤土さんの所に伺う道中未来について話をしてた時『老人ホームに一人入って死ぬだけ』なんて言ってましたから」

「みんなそんなにネガティブ大会なんかしなくてもいいんじゃないかな」

誰もはその言葉に救われ笑顔になった。

「いやーすみませんでした。あのぉ赤土さんもう少しお聞かせくださいますか」

「構いませんよ」

「金美学部長に以前インタビューした時なんですが、赤土さんは企業との癒着が発覚して辞めたと」

「いやそれも全く持って意味がわからないのです。何を持って癒着と言われていたのか・・・」

「例えば大学がまだ秘密にしていた研究を漏らしたとか、又は企業から金品を当たり前のように手にしていたとか・・・」

「企業からの金品ねぇ・・確かにお金をいただいたことはありました。ただそれは2度ほどです。まあ一回でも有ればダメなのだろうけど、一回目はそれこそ学部長に渡しました。後で学部長に連絡をして学校からと言って返して欲しいと連絡して返していただいたと思いますし、後の一回はここにまだ手をつけづにありますよ」

「いや他に何かないですか」

「いや思い当たることなどは・・後よく食事に誘われたんですよ。それが苦痛でしたね」

「まぁ食事はありますけど・・・苦痛だったんですね。」

そう言って白根達は顔を見合わせ頷いていた。

「赤土さんのお話をお聞きする上では最悪厳重注意ぐらいで済むと思われるんですけどね。それを辞めさすなんで酷いですね」

「はぁーまあしょうがないですよ今更ですよ」

「分かりました。今後の赤土さんの予定や展望などありましたらお聞かせいただきたいのですが」

「特にありません。このままこの地で野菜を作るんじゃないでしょうか」

「あの生物増加システムでの生産は行わないのですか」

「ここではむりですね。あのシステムのことは私の頭の中にしっかりと入っています。設備さえあれば今すぐにでもシステムを構築できますけど」

「やっぱり赤土さんは凄いですね」

「あれだけ私一人に押し付けられてんですよ、いやでも頭に入ってきますよ」

「ねぇ流司」

「ううんどうした美月」

「私たちの子供がいなくなったのが一色が打ち上げた亜空間ロケット?だったとしたら赤土さんの知識でそれを取り戻すことはできないのかな」

三人はいっせいに赤土耕太を見た。

「ちょっと待ってください。確かに理屈上はできると思いますが・・・」

「赤土さんぜひお力をお貸しください」

「どうすれば」

「今から一緒に我が社へ来てください」

「今からですか」

三人は赤土を急がして車に押し込んだ。

「ああのちょちょっとまてよ」

ほぼ誘拐同然に車に乗せられた赤土耕太は困りながらも赤土耕太が過去失敗した時のように流されてしまっていた。

「赤土さんこの自動車に乗ったらきっと良いことがありますよ」

「誘拐しておいて何がいいことが起きるだよ」

赤土は呆れつつもこのまま人生が終わってしまうよりはいいのかもと思っていた。それは以前白根のインタビューを受けていた時感じた白根の人柄に好印象を持っていたからだった。

「白根さんの会社に行って何をすればいいんですか」

「まえにも同じようにお腹の子供が突然いなくなったことがあったことはご存知ですよね」

「まあおぼろげに」

「ではその頃の記事をまず見て頂いて、そのあとこの事件!の対応について話を聞かせていただきたいのです」

「対応って」

「一色がどのようにして世界中の妊婦から子どもを奪ったのか」

「それからどうすれば妊婦に子ども達を返してあげれるのかですよね」

「あぁ本当に難しい事です。私にできるかどうか・・・」

「後私たちは今日赤土さんとのインタビューから得た一色元教授がこの事件に深く関わっている事を記事にして一色を追い詰めます」

「追い詰めるって・・・」

「赤土さん私は絶対に一色を追い詰めて」

「美月顔が怖いよ」

「そうだよ青木、赤土さんが困ってるよ」

「白根、美月は出張で俺のところに来た時もひたすらに前に進むって感じでさぁ、オレと合流して1時間も経たないうちに前向きな行動を取り始めたんだよな」

「まぁ一色を追い詰めることが前向きな動機かどうかは微妙な気がするけど青木のいいところでもあり悪いところでもあるな」

「みんな赤土さんの前でそんな風に私の分析をしないでよ」

 赤土耕太を訪ねる前と後では美月の態度はまるで違っていた。何処か吹っ切れたかのようだった。なぜそんな態度が取れる心持ななったのか美月自身にもわからなかったが、流司も白根も改めて安心をした。

「なぁ美月ぃまたあそこに帰って取材を続けたいんだ・・・」

「あぁ私も行ってやり残した取材の続きをしたい。デスクその時はよろしくお願いしますね」

「おいおいえらく気が早いな」

「緑川さんはどちらに行かれてたんですか」

「一色がロケットを打ったところです」

「嫁入り新聞ってそんなところまで行って取材されるんですか」

「いやたまたまですよ」

「たまたまであんなとこ行きませんよねぇ流司」

「それってオレへの当てつけか」

「あのぉ私が一緒ってこと忘れてませんか」

「あっついうっかりでした。すみません」

帰りの車の中も和やかな空気に包まれた。

「こんな和やかな雰囲気は本当に久しぶりだなぁ」

「赤土さん早速いいことあったじゃないですか」

「いや美月オマエ赤土さんに慣れすぎだよ」

「そんなつもりじゃないけど」

「青木ぃあの時の大臣のインタビューも肩肘張らずに行けばもうちょっと心を開いてくれたかもな」

「ぁあそうかもしれないですねぇ」

夕方遅くに会社に帰った。そこで改めて今後のスケジュールの打ち合わせを行い、四人で夕食をする事になった。

「赤土さん何がいいですか」

「なんでもいいですよ」

「じゃぁ居酒屋でいいですか」

「居酒屋良いですね」

赤土耕太は目を輝かせた。近くの居酒屋に入った四人は生ビールをたのみそれに合わせておつまみ適当に頼んでいた。

「赤土さん急なお願いだったのにここまでお付き合いいただいてありがとうございます」

「最初どうなるんだろうとすごく不安だったんですが、この夕食がどこかの高級なレストランだったらどうやって逃げようかと・・」

「逃げるって」

「そうですよね。白根デスクはともかく私と流司は初対面ですもんね」

「しかも緑川はガタイもしっかりしているからな」

「むこうにいるときは多分体脂肪率6%ぐらいだったと思う」

「アスリートなみですね」

「赤土さん流司はただ食べ物がなくて痩せてただけなんです」

誰もが楽しく夕食を共にした。

「こんな夕食だったら企業の皆さんと食べても有意義な時間だったと思うな」

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