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注射  作者: 八味とうがらし
18/52

注射 準備完了

 緑川夫妻は今までの取材をまとめ世界の現状として新聞に連載する事になった。連載をするとなるとやはり情報として欠けているところが各所に出てきていた。

「緑川ちょっといいか」

白根が緑川流司を応接に呼んだ。

「どうした白根」

「お前こっちに帰ってどれくらいになった」

「そろそろ一年かな」

「もうそんなになるか早いな」

「何が言いたいんだ」

「連載についてなんだが・・・」

「あー連載の不足な個所のことだろ」

「そうなんだよ。ただまだお前に戻って取材をしろとは言えないよ。なんせお前達は直接狙われているからな」

「・・・・確かにな。でもいずれはまたどこかにいって取材をするつもりなんだ」

「まぁそれはいいんだけど今度は奥さんと一緒にって事になるのか」

「いや俺としては一人の方が安心なんだよな。でもあいつは絶対についてくると思うな」

「・・・お前が結婚なんかするから」

「お前がよこすから」

二人は結論を後回しにした。

「ところでまだ写真の解析はできないのか。それこそもう一年だぜ」

「確かになちょっと後で確認するよ」

「頼むぜあの文字らしいのは唯一の手がかりなんだからな」

「ところで今日青木はどうした」

「あいつは病院にいってからくるから」

「風邪かぁ」

「いやそんなんじゃ無いらしい」

「らしい?」

「俺も詳しい事わからないんだな」

「緑川お前一番身近な存在の取材ができてないじゃないか。そんなんじゃとても他所の国なんかいけないぞ」

「そりゃそうだな」

「それで生物増加システムの追跡はどうなてんだ」

「そろそろ最初の成果がでていい頃だと思う」

「どうしたんだえらくいい加減な」

「赤土教授はだんだん隅の方に追いやられたって感じなんだ。元々この取材は赤土耕太が余りにも風変わりなことが興味を持った始まりなんだ」

「どうしたんだろうな」

「今はどちらかと言うと学部長が企業と話をしているようだ」

「それやばいぞ」

「これ見ろよ。これがお前達が前に撮ったやつ。これが俺がこの間撮った写真だ」 

「メンツは変わったけど胸元のバッチを見てみろよ」

「〇〇◯会社だ」

「そうなんだよこいつがこの会の会社のリーダーだろう。前もこいつは映ってたな」

「それ以外は大学側も含めてほとんど変わっているな」

「今度また赤土耕太に取材してみなよ」

「そうだな!それが良いかもな」

 結局緑川美月はその日会社には出社せず病院を出てから一人街をぶらぶらしていた。

「いつぶりだろこんなにのんびり過ごすのは、あっそうだ!あのファミレスいってみよ。でもまだあるのかなぁ」

「わぁまだやってる!」

『ありがとうございます』

 緑川美月は心の中でこのファミレスにおれいを言った。さっそく入店するとホットコーヒーとスイーツを注文した。

「やっぱここのスイーツとブラックコーヒーの組み合わせが最高になんですけど」

 そんな幸福感に浸りながら帰宅して流司の帰りを待っていた。

「ただいま」

「おかえり」

「今日病院どうだった。て言うかどこが辛かったの」

「どこも辛くもないし・・・」

「・・・・」

「あれですよダンナさん!」

「あれ?」

「実は私緑川美月は妊娠をしていることが判明いたしました。3ヶ月だそうです」

「ウォ〜やったな美月素敵じゃないかおめでとう美月」

緑川流司は部屋を小踊りして喜んだ。

「えええ出産はいつ?再来月ぐらいかな」

「イヤイヤそんなはずないでしょ流司」

「そうだよな」

浮かれてはしゃいだ流司も美月の冷静なツッコミに落ち着いた。

「おめでとう。でも俺すごく嬉しいんだよ。ずっと辺鄙なところで一人だっただろ多分一生一人であそこで終わるんだろうなって思ってたんだ」

「流司でもそんなこと思うんだ」

「それはそうだよ。て言うより美月お前が俺をどんな奴だと思ってるんだよ」

「ごめんごめんそんなつもりじゃなかったんだけどつい」

「これからはより体を気をつけないとな」

「そうだね」

「・・流司喜んでくれてありがとう」

 数日後、白根は赤土耕太にインタビューのアポイントを入れていた。

「赤土教授は本日お休みをいただいております」

「いつ出校されますか多分明日には」

「それでは明日またご連絡します」

「この一週間ずっと休んでるぞ赤土教授。体調悪いのかな」

「デスク大変お待たせしてしました。やっと解析が終わりましたよ」

「なんの?」

「ほらぁ青木美月が持って帰った写真ですよ」

「えっあれ分かったのか。ありがとう!でも時間かかったな」

「多分ですけど望遠で撮ったと思われます。その上画素数が低かったので解析に時間がかかってしまいました」

「これです。書き出しておきました。ただしどうしても解読できない箇所もございました」

白根はさっそく写真と書き出してある文字を見た。

「えーっと」

「U◯iv I.Z. ◯ab◯ratory Pro◯.Coda A 」

「この丸は?」

「はい多分◯の中に文字が入るんでしょうが見えないんです」

「なるほど・・・」

「ありがとう助かったよ。あとはこっちで文字を入れてみるよ」

「よろしくお願いします」

「緑川お前今どこにいるんだ」

 白根は電話をかけ緑川を事務所に帰ってくるよう連絡を取った。

「おつかれ〜ぇ」

そう言いながら緑川が美月と一緒に帰ってきた。

「早かったな」

「どうしたんだ急に」

「例の写真の解析ができたんだ」

「さすが嫁入り新聞」

「でなんて書いてあったんですか」

白根は緑川夫妻に写真と書き出された文字を見せた。

「すごい解析ですねこんな小さく荒れてただの起伏にしか見えない文字がここまでハッキリ見えるだなんて」

「何回もスキャニングしては文字を作ってそれを一文字づつ当てはめたって言ってたぞ」

「U◯iv I.Z. ◯ab◯ratory Pro◯.Coda A てなんだろ」

「Coda Aって。コーダって音楽なんかで使うやつのことですかね。終わりとかの意味で使いますよね」

「あー確かに。するとその後に続く『A』とはなんだろ」

「U◯ivって・・『n』を入れて国連?」

「国連だと『v』じゃなくて『t』だよ」

「あ〜確かに」

「素直にユニバ。ユニバーサルか」

「ユニバーサルは省略しないんじゃないのか」

「ユニバース?」

「ユニバーシティ?」

「それだユニバーシティだ。University はUnivと略すからな」

「あとは・・・」


「一色教授それでは取付をおねがします」

「その前にスタッフをもちろんミスターNo.5貴方もこの服を着てください」

一色の指示のもと誰もが白装束に防御マスクをした。どこから見ても誰が誰なのか分からなかった。着替えが終わった事を確認すると、数名の作業スタッフに指示を出し取り付け作業に取りかかった。

一色は紺野未知子に合図を送ると、この作業風景を定点カメラで動画や写真に収めた。

 一色は1〜7番まである(ボックス)が取り付けられるのを注視していた。作業を終えた作業スタッフが所定の場所に退避すると一色は各ボックスが間違いなく取り付けられているのか丁寧に確認をしていった。確認が終わると次にボックス一つひとつにタブレットを繋いでは中を確認をしていった。最後にロケットの先端部の小窓を開けそこにもタブレットを繋いで確認をしていた。

 すべての確認作業が終わると一色は紺野に合図を出した。

「教授お疲れ様でございました。完璧主義と伺ってはいたのですがまさかここまでとは」

ミスターNo.5は一色に敬意を持って話しかけてきた。

「ありがとうございます。ミスターNo.5」

「ロケットの発射はいつになるのですか?本部も発射については教授に一任と言っておりましたので」

「そうですねベストタイミングがあるのでそれは仕方のない事でしょうね」

「今週ですと、今夜2:36と明日の9:26です」

「今夜のうちに打ち上げましょうそしてそのまま撤収作業に入り明日にはここを離れましょう」

「承知しました」

一色は紺野未知子が撮った映像を確認していた。

「これなら使える」

早速編集作業に入った。動画は全編無音に処理されひたすら文字が打ち込まれていた。

『I.s 我々は世界の食糧危機対策には失望し続けている。今や世界の人口は130億を超えている。あなた達は全世界で1日にうまれてくる子どもがどの位か知っているのか・・・。

 その子たちの1/5が最初に強烈に感じる事は何か・・・それは空腹なのだよ。

 今我々がいる場所は、50年前は豊富に作物が取れその恩恵を全世界が受け取っていた。たったの50年で土地は痩せこけて赤茶けた大地には砂煙が舞っているだけなのだよ。

 さぁごたくはこの位にしよう。これからわれわれは産まれてきた子ども達がこれ以上空腹を感じずに成長できるようにこの世界のシステムを少しだけ変える事にする。全世界の皆さんもこの素敵な瞬間を喜んでくれ!

 最後になるがこの計画を影で支えてくれたIzumo Universityに感謝の意を表したい。

 ありがとうI.s』

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