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72.ゼウス様の計画(1)

 許しませんっ!


 ぜぇーーーーったいに、許しません!!!


 なんと言う屈辱っ!


 パリスがアフロディテに黄金のりんごを渡したおかげで、最も美しい女神の称号はアフロディテのものとなりました。

 人間如きにこの様な屈辱を味わわされるとは!


「まだりんごの事で腹を立てているのかい?」


 眉間にシワでも寄っていたのでしょうか。

 地上の様子を眺めていたわたくしに、ゼウス様が話しかけてきました。



 わたくしが見ていたのはあの憎っくきパリス。


 アフロディテに約束通り、美女を手に入れる方法を教えてもらったパリス。

 彼はその後、プリアモスとヘカベが昔捨て子だと言うことが判明し、王宮へと迎えられました。

 どうやら2人は立派な美男子に成長したパリスを見て、予知夢の事などすっかり忘れてしまったようです。


 生き別れていた年月を埋めようとでもするかのように、2人はパリスを可愛がりました。

 それをいい事にパリスは、プリアモスにスパルタへ行くための船を作ってもらいました。それも豪華な贈り物をどっさりと詰め込んだ、豪奢な船を。


 意気揚々と船に乗り、スパルタへと赴いたパリスは、スパルタの王メネラオスに丁重もてなされました。

 お人好しのメネラオスは、パリスの《《本当の目的》》なんてものを見抜けるはずもなく。客人の接待を妻のヘレネに任せて、クレタ島へと出かけてしまったのです。


 夫がいなくなった隙に、パリスはヘレネを誘惑しました。

 そう、アフロディテが約束した美女というのはスパルタ王の妻ヘレネ。


 夫がありながら他の男に夢中になるなんて! と本来ならばわたくしが叱り付けてやるところですが、アフロディテが息子のエロスに、黄金の矢で射るように命じたのですからどうしようもありません。

 エロスの黄金の矢に射られた者は、例え相手が神であろうと激しい恋心に掻き立てられてしまうと言う、恐ろしい能力をもっているのですわ。


 すっかりパリスにメロメロになってしまったヘレネは船に乗り、トロイアへついて行ってしまいました。



 トロイアの人々に歓迎され、盛大な結婚式を挙げた2人。ああ、幸せいっぱい。


 なんかで終わる筈もありません!


 夫だったメネラオスは激怒し、兄でミュケナイの王アガメムノンに相談しに行きました。そしてアガメムノンを総大将とする遠征軍を組織して、トロイアへと向かっていったのです。


 なぜ女ひとりの為に、ギリシャ中の英雄たちが力を貸してくれる気になったのかですって?


 これにはとある事情がありますの。


 ヘレネはアフロディテが世界一の美女として選んだとおり、比類ない程の美貌を持っています。

 そんな美女をもちろん男たちが放っておくはずも無く。こぞって求婚しにやって来た英雄達に頭を悩ませていた王と妃に、知恵物と名高いイタケ島の王オデュッセウスが妙案を出してきました。


『ヘレネ自信に夫を選ばせてあげましょう。と、その前に、求婚者達全員に誓わせるのです。誰が選ばれても意義を唱えず、この結婚を害する者があれば、全員一致してその夫を助けること、と。』


 つまりヘレネは求婚者全員のもの!って事ですわね。確かにこれならばプライドが傷付く事無く丸く収まります。そうして選ばれたのがメネラオス。


 選ばれなかったヘレネの求婚者達は、夫のメネラオスを助けると、神々に誓いを立てております。


 そんなこんなでギリシャ中の英雄達は、誓いを果たすべく部下を連れて船に乗り、トロイアへと遠征して行ったのですわ。


 傾国の美女とは、こう言う女の事を指すのでしょうね。


 ああ、そう言えばテティスの息子アキレスですけれども、彼もこの遠征軍に先日仲間入りをしましたの。


 アキレスは当初まだ幼かったのでヘレネに求婚しに行ったわけでもなく、この遠征について行く義務など無かったのですが、


『アキレスが遠征に加わらなければトロイアには勝てない』


 とのお告げがあったということで、スキュロス島に隠れていたのに見つけ出されてしまいました。


 アキレスには


『トロイアへ行けば短命だけれども、後世にも語り継がれるような栄光に満ちた生涯をおくることが出来る。その逆に、トロイアに行かなければ平穏無事な生涯を長く生きられる』


 と言う運命が定められていて、この事を知ったテティスが息子を隠していたのですけれども、結局は本人の強い意志で遠征軍に仲間入りしてしまいましたわ。



「僕の瞳には君が最も美しく写っているということは、前にも言っただろう?」


 なおも地上の様子を見続けているわたくしに向かって、ゼウス様が笑って言いました。


「この屈辱感は男のゼウス様には分かりませんわ」


 アテナとあの日、固く誓い合ったのです。

 節穴だらけのあの男もその家族も、とんだおバカさん。必ずやあの審判を下した事を後悔させてやる!と。


 ギリギリと歯噛みをするわたくしの頬に、ゼウス様の唇が触れると手を取られ、立ち上がります。


「さあさあ広間にはみんな集まっているよ。君も早くおいで」

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