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注射  作者: 八味とうがらし
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注射 日常

 一色と紺野未知子は息をひそめ静かに暮らしていた。住まいも別生活スタイルも違い世間からは相手にされていない形を取っていた。とにかくこの一年は目立たない様にする事が彼らの最大のミッションであり、計画実行の大事なプロセスなのだ。連絡も余り多くは取らず必要最低限に済ませていた。ただし紺野未知子は必要最低限に済ませる努力と言った方が正解かも知れなかった。

  

 誰もが自らの日常を暮らしていた。

一色と紺野未知子がスポンサー企業に結果を伝えに行った時から一年が経過していた。一色は一年後と話ではあったがもうしばらく様子を見るべきと判断していた。スポンサーにもその事を伝え理解を得ていた。

「後しばらくの辛抱だよ紺野未知子」

「早く教授と一緒に行動したいです」

そうやりとりをしてさらに数ヶ月が過ぎていた。


 出雲大学では赤土耕太と一緒になって企業選定を進めていた。

「どこもかしこも大手企業ばかりだな赤土君」

「本当ですね」

 この会議には理事長はもちろん学長や事務部長など大勢が嬉々としながら参加をしていた。

「赤土君はどこの企業が一番有効に対応してくれると思っているのかな」

学部長が聞いてきた。

「正直なところ私も迷っているのです。ただ我々の研究にいち早く興味を示していただいた〇〇◯会社が一番協力的なんです」

「と言うと」

周りの理事が何気に聞いてきた。

「はい。まずスケジュールがすでにしっかりと提示されています。また聞くところによるとすでに研究チームを立ち上げ我々大学での研究のサポートもするとのことです」

「他の企業はどうなのかな」

「他社様はまだ参入の意思表示がほとんどで一歩も二歩もも出遅れた感じです」

「うーん」

「理事長どうでしょうか〇〇◯会社で」

「今後の契約金などはその〇〇◯会社はどう言っているのかな」

「それにつきましては今提示してきている会社の中で2番目となっております。が、それ以上に成果報酬という形で大学への優先的学生への受け入れ、つまり優先的に我が校の学生を採用するとのことです。また売上が目標を上回った場合はそれに対しても状況によっては還元するとのことです」

「わかった。では〇〇◯会社でいこうじゃないか。皆さんいかがかな」

会議室の全員が拍手を持って賛同した。

 今後は〇〇◯会社が赤土耕太と一緒になって研究を推し進めてゆくことになった。

「学部長ありがとうございました。明日から安心できます」

「まぁよかったよ協力企業が決まって赤土君も安心して講演に出かけられるってものだよ」

「・・・そうですね」

赤土耕太は以前〇〇◯会社から手渡された御礼をそのまま学部長に手渡した。

「これは!」

「はい以前手渡された御礼だそうです。わたしはどうすることもできず困っておりました・・・。学部長の方でうまく処理していただけると・・・」

赤土耕太はようやく『御礼』の嫁ぎ先が見つかり安心していた。

学部長は手慣れた様子でスーツの内ポケットにしまった。

「赤土教授これから忙しくなるぞハハハ」

学部長は初めて赤土耕太を教授と呼んだ。

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