35. 必殺、デリート作戦!!(3)
「おい、お前誰だぁ?」
「どうしたんだオートス」
「それがよぉ、エピアルテス、すんげぇ別嬪さんがこんな所に居るんだよ」
「ホントだ!今まで会った女の中でも、一二を争う美人だな。それであんたは誰何だ? 女神か?」
「わたくしは最高神ゼウス様の妻、ヘラですわ。あなた達はもしかして、ポセイドンの子供かしら」
最近地上を騒がせている双子の兄弟の事を思い出しました。
なんでもポセイドンに恋をしたイピメデイアと言う女性は、毎日海水をその身に注いだのだそう。あのポセイドンの事ですから、自分に恋をする女性の存在を見逃すはずなんてありません。早速2人でイチャコラやって、出来た子供がこの2人。
尋常では無い速さで成長し、まだ10歳にも満たない年齢だったはず。それなのにこの背丈とは末恐ろしい。
実際に2人はこの前、その自慢の怪力で海を陸に、陸を海に変えようとしていましたのよ! これにはゼウス様も眉をひそめておりました。
「そうだ。俺はエピアルテス、こっちがオートスだ。まさか最高女神にこんなところでお目にかかれるとは。丁度あんたの旦那に会いに行こうと、オリュンポス山にオッサ山とペリオン山を積み上げようとしていたんだ」
「ゼウス様に? 一体何の用なのかしら。オリュンポス山に山を重ねるなんて、まるで天界に通じる道でも作ろうとしているかのように聞こえますけれど」
「はっはっは! まさにその通り。これから俺たちの時代を作ろうかと思ってな!!」
「なんて不届きな! 品の欠けらも無い様なお前達がゼウス様に変わるですって? 冗談も程々になさい」
ワハハと大声で笑い合っていた2人は、底意地の悪そうな笑顔に変えて、その大きな顔をずいーっとこちらに近づけてきました。
「お前の方こそ口の利き方には気を付けるんだな。態度を改めればお前を俺の妻に迎えてやってもいいぜ? その綺麗な顔を捻り潰すのは惜しいってもんだ」
「何を言っ…………きゃあああぁぁぁっっ!!」
逃げる間もなくエピアルテスの巨大な手で鷲掴みにされ、持ち上げられてしまいました。
「おいおいエピアルテス、いくら美人だからってそいつはゼウスの使い古しだ。それならやっぱり処女神の方がいいだろ。例えばアルテミスなんて良いなぁ。俺はああ言う跳ねっ返りみたいなのが好きだ。絶対の貞潔を誓うあの女神を犯したら、どんな顔をするのか見てみたい」
なんて不埒な男でしょう!
アルテミスはゼウス様の愛人の子とは言え、今やオリュンポスの神に仲間入りした女神です。そんな事をしでかしたら最高女神としてただじゃおきません!
「いや、オートス。こいつは処女だ」
「何を馬鹿なこと言ってるんだ。ゼウスの子を3人産んでるんだぞ?」
「間違いない。ほれ、嗅いでみろ」
エピアルテスはオートスの顔の前に、つかんだわたくしを近づけました。するとオートスはわたくしの衣の裾をペロンと捲り、なんと股ぐらをクンクンと嗅ぐではありませんか!!
いやぁぁぁぁぁ!!! 気持ち悪いっっ!!!
こんな奴ら死罪です! 天誅を下してやる!!
と、もがきますが全くもって無意味。腕ごと鷲掴みにされた状態では身動きが取れません。
「本当だ。何で処女なんだ? まあいいか、これは喰いがいがあるなぁ」
「はなっ……離してっ……! わたくしが処女に戻ったのは、あなた達の様な輩の為なんかじゃありませんわっ!!」
「はっはっはっ! 未来の妃よ、さっきも言っただろう。口の利き方には気を付けろと。じゃないと優しくしてやることを忘れてしまうからなぁ」
「テピアルテスよ、優しくした所でサイズが違いすぎるだろ」
「ふっ、知らないのか? 神は不死の身だ。股が裂けたところで死にゃせん」
「そうだったな! わっはっはっはっ!」
下劣な会話に吐き気すらしてきます。それなのに抵抗する事すら出来ないなんて。
今度は木の幹に縄でぐるぐる巻きにされた挙句、口には小汚い布を突っ込まれて身動きが取れません。
「さぁて、ほいじゃあさっさとあのオリュンポス山に山を投げつけて、ゼウスの奴らを引っ張りだそうぜ。女は強い男が好きだろ? 夫が無様に堕ちていく所を見れば、お前も気が変わるだろうよ」
言い返してやりたいですが、出て来るのは「んー!んー!」と言う情けない音だけ。
のしのしと歩いて去って行こうとする2人を睨み付けるしか出来ないなんて……! 車を取りに行ったへべが、わたくしのことを見つけてくれるといいのですが。
2人の背中を睨み続けていると、茂みの奥から突然、サッと獣が横切りました。
「おいっ! なんだ今のは? 鹿か?」
「ああ、それも黄金に輝く毛並みをしていたぞ! 毛皮の服にするにはちと小さいが、敷物には良さそうだ! 狩るぞ!」
2人は背中にさしていた槍を手に持つと、ガサガサと音を立てている茂みに向かって狙いを定めています。
鹿は逃げ去って行ったのかと思えば、何故かまた茂みから姿を現し、二人の間をぴょんぴょんと跳ねるように走り回り始めました。
…………? こんな鹿、居るのでしょうか?




