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68.怪しい計画

 目の前にはむさ苦しい脳筋男とキラキラ系美男子。あー、言い換えますとポセイドンとアポロンですわ。

 このふたりに呼び出されて、ぽつんと浮かぶ無人島におりますの。珍しい組み合わせに、頭の中は「?」でいっぱいです。


「こんな所に呼び出して、一体なんの用です?」


「ヘラの姉貴は知ってるか? スパルタの王妃レダの話を」


「スパルタの王妃? 何かあったのですか?」


「先日、その王妃が卵を産んだらしい」


「……はぁ?」


 何を馬鹿なことを言っているのだか。人間は、産まれた時から人間の姿。卵を産むのは鳥や魚でしょう。

 頭のおかしなポセイドンと話すのは時間の無駄なのでアポロンの方を見ると、なんと「本当です」と頷き返してきました。


「あなた達、疲れているのでは?」


「そうじゃないさ。この前アフロディテから面白い事を聞いたんだ。白鳥に化けたゼウスにワシの姿になって追いかけて欲しいと頼まれたってな」


 ますます言っている意味が分かりません。アフロディテと鳥の姿で追いかけっこって。それって新たなプレイなのでしょうか?

 えっ? 新たなプレイ……?!


「ちょっとまさかっ! 鳥の姿でアフロディテと浮気したと言う事かしら?!!」


「違う違う、浮気相手はそっちじゃない。レダの方さ」


「レダ……それはつまり、白鳥に化けたゼウス様としたから卵を産んだ。ってことなの?」


  うんうん、と頷く2人に絶句してしまいます。

皆さまならば「そんなの有り得るかーい!」って突っ込みたくなるでしょうが、ゼウス様ならば十分に有り得る話です。

 大方、ワシに襲われそうになっている白鳥を演じてレダを騙したってところでしょう。わたくしもそんな感じで過去に騙されておりますもの。


「んなっ……! それならばその卵とやらを、今すぐに叩き割りに行ってきますわ!!」


 身体中に怒りがみなぎってきて爆発しそうです!

 スパルタへと向かおうと立ち上がると「まあまあ」と馬でもあやすように、ポセイドンにたしなめられました。


「これまでも姉貴は浮気相手に復讐してきたが、それでゼウスが反省した事なんて1度でもあるか?」


「え……」


 ポセイドンの言う通り、ゼウス様に直接言っても全然ダメージがないようなので浮気相手やその子供に怒りをぶつけてきましたが、いい事なんてほぼ有りませんでした。

 大体はわたくしが涙を飲む形になって終わって、スッキリとした事なんてただの一度もありません。


「ヘラ様の長年に及ぶ心痛は、察するに余りあります。ですから俺たち2人は考えたんですよ。いい気になっているゼウス様にお灸を据える、いいお仕置方法を」


 あの洗練潔白なアポロンがゼウス様にお仕置ですって!?


「あなたポセイドンに妙な事でも吹き込まれたか、それとも弱みでも握られたのですか? 」


「そうではありません。ゼウス様は確かにお強い。ギガース、テュポンと連勝し、あのガイア様ですらあの方には逆らう事など出来なくなりました。これまでもゼウス様は思いのままに世界を動かしてきましたが、これからはこれまで以上に好き勝手に動くでしょう。無敵の存在になったあの方を誰も止めることなど出来ませんからね」


 夫が最強の存在になって何が悪いのかしら。それこそ妻として誇るべき事ではありませんか。


「妻のわたくしに謀反計画を持ち掛けるなんて、あなた達正気ですの?」


「妻だからこそ、ですよ。ゼウス様が絶対的な信頼を寄せる貴女様だからこそ、ダメージが大きい」


「バカおっしゃい! 信頼を裏切れだなんて、わたくしがそんな話に乗るとでも本気で思っているのですか?!」


「裏切れと言っているのではなく、目を覚まさせて欲しい、とお願いしているのです。ゼウス様の暴走を止められるのは妻であるヘラ様だけ」


「一強は危険すぎる。俺たちと言う神もいる事を分からせてやろう。な? 姉貴」


 真剣な顔をした2人見て、その場に座り直しました。

 夫を諌めるのもまた、妻としての役目。2人の言い分も最もです。


「……分かりました。その方法とやらを聞かせてもらいましょう」





 穏やかな昼下がり。暖かな風に誘われて2人でくつろぎながら談笑している内に、ゼウス様が目を閉じられました。


 すやすやと眠る夫の頬にそっと口付けを落とすと、物陰に隠しておいた鎖を取り出して握ります。


「全てゼウス様が悪いんですのよ」


 誰にも聞き取れないくらいのごく小さな声で呟き、ずっと向こうにある藪へと目を向けると、ポセイドンとアポロンがコクん、と頷きました。


 ゼウス様にはこのくらいの事をしなければ、効き目など無いでしょう。ゴクリと唾を飲み込み、ヘパイストスに作って貰った鎖をゼウス様の身体に、細心の注意を払いながら巻き付けました。


 ガチャンっと鍵を閉めたその時、ゼウス様の目がパッと見開かれました。身動きが取れなくなっている状況を飲み込んだところで声を掛けます。


「もうお目覚めでしょうか」


「ヘラ……これは一体どう言うつもりだい?」


「これまでわたくしはゼウス様のする事に、随分と我慢を重ねてきました。レトに始まりマイアにカリスト……その他大勢の女と関係を持ってきましたわね。そしてつい先日にはレダとか言う女にも手を出したのだとか。わたくしにも限界というものがございます。分かってくださいまし」


 いくらヘパイストスの作った鎖とは言え、ゼウス様が自力で脱出するのも時間の問題。早々に賛同する仲間を集めなければ!


 駆け出して立ち去る間際にゼウス様の顔を見ると、落胆したようにも悲しそうにも見えるような表情が目に入りました。


 御怒りになるのかと思ったのに……。


 大声で罵倒された方が幾分かマシでした。ズキンっと胸にやでも刺さったかのように痛みます。


 ですが、もう後には引き返せません。


 無理矢理にゼウス様から目線を引き剥がし、他の神を味方につけるため説得しに向かいました。

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