表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/83

52.わたくしも企んでみますわね!(2)


 ――してやられたな。



 あの宣誓が、まさかこんな形で使われるとは。


 アルクメネよりも先にニキッペが男児を出産してしまった。お陰で僕がした宣誓は、ニキッペの産んだ子のエウリュステウスの物になってしまった。一度した誓いはいくら僕でも破れない。



「ヘラも随分と頭が回るものだ」



 思わず笑いが込み上げてくるが、僕をこんな風に欺けるようになったのだから、あまり悠長に構えては居られない。

 今回はガイアがこれから仕掛けてくるであろう戦に備えるために、アルクメネを騙して孕ませたのだから。


 アルクメネはヘラに似て、かなり身持ちの硬い女だった。セメレの時のようにゼウスだと正直に名乗り落とそうとしたが、一向に受け入れては貰えなかった。

 そこで考えたのは、夫アムピトリュオンに化ける事。


 アムピトリュオンが遠征から帰ってくるほんの少し前に夫の姿に変身し、アルクメネの元へと訪れたのだ。



 この一夜で確実に孕ませたい。


 何度もこの女の元へと通えば、ヘラに気付かれる可能性が高くなる。いつもならそれで構わないけれど、今回の子供には僕の覇権が掛かっている。


 そこで太陽神ヘリオスに3日間、太陽を出す事を禁じ、月の女神セレネには月をゆっくりと動かすように命じた。さらに眠りの神ヒュプノスに楽しい夢を人々に見せ続けるようにさせ、周到に準備したのだが。



 とは言えアルクメネの産んだ子ヘラクレスが王位に付けないからと言って、僕のしようとしている事には今のところ影響しない。ヘラクレスが死なないように注意しておけばいい。



 最も、あの赤子は僕の庇護など必要なさそうだ。



 と言うのもついこの間の事。ヘラクレスが眠っている揺りかごの中へ2匹の毒蛇がやって来た。恐らくあの蛇はヘラが送り込んだものだろう。


 どうするのかと黙って見ていれば、隣で眠っていた双子の弟で本物のアムピトリュオンの子、イピクレスが毒蛇に気が付いて泣き出した。

 すると目覚めたヘラクレスは2匹の毒蛇の喉元を掴むと、握り潰して殺してしまった。


 まだ生まれて1年にも満たない赤子が、その様な業を成してしまうとは。成長した時への期待が膨らむ。

 この調子ならヘラの嫌がらせ位で簡単に死んだりはしないだろう。


 ヘラは何だかんだと浮気相手とその子に嫌がらせをしても、死に至ったのはセメレだけ。子供に至っては皆、無事でいる。



 以前テミスが言っていた謎の草については、ニンフ達に協力を仰ぎ全て刈り取らせた。ガイアはしつこくその草を生やそうと試みている様だが今のところ、ギガース達がその草を手に入れた様子は無い。

 あの草は恐らく、ギガース達を強化する様な代物だろう。



「大人しく身を引いて下さればいいものを」



 最終決戦は、近い。



***



 信じられませんわ。


 王座に付く運命から遠ざけただけでは何だか気分がスッキリせず、ヘラクレスに毒蛇を送り込んでやったのです。

 だってゼウス様やアルクメネが、ヘラクレスをミュケナイの王にしたかったどうかなんて分からない。つまりはあの宣誓をさせた事が嫌がらせになったかどうかよく分かりませんもの。


 それで追加で毒蛇攻撃してみましたのよ。でも、呆気なく殺されてしまいました。 


 流石はゼウス様の子ね!


 と言いたい所ですが愛人の子ですもの。ちっとも喜べません。



「あぁーーーー!!!! もうっ! 何でこうも苛立たなければいけないかしら」



 結婚式の時にゼウス様から頂いた王笏が目に入りました。スマートな体形をしたカッコウが、王笏の先にちょこんと乗っかっています。


「ゼウス様はわたくしなんてもう、要らないのかしら……」


 テミス様とあっさりと別れたのに、わたくしとは別れようとは言わないので、きっと必要としてくれているのだろうと思っていたのですが。

 なんだか自信が無くなってきました。



『結婚の神が離婚なんてみっともないものね。だからゼウス様も哀れんで離縁を切り出さないのだわ。お可愛そうに』



 セメレに昔、言われた通りかもしれません。


 ゼウス様は捨てられてしまうわたくしを哀れんで、離婚を踏みとどまっているのかしら。


 もしそうだとしたら、こんな惨めな事はありません。


 お情けで、などみっともない。もしかして馬鹿にされているのかしら。

 だいたい最初はゼウス様から迫って来たのに、何でわたくしが縋り付いている、みたいな感じになってしまっているのかしら?!


 ゼウス様には直せるところは直しますと何度も言いましたし、そのままでいいとも言われましたわ。一体わたくしにどうしろと言うのでょう。



 考えていたらものすごく腹が立ってきました!



「必要無いのなら、さっさと捨てて下さればいいのよ。それが出来ないのなら……」



 握り締めていた王笏をコトン、とテーブルの上におきます。



「わたくしの方から捨ててやります」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ