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注射  作者: 八味とうがらし
22/52

注射 気遣う

 この白根の記事から読者は謎の映像の文章は出雲大学への言いがかりと判断していた。ただ、学部長のインタビューの中に

『「因みにお聞かせください。この生物増加システムなんですが、増加させることができれば減少させる事も可能なんでしょうか」

「十分可能なことですよ。それはすでに企業と研究済みです」

「なるほど。それは大学が主導的にでしょうか」

「誰とはなくだなぁ」

「それはいつのことでしょうか」

「私が企業との打合せをするようになってからだな」

「うーむこの4月ごろだったともうな」

「ありがとうございました。今後の御校のシステムが人類に幸せがもたらせれることを願っております」』

この一文を切り取り『出雲大学が裏で生物増加システムの実験として減少を人を使って行った』と週刊誌が騒ぎ立てた。一度週刊誌が騒ぎ出すと次々に出雲大学に関する醜聞が紙面を飾った。

『金美学部長は前任教授に企業との癒着との濡れ衣を着せ大学から追い出した』

『〇〇◯会社は生物増加システムの効果を小出しにし自社の利益のみを追求している』

など、さらに酷い記事になると大学職員のプライベートのことまで追いかけ回していた。

 出雲大学は緊急記者会見を開きこの度の子供が消える事件に一切関わっていなと言い、自らも被害者であると理解を求めた。併せてこの会見で金美学部長の懲戒免職も発表された。



 この亜空間ロケットによってその日1日に子供を失った家族は全世界で数百万と言われた。初めての現象から1ヶ月ほどが経つと次第にお腹の子が消えて無くなることは少なくなり2ヶ月後には一切の現象はなくなった。

しかし新たな問題が出てきていた。

 あまりにも被害者が多い為緑川夫妻も訳のわからないうちに職場復帰をしていた。それでもひょっとしてお腹の子供が復活してくるんじゃないかと期待しながらお腹をさする美月がいた。

「デスクもう大丈夫です」

「・・あまりむりしないでいいよ」

「無理なんて・・体はほら」

「・・・・」

白根は緑川流司を見た。

緑川流司はただ頷くだけだった。

「緑川夫妻に調べて欲しいことがあるんだ」

「・・・」

「赤土耕太の居場所を探して欲しいんだ」

「赤土耕太 今更・・なぜ」

「いまのこの状況をどう思っているのか聞いてみたいんだよ」

「まぁ確かに。ちょっと時間がかかるかもな」

 亜空間ロケットによって子供が突然消えたことは世界の人々の心に深い苦しみをもたらしていた。から元気を社内で見せていた美月も同じだった。このことが起きてからと言うもの何処か元気がなく人の話も上の空なことが多くなっていた。流司はもちろんのことだが会社の誰もが美月に気を遣っていた。

 しばらくすると世間はおかしなことに気づき始めた。約妊娠6ヶ月以上の妊婦は出産に向け産婦人科などの医療機関に受診をしていたが新しく妊娠した女性はことごとく死産となっていた。

 一色が打ち上げた亜空間が亜空間に入りその世界の本来あるプログラムを破壊したのだった。つまりは輪廻転生が働かなくなり新たな生命を授かることが出来なくなってしまったのだ。一色の目論見通りとなった世界は当初の人口増加を不幸にも食い止める形が推測された。

「白根赤土耕太に所在がわかった、山あいの農地で一人畑を耕している」

「よし今から行こう緑川青木も一緒にきてくれ」

「・・わかった。美月いくぞ」

「・・・・」

 三人は赤土耕太のいる場所へと車を走らせた。白根は努めて話をして場を和ませようとしていた。

「そう言えばお前たちあの国ですぐに落ちあうことはできたのか」

「それが美月の奴俺が迎えにいくと突然逃げ出したんだ。な、美月」

「それは流司が遅刻してくるから・・やばいグループなんかがきたらと思うと・・・」

三人は誰もが誰もに気を遣っていた。そんな空気の中自動車を2時間ばかし走らせた。

「そろそろ赤土耕太のいるところに着くぞ」

「近いね。流司の所なんて5時間6時間当たり前だったし。ふふふ」

久しぶりに美月が笑った。以前のように笑うことのできる心には程遠かったが、それでも美月は笑った。流司と白根もちょっとだけ安心した。

「ここかな?」

「こんにちは赤土さん」

「あれ誰もいないのかな」

「赤土さん白根です」

「畑のほうかな」

赤土耕太の家を移動して畑があると思われるところに歩いて行ってみた。ただただ広く緩やかな傾斜地に畑が広がっていた。

「赤土さぁ〜ん」

遠くから小さく声が聞こえてくる。

「赤土さぁ〜ん白根です」

「はぁーい」

赤土耕太は日焼けした白根が見たこともないような笑顔で迎えてくれた。

「ご無沙汰です赤土教授白根です」

「白根さんご無沙汰してます。その教授っていうのはやめてください」

白根達は赤土耕太の手すきを待っていた。

「ねぇ流司私将来はこんなん所がいいな」

「美月俺もそれを考えていたんだな」

「デスクは将来どんなところに住みたいんですか」

「うーんどうだろう。考えたことなかったな。俺はこのまま退職して年を取ったら老人ホームで一人死んで行く運命なんだよ」

「デスクぅそんな悲しいこと言わないでくださいよ」

「あっすまない」

緑川流司はやれやれという感じで白根を見ていた。

「お待たせしました。よくここがわかりましたね」

「赤土きょ!赤土さんわれわれは新聞記者ですよどこにいらっしゃても分かりますよ」

そんな雑談を済ませると白根は本題に入った。

「早速ですけど、数ヶ月の間で起きていることはご存知ですよね」

「はい知ってます。悲惨と言うしかないです。世界中の子ども達や家族のこと思うと心が苦しくなります」

その言葉を聞いた瞬間美月が反応した。

「私たち夫婦も子供がいなくなったんです」

「・・そうだったんですね」

赤土耕太は悲痛な面持ちで美月達を見つめた。

「赤土さん我々の新聞は見ていただいてますでしょうか」

「いやここでは新聞は見ないですね」

白根は一色が世界に送信した映像の最初の記事そして金美学部長や再録記事などをスクラップしているタブレットを赤土に見せた。

「赤土さん何か思い当たることってありますか」

「いや特には・・・」

「金美学部長は?」

「責任を取らされて懲戒免職となった後、収賄容疑で警察に逮捕されました」

「〇〇◯会社は世間化の風当たりが強くなり事業規模を大幅に縮小しています」

話をしながらもタブレットの記事を見ていた。

「コレは」

「コレが我が社を含め世界のメディアに無作為に送られてきたものです」

「あー本当に出雲大学って書いてありますね・・・これって」

「?」

「最初にスクロールしてもいいですか」

「これは・・・!」

「どうしたんですか」

「この『I.s』です」

「これが何かしたんですか」

「コレは以前わたしが研究員をしていた時の一色教授が自分が作成した文章に必ずつけていたものです。責任の明確化のためだとか!」

「I.sつまりIは一色いsは色のsと言うことか」

「それならこれはどう言うことになるのかなぁ『Univ I.Z. Laboratory Prof.Coda A 』は」

「だから出雲大学コーダA教授研究室、コーダAとは」

「その当時出雲大学にAの付く名前は俺しか居なかったからなぁ」

「てことは赤土さん・・・」

「Codeはなに」

「俺の終わりってことだとおもうよ」

「えっどういうことですか」

「俺が大学をやめてからずっと考えてたんだ。余りにも変なことがありすぎたんだ」

「へんなことって」

「まずオレが研究の実行を一人で行なったことに始まり、大事なプレゼンを任さられたり、突然研究室に黄島って事務が一色教授個人でやとい入れたり、知らない間に一色教授が大学を辞めていたりと!」

「確かに研究の発表などのプレゼンはその研究の長がするのが普通ですよね」

「まぁ俺が何も考えずにただ言われたことを素直に聞いていただけだったから・・・」

「そんな事はないですよ」

「まぁとにかく一色教授は最初っから俺をはめようとしてたんじゃないのか」

「それにしては赤土さんは一色を恨んだりしてなさそうですよね」

「あー恨んだり妬んだりしてもしょうがないから。俺昔っからそう言うの苦手なんだ」

「苦手って言うのかなぁ」

「今の話を聞くとその当時の研究室は完全な水と油が共存してた感じでしょうか」

「共存ではないですよね。どちらかと言えば一つの色に強制的に、そしてそれを気づかずに染めて染まったって感じ!あのぉわかります」

「いや全然わからないです」

 白根は赤土耕太の知識とどんな環境にも適応可能なタフな精神そして何より人を恨まない心の清らかさに、今全世界が直面している問題に対応できるのではないかと思っていた。

「それにしても赤土さんは凄いですね。そんな状態を客観視できて、その上にそれをしっかりと受け止めていらっしゃる」

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