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注射  作者: 八味とうがらし
21/52

注射 喪失・・・

「失礼します。本日はお時間をいただきありがとうございます。私嫁入り新聞社の白根と申します」

「私はこの大学で学部長をしています。そして今は兼任でこの研究室の室長も承っております金美と言います」

「金美学部長・・・」

「大変ですね学部長自ら研究室も管理されているなんて」

「そうなんですけど・・まぁ仕方がないですよ」

「それでは早速ですがいろいろお伺いさせていただきます」

「なるほど凄い勢いで産学が進んでいますね」

「企業は確か〇〇◯会社ですよね」

「はい」

「ところで以前私が御校を取材をしていた時は赤土耕太教授が主に研究室を始め講演会や企業との調整を行なってましたよね」

「あぁ〜赤土君ね。彼は企業との癒着や休講などあまり素行が良くなくて学校を辞めてもらいました」

「えっ赤土教授お辞めになったんですか。それっていつのことだったんでしょうか」

「さぁいつ頃だったかなぁ、ちょっと覚えていないな」

「はいありがとうございました。」

「最後になりますが金美学部長私どものこの記事はお読みいただいておりますでしょうか」

「あーそれね見ましたよ」

「それってどこの大学なのだろうって我が校でも話題になりましたよ。でも世には数えきれないほどの大学があるから特定するのは難しいですかね」

「・・・いえ金美学部長実はこの記事では学校名は伏せて記事にしていましたがこの記事の元になったデータにはしっかりと学校名が記載されておりました」

「そうなんですか!御社が学校名を伏せたってことはこの国に関係がある学校ってことになるのかな」

「そうですね」

「ぜひお聞かせ願いたいものですね」

「この様な物がありまして」

『Univ I.Z. Laboratory Prof.Coda A 』の写真を学部長に見せた。

「なんですかこの文字は」

「コレは出雲大学コーダA教授研究室となるそうです」

「そうです⁉︎」

「はい。この文字が写っている映像とともに学部長の学校名を出して感謝の意を・・・」

「我が校に感謝の意?それはなんでですか」

「今のところはわかりません。私は学部長が何か心当たりでもあるのかと思ってました」

「ただ食糧危機を改善すると言っているこの送り主が、学部長の校名を出していると言うことはこの研究室が今行なっている食物増加システムに関係する事だと思うのですが」

「それはそうでしょうが・・・私にはさっぱりわからないです」

「因みにお聞かせください。この生物増加システムなんですが、増加させることができれば減少させる事も可能なんでしょうか」

「十分可能なことですよ。それはすでに企業と研究を行なっています」

「なるほど。それは大学が主導的にでしょうか」

「誰とはなくだなぁ」

「それはいつのことでしょうか」

「私が企業との打合せをするようになってからだな」

「うーむこの4月ごろだったともうな」

「ありがとうございました。今後の御校のシステムが人類に幸せがもたらせれることを願っております」

「それでは失礼します」

 白根は研究室を出ると緑川に連絡を入れた。

「赤土耕太は大学を辞めていたよ」

「いつ」

「学部長の記憶にないくらい前だそうだ」

「じゃああの映像はどういうことなんだ」

「学部長も意味がわからないと言ってたよ」

「一度赤土耕太に話を聞かない事にはどうしようもないな」

「そうだな」

緑川流司は白根との電話が終わると家路を急いだ。

「美月の奴今日は定期検診だって言ってたよなどうだったんだろうか。そろそろ出産準備をしないと間に合わないかもな」

緑川美月の出産予定日はまだ4ヶ月も先の話だが、緑川流司は待ちきれない様子だった。

「ただいま」

「アレ美月ただいま」

いつもなら明るく出迎えてくれる美月だったが何も返事がなかった。

「外出してるのかな。でも鍵は空いてたしな」

「おーい美月」

部屋に入って灯りをつけるとそこには塞ぎ込んだ美月がいた。

「・・・流司」

「どうしたんだ美月」

「・・・・いなくなっちゃった・・・」

「?なにが」

「いなくなっちゃった」

「だから」

「赤ちゃん。いなくなっちゃった」

「えっどういう事だよ」

「わかんない。今日病院行ったら医者が今日私で四人目だって」

「なんでいなくなるんだよ」

「わかんない」

「でも本当にいなくなっちゃった」

「・・・・」

「どうしよう」

「どうしよう」

「とにかく明日もう一度病院に行ってみよう。俺も一緒に行くから」

「お願い」

 翌朝二人が病院に行くとそこには夫婦連れや女性一人、男性一人などたくさんの人が集まって開院時間が来るのを待っていた。誰もが周りを気にしつつも自分達の状況に不安を持っている様子だった。

「美月辛い時にこんな事を聞くのは申し訳ないんだけど・・・」

「なに」

「産婦人科っていつもこんなに人が並ぶのかなぁ」

「そんな事ないよ」

「・・・・」

 緑川流司はどうしてか美月に聞こうとして思いとどまった。今の美月にはこのような会話すら重いものと思ったからだ。流司自身も昨日の夜美月には悪いと思ったが、コンビニに出かけると言って近くの公園で一人悔しがって心を落ち着かせていた。

「ねぇ流司周りの人もひょっとして・・・」

「・・ちょっと聞いてきてもいいかな」

「いいわよ」

「ありがとう」

二人の記者魂は自らが置かれた状況に苦しんでいてもやはり『なぜ』を放っておけなかった。

「あのぉ〜すみませんどうしてこちらに並んでいらっしゃるんですか」

近くの夫婦に尋ねた。

「突然お腹の子供がいなくなったんです」

「あぁ〜。うちも同じです」

この話をなんとなく聞いていた周りの人たちも同じだと寄り添ってきた。仲間がいると言う安心感とこんなにも沢山自分達と同じ問題を抱えた人がいると言う恐怖心がそうさせたのかもしれない。

 緑川はすぐにこの状況を白根に連絡をした。

「そう言うわけなんだすぐにこっちにきて取材をしてほしい」

「わかったすぐに向かうから、お前は青木に寄り添ってやって」

「すまんな、ありがとう」

 しばらくして白根が数名を連れてやってきた。

「そんなに連れてきたのか?」

「お前の連絡の後テレビが世界の各地で同じ現象が起きていると言っていたんだ」

「世界中で」

「そうだからまずここから取材して他の産婦人科にも取材に行くんだよ。それで青木は大丈夫なのか」

「かなり落ち込んでる。俺もかなりのダメージだよ。ただ美月の手前落ち込んでいられないからな」

「・・そうかぁ」

白根は産婦人科に集まった人たちに丁寧に取材を行った。取材をおこなっている時ふと頭の中に『Univ I.Z. Laboratory Prof.Coda A 』の文字が浮かんできた。

「出雲大学!この事だったのかぁ」

「緑川俺はすぐ会社に帰って記事を作る」

「どうしたんだよ」

「この事だったんだ」

「なにが」

「ほら。例の『Univ I.Z. Laboratory Prof.Coda A 』の映像」

「嘘だろ。こんなことができるわけないだろう」

「あーできる。出雲大学の生物増加システムなら。多分」

そう言うと緑川は会社に帰って記事を作った。そして出雲大学の学部長のインタビュー記事も明日の朝刊に間に合わせるよう仕上げていた

 できた記事は新聞見開き右側をこの度の事件、左側の上段には『食糧危機担当者様』と来た謎の映像を再録※未編集 として記載した。そして下段には出雲大学学部長のインタビュー記事を載せた。

 白根はいずれこの映像から出雲大学を犯人扱いされる事を防ぐ為に敢えて全てを掲載した。

 ただし世の中には自らの利益の為なら人はどうなってもいい輩も数多く蔓延っている。


 話は脱線するが、『オレオレ詐欺』などの犯罪はそのさいたるものだと思う。さて話は物語に戻ります。

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