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65.神は見かけによりません

「さて、これからどうするか」


 暗い洞窟の中、動くとガチャリと金属音がした。


 ヘラを逃がした後、テュポンとの一騎打ちになった。

 遠距離からは雷霆で、近距離からはアダマスの鎌で攻撃を繰り出し、追い詰めたと思ったのだが……。


 肩から生える毒蛇をかわすうちに翼の風にあおられて、奴の下半身のとぐろに巻かれてしまった。


 全身の骨を砕かれ内臓を潰された所でタイミングをずっと見計らっていたのだろう。半身が竜の女デルピュネがやって来て手に握っていた武器を取られてしまった。

 挙句の果てには手足の腱を切り取られ、身動きを取れないように鎖で繋がれた上に、こうして洞窟に閉じ込められている。


 この鎖には治癒能力を遅らせる力でもあるのか、腱の再生が思うように進まない。恐らくガイアが創り出した代物なのだろう。


 「…………」


 外で見張りをしているデルピュネが誰かと話をする声が聞こえてきた。

 テュポンが戻ってきたのかと耳を済ませると、聞いたこともないような甲高い男の声も聞こえてきた。


「デルピュネ様、テュポン様がガイア様の下からお帰りになられました! ゼウスをタルタロスへ落とす前に、前祝いとして祝杯をあげようと仰っております!!」


「まあ、そうなの? でもあたしがここを離れてしまったら見張りをする者がいなくなってしまうわか」


「ええ。ですからテュポン様からこちらの酒を預かってまいりました。一杯だけならば酔わないだろうから、まずはこれだけ楽しむようにと。後はゼウスを落とした後、好きなだけ飲んで楽しめば良いとの伝言でございます」


「そういう事ならば頂かなければ。テュポン様とガイア様の勝利に」


 酒を飲んでいるのか話し声がしばらく聞こえなくなったあと、突然岩戸が揺れて暗闇に光がさした。

 久しぶりに見る日の光に目を瞬かせていると、細身の男がひょいひょいと近付いてきて鎖を断ち切った。


「ヘルメスか」


「ええ、それとパンも居ます」


 ヘルメスの言う通り、後ろからパンも入って来た。その手には雷霆と鎌、そして熊の毛皮を丸めたような物も持っている。


「デルピュネは?」


「ヒュプノスから貰ってきたねむり薬を、酒に入れて飲ませました」


「なるほど」


「いま腱を元に戻します」


 パンの持っていた毛皮を広げると、取られた腱が入っていた。それをヘルメスが器用に、チクチクと針と糸で縫い合わせていく。

 ヘルメスは適当なようでいて、実際にはオリュンポス神の中でも取り分け多才な能力を持っている。


「どうですー? 見事な腕前でしょ?」


「ああ、違和感すら感じないな。助かった」


 さする手首と足首は、縫い目が分からないくらいに綺麗に縫い合わされていた。問題なく以前のように、思い通りに動かせる。


「ヘラ様にエジプトでお会いしましたよ。モウモウ言って騒いでましたけどご無事です」


「そうか。ヘラクレスと一緒なら心配ないだろう」


 ヘラの無事を聞いたところで武器を手に取った。体力ならば閉じ込められている間に十分養った。待つ必要などない。


「テュポンはどこにいるか知っているか?」


「ガイア様のところで傷を癒していましたが、ニンフ情報によると、もうじきこちらへと戻って来るようです」


「それなら探す必要はなさそうだな。……そうだ、パン。今度テュポンから逃げる時はヘルメスの様に鳥になった方がいい。半ヤギ半魚では格好悪い」


「あっはっはっ、お恥ずかしい限りで」


「この戦いに決着がついたら、記念にあの姿を空に上げてあげよう」


「それは楽しみですね。夜空に浮かぶ自分の姿を眺めながらの一杯……最高です」


 もう一度雷霆と鎌とを握り直すと、洞窟から抜け出した。ついでに出入り口で眠るデルピュネに鎌を振り下ろし、斬れ味を試しておく。


「問題ないな」


 刃こぼれも無く斬れ味は上々。

 

 2度目の敗北は、ない。

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