表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/83

56.ミッションコンプリート!なんてさせません!!(1)

 ――あんの馬鹿クソ怪力男ぉぉ!!!



 はっ!! あらヤダ皆さま、いつの間にわたくしの心の声を聞いてらしたの? 今のは幻聴。わたくしが馬鹿とかクソとか言う訳ありませんわ。



 そんな事より、ヘラクレスのその後の話をしましょう。


 アポロンの神託を受けたヘラクレスは、エウリュステウスの元へ行き仕えることとなりました。

 やはりエウリュステウスはヘナチョコ男。わたくしの予想通りですわ。

 エウリュステウスはヘラクレスの人並外れた強さに恐れを成し、亡き者にしようと考えたようです。次々と攻略不可能なミッションを課しているようで、見ていて清々しますわ!


 ……と、なるかと思いきや。あの怪力男は次々と課題をクリアしていくではありませんかっ!!ゼウス様の血を引いているとは言え、んもう、どうなっているの?!



 まずエウリュステウスが命じた勤めはこうです。


『ネメアに住んでいるライオンの皮を取ってくること』


 ライオン退治なんて既にやっているのだから楽勝でしょ。なんて思うかもしれませんが、ネメアに住むライオンはキタイロン山のライオンとは訳が違います。

 強靭な毛皮と鋼のような肉体は一切の刃物も受け付けないと言う怪物ライオン。


 ヘラクレスも初めこそ矢で仕留めようとしたみたいですが、傷一つつかない様子を見てなんと、三日三晩首にしがみついて絞め殺してしまったのです。


 ヘラクレスはライオンの皮を剥ぐと肉はゼウス様への供物として捧げ、毛皮の方は自分の鎧として身にまとっているようです。馬鹿力にプラスして一切の刃物も受け付けない毛皮なんて……余計に強くなってしまったじゃない!!



 イライラしながらもエウリュステウスの次の課題が出されるのを見守っていると、その内容はこんなものでした。


『レルネーの泉に住むヒュドラ退治』


 レルネーと言うのはネメアから南にある泉で、ここには9つの頭を持つ水蛇ヒュドラが住んでいるのです。この水蛇の持つ毒はそんじょそこらの毒とは違いますわ。触れただけで死に至らしめるような、猛毒中の猛毒。

 しかもヒュドラの9つある頭の内の1つは不死で、その不死の頭のおかげで他の8つの頭はどんなに切っても再生すると言う、最強と言っても過言ではない水蛇です。


 だからと言って、こんな化け物には流石に勝てないでしょうと高を括るのは良くありません。ネメアのライオンをサクッと殺してしまったような男ですからね。 

わたくしも巨大な蟹を差し向けて、ヒュドラに加勢してあげましたの。

 そうしたらわたくしの蟹ちゃん、ヘラクレスに気付かれることさえなく、あっさりと踏み潰されてぺしゃんこになってしまいました。


 こんなのってあんまりです!


 全く相手にしてもらえなかった蟹が不憫でしたので、あの子はわたくしが天に上げて星にしてあげました。


 それでヘラクレスがどうなったかと言うと、皆さまお察しの通り、ヒュドラを退治しましたわ。ええ、本当に、残念なことにね。


 ヒュドラの持つ再生能力に苦戦しているヘラクレスを見て、双子の兄弟イピクレスの子で従者をしていたイオラオスが、助け舟を出したのです。

 イオラオスはヘラクレスが切ったヒュドラの傷口を松明の炎で焼いて、新しい首が生えないようにしたのですわ!


 頭の足りないヘラクレスだけだったら、ヒュドラが勝てたでしょうに。


 残った不死の頭は大きな岩の下に埋めて討伐完了。


 第2の課題もクリア。


 と見せかけて、エウリュステウスもなかなかに悪知恵が働くというか、狡猾というか……。ヒュドラに勝てたのはイオラオスの助けがあったからで、ヘラクレス一人の力で勝てた訳では無いから無効!

 と言い出したのです。


 タダ働きさせられちゃって可愛そーう。うふふ。


 と笑っていたのも束の間。


 3つ目の課題もとい、2つ目の課題


『ケリュネイアの鹿を生け捕りにしてくること』


も、1年という歳月をかけて達成されてしまいました。


 ケリュネイアの鹿と言うのは、アルテミスがとっても可愛がっている黄金の角と青銅のひづめを持つ鹿のこと。アルテミスのお気に入りを殺すなんて罰当たりですから、こちらは生け捕りとしたようですわね。


 この鹿は矢よりも早く走ることの出来る俊足の持ち主。殺して連れて行くという事ならばまだ簡単でしょうが、生きたままという事ですからヘラクレスも苦戦していましたわ。

 1年間追いかけ回して鹿が疲れきった所を捕獲。ミッションコンプリート!


 なんてさせませんわよ。

 事の成り行きをこっそり見ていたわたくしは、アルテミスに鹿のピンチを教えてあげましたの。


 そうしたら案の定、アルテミスは血相を変えて鹿を抱えたヘラクレスに詰め寄りました。


『あたしの鹿に手を出すなんてなんて無礼なの?! その汚い手を離しなさい!!』


 とブチ切れたアルテミスに、ヘラクレスが泣き落とし。これまでの経緯を潤む目で説明しているところに、なんて間の悪いのかしら。アポロンが通り掛かったのです。



『おいおいアルテミス、何をそんなに怒っているんだよ』


『この男があたしの鹿を連れ去ろうとしているのよ! 信じられる?! ミュケナイの王に仕えるようにって言う神託を貴方から貰ったとか何とか言ってるけど、それ本当なの?!』


『ああ、アルテミス。確かに俺は彼にミュケナイの王エウリュステウスに仕え10の勤めを果たすよう神託を授けた。と言うのもヘラ様がさ……』


 ごにょごにょとアポロンがアルテミスに耳打ちをすると、ポンっと手を叩いて『あー』と何度も頷きました。


『ヘラクレス、心中お察しするわ。分かった。あんたにあたしの鹿を貸してあげる。その代わり、傷一つ付けるんじゃないわよ!』


『アルテミス様、本当にありがとうございます。約束は必ず御守りします』


 そんなこんなで2つ目の課題は達成されてしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ