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注射  作者: 八味とうがらし
12/52

注射 実行

 「教授お待ちしておりました」

出迎えたのはスポンサー企業の役員達数名。

「こちらこそ、この日が来るのが待ち遠しかったです」

 紺野未知子は素早く役員にリポートを配り終え、一色の後ろに邪魔にならない様にしていた。

 一色が実験の成果を説明すると会議室が拍手に包まれた。

「素晴らしいですよ一色教授」

「あなたが最初私どもに話を持ってきた時は『こんな事ができるはずなどない』と思っていたのです。それがこの様に素晴らしい結果がもたらされるとは」

別の役員も同意しながら

「それに原因もまだ誰もわかっていない。国も全く理解していない」

「お褒めいただきありがとうございます。それでこれからのことですが・・・」

「一色教授その事なんですが」 

 スポンサーのトップが不意に話し出した。

「・・・」

「我々はすでに亜空間ロケット発射台を建設したのですよ」

 一色は驚いて見せた。

『確かにこの企業は私の計画に協力を惜しまない。しかしこれほどまでに協力的だとは』

「ありがとうございます」

会議室の大画面モニターに設置されている国や場所、建設の様子などが映像化されだれもが静かに見守っていた。

『なぜこの場所を選んだのだろう』

一色は不思議に思った。

モニターの映像が終わり誰もが企業トップの方を向いた。

「いかがですか一色教授」

「はい改めて素晴らしいと思いました。こんなにも素晴らしい発射台を建設していただいたいるとは、感謝しかありません」

「そうでしょう我々もこのプロジェクトには大いに期待しているのだから」

「ところでなぜこの場所に決定されたのでしょうか」

「やはりそう言われると思っておりました」

「我々としても計画を世界に気づかれずに行いたいのです。そのためには教授の実験が成功した一年後に行います」

一色は頷きながら企業トップの考えを聞いていた。

「そしてこの地を選んだ最大のポイントは辺境である事です」

「辺境・・・」

「さまざまなウィルスなどの発生源はこの様な辺境の地が多いとされています。それは誰もがこんな辺境で人知れず計画を行なっているからなんですよ。なので我々もこの地から始めます」

「では私の実験での地域的なバランスはどうお考えでしょうか」

「あくまでも局地的な事例と捉えることができるのでは無いでしょうか」

「・・・」

「では我々はこのまま建設を続けます」

「よろしくお願いします」

 

 原因がわからにまま時間が過ぎていった。世間は次第にこの事を忘れていった。政府は表での動きはなくなり、関係省庁が対応するのみとなっていた。

 嫁入り新聞社をはじめとする各メディアも取材を通して新しい情報を得る事ができずにいた。

 どこかのテレビ局は太陽からくる強力な電磁波が原因では無いのかと仮説を立てて天文学者などをスタジオに呼び結論を出そうとしていた。

 赤土耕太は生物研究室の長としてまた出雲大学の生物学教授として大学の講義やシステムの深度を深めより現実的に使えるよう研究をおこなっていた。ただ一色が全てを赤土耕太に指示してできたシステムだった為、今の赤土耕太にはこのシステムを効率よく運用することは難しかった。それでも相変わらず忙しく全国を飛び回る赤土耕太に大学は事務を一人雇い入れた。

 そんな状況の中出雲大学に大手企業から赤土耕太の研究システムを活用したいとの依頼が多く寄せられていた。大学は早くこの依頼に対し行動を起こしてほしいと赤土耕太に伝える様事務に行っているが事務が余りにもお粗末だった為、日々忙しく飛び回っている赤土耕太に連絡を怠っていた。

 大学の掲示板には赤土耕太の講義の休講予定が張り出されていた。

「教授また休講だよ。単位大丈夫かな」

 学生は赤土耕太の講義を選択したもののあまりにも休講が多いため単位不足を懸念し始めていた。

「では行ってきます」

そう事務員に言うと赤土耕太は講演に出かけていった。

「あっ教授5分ほどいいですか」

「手短にお願いします」

「教授の講義が休講が多いと学生の皆さんが不安がっています。そろそろ講義も再開していただかないと」

「そうですねご迷惑をおかけします。来週からは日曜日のみの講演となりますので今後は学生にもしっかりと対応できます」

「そうでしたか、安心しました」

「・・・では行ってきます」

「あの事務の人全く俺のスケジュールわかってないんだよな。前いた黄島さんならもっと上手く処理せてくれてたけどな。黄島さんまたきてくれないかな・・・。今度総務に事務員について話をしよう」

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