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恋姫天衝 ~対極の御遣い~  作者: 雀護
・穎川~
18/44

其々の思い






 ++矛盾した現、才の都++






 「はぁ~」

 政務室で一人書類に目を通すも身が入らず溜め息ばかりが漏れる。


  ・・・憂鬱です


 彼がいなくなってから十日、今まで苦と思った事のない政務がとっても億劫だと感じている。

 真名を彼に預けた翌日、私にとっては都合の悪い事に先触れとして出していた兵士が帰還してしまった。

 けれど無事帰還した事を嘆くわけにも、それを彼に隠す事も出来ず、それを伝えると彼は次の日にはここから豫州へ向かってしまった。

 「あまり急いでいく事もないのでは?」と彼に聞けば「行くのが遅くなればその分戻りも遅くなってしまうかもしれない」と言われてしまった。

 そして続けて「途中で冬が訪れ足止めをされてしまうかもしれない」と言われてしまい渋々ながらそれに同意した。

 それに「必ず戻ってくるから」と笑顔で付け加えられてはそれ以上に言葉にすることは出来なかった。

 あの笑顔は反則だと思う。

 純真無垢とか、満面の笑み、というものではないけれどあの少しぎこちないながらもはにかむ様な笑顔は私の新たな弱点になってしまった。

 それから、その笑顔の彼の手が触れられた頬に手を当てる。

 目を閉じてそうするとあの時の感覚が蘇る気がする。 

  ・・・これは、もう・・・


 少しだけ心が温かくなって先程まで夜の闇のように落ち込んでいたそれに優しい月明かりが差し込んできた気持ちになる。

 小さな事からコツコツと彼との関係を進めるために決めていた事だけどそれを思えば今の関係は大前進なのだから一先ず満足していよう。

 「よしっ」

 そう思うと今目の前にある書類を片付ける事にする。

 小さな事を軽視して次に会う時に政務漬けになってしまっていると言うのは避けてるべきで、それが今私のするべき事と気持ちを引き締める。


  次に会う時にお茶が出来なくなるのは悲しすぎますよね


 「それにしても、粗相がなければいいのですが大丈夫でしょうか?」





 ・・・・・・



 ・・・・・・





 太陽がそろそろと南中を始める頃。

 二つの騎馬が豫州との州境に差し掛かっていた。

 一つの騎馬が先行するようにやや前を進みその後ろを大きな体躯の馬がやや不機嫌そうにゆっくりとした道程を進む。





 我が名は閻忠。

 安定郡が太守、皇甫義真様の親衛隊を努めている。

 だがその任を一時的に変更する事になった。

 義真様がこの任を信頼の出来る者にという事で志願した、親衛隊の誰もがこの任に興味を示していたが彼は私を指名した。

 それに対しては多少不服な部分はあるがそれでもこの任につくことは私も望んでいた。

 だが他の者が興味を示していたものとはやや私のそれは違う。

 確かに彼の武は惹かれるものがあった。

 立会いをした親衛隊の面々は彼を見かけては彼に助言や指導を求めた。

 一見面倒そうに答え無愛想に見えるが意外と面倒見は良くその都度応えてくれることが皆の中でも好感を得ていた。

 他にも共に過ごす時間の中でも彼の考えに驚かされる事が多かった。

 義真様が政務をしている傍らで文官が義真様に市を軸にした町の発展を提案したのを義真様がいくつか問題点をあげた。

 その後一応の承認を得て本案として議論にかけようとしようかと言う時、彼は「それならばもっと根本的な部分をしっかりさせたほうが良い」と苦言を呈したのだ。

 苦言を呈するだけならば並の文官でも簡単に出来る、だが彼は続けざまにその具体案まで提案した。

 文官の発案したものを否定するわけではなくそれに付け加える形でその場でより効率の良いものにしてしまった。

 皆一様にその言葉に驚いて静寂が訪れたのを今でも覚えている。

 まるで太守がもう一人いるのではないかと錯覚してしまうほど先を見据えた的確な内容だったと感じた。

 だが彼は我々が驚いている様に「出過ぎた事だったすまない」などと即座に頭を下げた。

 確かに提案したのは他の文官だがそれをより良いものにするという功績を挙げた。

 それであればどの文官であろうと頭を下げるような真似をすることはない。

 逆にふんぞり返り丸ごと自身の功績とするだろう。

 だが、彼はそれをしない。

 その姿は初めて見れば驚きと不審を抱くだろうが彼が訪れた初日の立会いの場にいた者は確信に変わっただろう。

 彼はそう言う人間なのだと。

 その時は私もその姿を見てさすがは西涼の馬騰様の弟なのだと感服するばかりだった。

 彼の人柄、武、知それはどれをとっても恥じることなくそれを公言するに足りる人物だと思う。

 それだけならば喜び勇んでこの任を拝命する事が出来た。

 私が不服と感じ、それでもこの任を望んだ理由は義真様に対している時の彼の姿が・・・気に入らないからだ。




 「閻忠、この速度で今日中に豫州につけるのか?」

 「問題ありません。先に見える大岩を超えれば豫州でそこから村が見えてくるはずです」

 唐突に投げかけられた質問に即座に反応して先にある岩を指差し彼の様子を伺う。

 距離は短里で二十は先にあるそれを彼は確認すると少し考える仕草を取る。

 「んん。そうか」

 何かに考えが至ったのか彼は彼の愛馬の首を数度軽く叩く。

 すると彼の意を汲み取ったのかその場で足を止めた。

 「どうかされましたか?なにか問題でも?」

 私に彼の思考を理解するだけの柔軟性はない。

 突然に歩みを止める理由がわからず私も馬を止めて振り返る。

 「あぁ問題はないが・・・ん?いや問題か」

 彼は何を言っているのだろうか。

 「すまないが先にある大岩には先に向かってくれるか」

 そう私に声をかけながら馬から降り立つ。

 この任は彼の護衛という意味も含まれている事から理由も分からずにそれを承服する事は出来ない。

 それを口にしようとする前に彼は私に答える。

 「昇竜がな、少し駆けたがっているから。あの大岩までなら俺を見失う事はないから良いだろ?」

 昇竜。そう呼ばれる彼の愛馬が駿馬であるのは重々承知している。

 そして彼が昇竜と意思を汲み取り会話出来る事も。

 普段であればこのような任務で彼から離れる事はたとえ対象の意思であろうと許されない。

 だが義真様より申し付けられている事もあり渋々ながら了解し止めていた馬を走らせる。

 彼との距離が離れながら一人愚痴るように呟く。


 「・・・まったく、何故、義真様はこれほどまで目をおかけになるのか」



 

 ・・・・・・


 ・・・・・・



 「ん~~。さてっと」

 大きく伸びをして腰を伸ばしてから少し固まってしまった身体を起こし閻忠が早足で遠ざかっていくのを確認する。

 「もう丸四日近くは走ってなかったからな」

 そういうと首で俺の肩口ぐいぐいと押し付ける。

 早く早く、と催促するようなそれを何度か撫でて宥める。

 「すまないな。もう少しだけ我慢だ」

 その仕草は西平にいた時と変わる様子はない。

 このやり取りをするとその度に翠達の顔が浮かんでくる、それは俺の中の普通になっていてその普通がちょっと嬉しかった。

 一頻り昇竜を撫で回した後、手を離して準備運動を始める。

 さっき閻忠の指した大岩を見て一度試してみたいと思っていたことを実行しようと思った。

 ある程度までは身体の成長してくれているがまだ基礎能力の上限を図りかねていた。

 しっかりと膝を曲げ、肘を伸ばし、腰を解してから首を回す。

 「あの岩まで競争しようか」

 準備運動を終えて昇竜の隣に並んで分かりやすいように目線の高さを合わせて指を指す。

 「俺に勝てたら今日は好きなものを用意する。俺が勝ったらしばらくはまた我慢だ」

 それを聞いた昇竜は大きく嘶き土を蹴り飛ばす。

 「くふっあははははは。俺も簡単には負けないからな」

 馬と人が競争するなど前にいた世界では考えもしない事だが今の俺ならもしかしたらとも思った。

 大岩までは目測で1.5キロか2キロ程度。

 今使える勁の総量と勁の使い方次第ではあの位の距離までなら良い勝負が出来るのでは、と算段を立てた。

 それに昇竜が背負っている大双剣はハンデだ。

 あんなものを背負って人を乗せて走ることが出来るのは昇竜くらいだと思う。


  良い天気で良い機会だ・・・


 「でもまぁ全力の全力じゃなきゃ無理だな」

 腰に挿した剣をしっかりと固定し直して気を引き締め、閻忠が向こうに着くまで昇竜と戯れながら時間を過ごす。

 「くくくくっ。それにしてもあいつの態度は分かり易すぎるな」

 と豆粒のようになった閻忠の背中を見ながら思う。

 彼を案内役になる時に後押しした事。


  ・・・本当に良い機会だ


 「さぁそろそろだな。行くぞ昇竜!」

 指を鳴らす。

 それを合図に昇竜と共にゴール目掛けて走り出す。

 


 ・・・



 ・・・・・・




 「はっ?!!!まさかあの方は馬と並走しているのか?!」

 とてつもない馬鹿がいる、言葉は悪いが咄嗟に頭に浮かんだものはそれだけだった。

 遠くから向かってくるそれらは猛烈な速度でこちらへと向かってくる。

 到底常識の範囲で収める事のなかった光景に思わず叫ぶように声が漏れた。


  走っている人が、馬と?!


 馬鹿げているが目に映る現実が自身の持つ常識を否定していく。

 ただ走っているだけではない。

 

  並走・・・いや、これは!!


 目を凝らせば更に常識が否定される。

 若干ながらも馬龍殿の方が前にいる。


  馬に・・・勝って?!


 「っ・・・・・・・・」

 口を空けたままその光景を眺める。

 端から見れば間抜けなのだが他の者が同じものを見れば皆間抜けになる。

 そして二つの影が大きくなるとはっと我に返る。

 二つだけの存在がまるで数千の軍隊の突撃だと錯覚するほどの圧力に身体が笑い出す。

 頭の中で大丈夫だと冷静を保とうとしても身体がその迫力に気圧されている。

 地面が揺れるのを馬上からも感じ取れた。

 ドドドドドッという土煙を上げながら地響きを伴って近づきもう幾つも数えぬうちに目の前に到達してしまう。

 そして地響きと自身の震えで馬から落ちないようにと手綱を強く握り締めようと気を取り直した瞬間、脇を暴風が駆け抜ける。

 「だぁぁ~っ」

 一瞬緩めた手綱が手から滑り落ち、馬上から地面に滑り落ちる。

 「ぐ・・・くっ」

 不意に転げ落ちたせいで身体から着地してしまう。

 地面から身体を起こすと駆け抜けていた風達の声が聞こえた。

 「はぁっはぁっはぁっ。くぅぅ負けたぁ~たははは、はぁっはぁっ」

 「ブルルゥ~」

 息を荒げながらも楽しげな声。

 そちらに顔を向ければ自身を馬上から転げ落とした風。

 馬龍殿と昇竜が寄り添いながらこちらにゆっくりと近づいてくる。

 「まだまだ勁を扱いきれてないな、やっぱり最後で乱れた。しょうがない今日は好きなもの・・・を?閻忠何をしてるんだ?」

 こちらの気も知らずか地面に座り込む形でいる私を見て疑問を口にされた。

 驚きで固まった私に対してあれほどの疾走をした直後だというのにすでに彼の呼吸は落ち着いていて手を差し伸べてくる。

 腰が抜けたということはないので自身の力で立ち上がる。

 「何をと?馬龍殿こそ何をしているのです?!」

 「何って・・・ん?あぁそうだな昇竜の不満解消とついでに鍛錬の延長のようなものだ。悪いな少し驚かせたか」

 悪びれることなくあっけらかんと彼は答える。

 「えぇ、少しではなく”かなり”ですが」

 少々の憤りを感じながら少し強めの口調になってしまった。

 仮にも義真様の客人である彼に対して無礼な態度であったことに幾ばくかの不安を覚えたが。

 「ははは、それはすまない。それであれが今日の目的地か?」

 だが彼はその事に関して特に気にせず逆に頭を下げてから先に見えてきた町を指す。

 その仕草はまるで友人に対して行うそれに似ていた。

 「はい、今日の宿泊の予定地であちらには義真様のお知り合いがおります」

 「えっと、なんてところだったか」

 「丁度あの町から豫州の穎川郡に入ります」

 穎川郡この旅の中で私でも興味が沸く地である。

 それはこの地は才の都とも呼ばれるほどに有能な傑物を輩出する事で知られている。

 武人として、官として、何かの才を磨くには事欠くことがないとまで言われる。

 そこは私のような親衛隊などでも興味をそそられる場所のひとつだと思っている。

 「ようやく穎川か。迂回したが予定通りに道程の半分は過ぎてくれたか」

 だが彼にとってはその対象外だった。

 ただ途中にある町と同じ。

 彼ほどの武を持ち知を知る者ならばこの地を知らないわけがないと思う。

 それでいて興味のない素振りでいる事に違和感を覚えた。


  本当に馬龍殿は不思議な人だ


 私は彼が気に入らない・・・だが確かに惹かれるものがある。

 だからより気に入らない。

 

  彼も・・・自身も・・・




 ・・・



 ・・・・・・




 町が見えてから少し足を早めて昼が過ぎた頃には町に入れた。

 「なんだか町って感じだな」

 「あの、申している意味がわかりませんが、町なのですから当たり前では?」

 独り言だったのだが閻忠がそれに答える。

 確かに町は町なのだが俺の知っている町に近いと感じたという事だ。

 西涼の町並みと安定でみた町並みを足した規模の大きな町だった。

 だが、ここに入った瞬間・・・いや、ここに近づくに連れてなにかの気配がする。

 杞憂だろうかと辺りを見渡しながら様子を伺う。

 だが、今は町だと感じる以上に何かを感じ取ることは出来ない。

 「・・・なにかあるのか」

 違和感は拭い取れない。


  天意の端でも踏んでいるのか


 未だ見えないその正体はもしかしたらと感じるがまだわからない。

 それ以上にこの違和感と感じる理由が見当がつかない。

 「なにかですか?」

 閻忠の不思議そうな声に思考を戻す。

 あまり探りすぎても着いたばかりではどうも出来ない。


  ・・・一先ずは楼杏の知り合いに会うか


 「少しだけここに興味が出てきただけだ。昼は後回しで一先ず皇甫嵩さんの知り合いのところへ行きたいな」

 「了解しました。宿泊場所はあちらで用意してくれるとの事ですし向かうとしましょう」



 ・・・

 

 ・・・



 「ようこそ穎川へ。わたくしは董君雅、字を孟高と申します」

 第一印象は優男というものを絵に描いたような男だった。

 整った顔立ちに文官風の服を身に纏ったこの董君雅という人物が楼杏の知り合いだった。

 「この度は義真殿からの紹介とのことで、どうぞごゆっくりしていってください」

 男は終始笑顔を俺に向けて挨拶を終える。

 少々男の名前に何かひっかるものを感じた。

 「急な来訪だと言うのに痛み入ります」

 一先ずと頭を下げて挨拶を返す。


  董君雅、聞き覚えがあるような・・・ないような


 この世界では背格好で俺の知る三国志の人物を当てる事は出来ない。

 気配、性格、どれをとっても実際の人物を知っているわけでもないし、そもそも性別に関してはもう当てにはならない。

 あまりこう考えを狭めてしまうのはよくないのだろう、思考をどちらに向けるかと思いながら男を見つめる。


  ふむ。一先ずは・・・・・・


 董君雅と閻忠を目で交互に確認する。

 「着いて早々で申し訳ないが愛馬を休ませたいのですが・・・」

 「あっ。そうですね申し訳ありません。少々手狭ですが裏手に馬小屋がありますのでご案内いたします」




 「馬龍殿、馬龍殿」

 昇竜を何度か宥めた後馬小屋を出ようとする時に閻忠が小声で俺を呼ぶ。

 「どうした?二度言わなくても聞こえているが」

 「いえ、あの、大した事ではないのですが・・・」

 呼びかけてきたくせに何故だか言い淀む閻忠に眉をひそめる。

 閻忠の視線は先に行く董君雅に向けられている。

 それからその理由を聞かされた。

 「なぜあのような小役人に頭を下げるのです」

 その一言で成程と理解した。


  確かに紫庵が以前に言っていた通りか


 確執と言うべきか必要以上の肩書きはやりにくさと言うものは存在してしまう。

 「必要だから頭を下げる。身分がどうであれ俺はそうするべきと思うが」

 今そんなことで態度を変えるなどつまらない。

 見す見す手に入る情報を破棄するに等しい。

 それに俺の姉ならばそんなことをしない。

 利で考えても個の意思であっても意味のない確執に付き合う道理はない。

 「閻忠、お前は何のためにそれを聞く」

 そう答えの後に付け加えると閻忠は苦々しく表情を変える。

 一人旅と違ってそれなりに楽も出来るが面倒も増える。

 「はぁぁ、まっどうでもいいな」

 いくつかの面倒事は目をつぶらなくてはいけない、一つ一つに説明を求めていてはその倍は面倒になる。

 これも俺が引き受けた事だと閻忠にひとつだけ忠告しておく。

 「俺と一緒にいる間はあまりくだらない偏見に囚われていると置いて行くことになる」

 「・・・了解しました」

 かすかに頭を下げて呟くように答え傍から離れる。

 閻忠がこの旅に同行している理由は理解している。

 そしてそれを知って尚、同行させる理由もある。

 「あのぉ、どうかされましたか?ご案内したい珍しい料理を出す飯店があるのですが・・・」

 と小屋の外から董君雅の声。

 「珍しい料理ですか、それは是非お願いしたい」


  こいつが保険としてそれを託せるのか見極めたいが・・・まだ時間が必要みたいだな


 後ろ目で俺の後ろを歩く閻忠を確認しながら小屋を後にした。


 

 ・・・


 ・・・



 「いらっしゃぁい~」

 面倒事というのは得てして一辺にやってくるものだ。

 少々イラッとするイントネーションのそれを発する人物、それは間違いなく俺にとっては面倒事の塊にしか見えない。

 「三人なのですが座れますか?」

 「三名様ごあんな~い」

 そんな俺の事情は知らない董君雅は先導するよう店の中に進んでいく。


  さぁどうするかな・・・


 1.攻撃   『鉄拳制裁』

 2.口撃   『ツッコむ』

 3.防御   『無視する』

 4.仲間を呼ぶ『閻忠に任せる』

 5.逃走   『次の町へ』


  とりあえず選択肢はこんなところか


 一先ずは消去法で無視を決め込んでみる。

 問題の人物の横を何食わぬ顔で通り過ぎて奥の席に座る。

 「董君雅殿、珍しい料理というのは?」

 「それはですね。叫化鶏と言いまして別名は少々あれなのですが乞食鳥といわれるもので・・・」

 その名前を聞いて少々驚いた。

 未だこの世界と以前の歴史のズレている部分、その法則は理解できそうにない。

 「乞食?!そんなものを我々に食べさせるのですか」

 「閻忠うるさいぞ。あれが俺の知っているものならお前今の一言を後悔することになるぞ」

 「もしや馬龍様はご存知でしたか。いやぁ様々な料理に精通しているという噂はその通りのようですね」

 気にしないようにと何という事のない会話をする。

 そんな会話ながらも乞食鳥を出している店がここにあるとは中々興味をそそられる。

 実際に食べた事はないがその成り立ちというのは聞いた事がある。


 名前の由来通り昔・・・

 

 「やぁ、またお客さんになってくれたね」

 

 俺のいた世界では昔、物乞いの小僧が近くの鶏を盗みだし逃げていたがその途中捕まりそうになり地面の中にその鳥をお、


 「お~い」

 

 大きな葉で包み隠した。

 なんとか日が暮れるころまで逃げ延びて隠していた辺りに戻ってくるとそこには、さ、


 「ねぇ?ねぇってば?」

 

 山賊が焚き火を炊いていた。

 小僧はそこに出て行って鳥を回収するわけには行かず物陰に隠れて山賊がいなくなるのを待ってからそれを掘り出した。

 すると、丁度焚き火の下になっていたところにあった鳥は程よく火が通りそれは大層美味かっ、


 「もしも~し?」

 

 た・・・という。

 いうなれば素材を直火に当てることなく焼き上げる。

 蒸し焼きと近い調理法は魚など塩窯焼きに似ているがそれともまた違ったみりょ、

 

 「くぉのぉ~」


 魅力があぁぁぁぁぁっ!!



 こちらが無視していたと言うのにお構いなしと勝手に俺の右腕を振りまわらす。

 バカみたいに振り回される腕は脱臼しかねない。

 「程銀!人の思考を邪魔するな!」

 それを振りほどいてそちらへ向き直る。

 そこにいるのは・・・思い出したくはないが色々と面倒事を残して去っていた程銀がいた。

 なにやら膨れっ面で俺を睨んでいるが睨まれる謂れはない。

 「んで、なんの用だ」

 「ふん、無視してたくせに~偉そうだぞ馬龍。あたしにはあたしの”事情”があるんだよ」

 膨れていた風船から空気を抜くように鼻をならす。

 両手を腰に当てて俺の問いに答えるつもりはないと顔を背ける。

 「事情、ね・・・」

 もうこれだけ俺に姿を晒していれば事情などおおよその見当はついてしまうのだがそれも『事情』の一言を盾にして自身で口にすることはない。

 確認というか確証を得てしまいたいが得てしまうと必要のないものまでおまけされるかもしれない。

 視野はまだ広くしておかないと目的を見失ってしまう危険性がある。

 「事情はいいがなんでまた給仕をしてるんだ?好きだな給仕」

 「好きでやってるんじゃないやい。馬龍と違ってこっちは懐が寂しいんだよぉぉぉ」

 皮肉を口にしながら切実な涙を垂れ流す。


  怒ったり泣いたり忙しい奴だ

 

 俺だって豪遊しながら旅をしているわけではない。

 行く道で狩りや山菜を取っている日もあるし、宿を取らずに野宿する日だってある。

 ここでだって楼杏の伝でこうして董君雅のところにやっかいになっている、と自身の思考の中で場の状況を再確認してそちらの様子を伺うと困惑顔がふたつ。

 「あのぉ馬龍様。そちらの給仕の方とはお知り合いで?」

 「いえ、友人でもなければ知人でもありません。ただ顔を知ってるだけです」

 当然の質問だが改めて程銀との関係を答えるのは難しい。

 「ひどいな馬龍は。あたしの真名だって知ってるくせにぃぃ」

 「馬龍殿!!義真様の他に真名を受け取った女性がいると言うのですか?!!」

 興奮した閻忠が机を叩き壊す勢いで手を着き椅子を蹴り倒して立ち上がる。

 「さぁ?なんだったかな聞いた気はするが忘れた。俺はこいつの真名は預かったつもりはないからな」

 相手が火なら俺は水になる。

 閻忠の怒りをしれっと流す。

 「馬龍!それはほんとにひどいと思うよ」

 流したと思えば涙を流しての程銀の抗議。

 水が流れるのであれば土に返す。

 貸していたものを返してもらう。

 「酷くて結構だ。お前は俺に借りがあるだろ、それを流してやるから給仕はさっさと仕事に戻れ」

 そういうと理解していたのか渋々と俺達の机から離れて仕事に戻る。

 あいつは大なり小なりと貸しがある。

 以前の店では俺の名前を勝手に使った事。

 楼杏の屋敷で派手に立ち会ったのをなんのお咎めなしだった事。

 程銀が悠々と安定を出れたのは俺が色々と取り繕っていたからだ。

 こんな事で使ってしまうのではこちらの利が全くといってない、だが董君雅と閻忠のいる手前あまり程銀とこれ以上のやり取りはしたくなかった。

 視野を一方向に向けてしまうのは危険、視野の中にいてくれるのであればこちらが後手に回る可能性は低くなる、それだけで利があると妥協した。

 「顔を知っているというだけにしては随分と親しげでしたね」

 突然の第三者からの感想に驚かされた。

 ようやくと土台が元に戻ったと言うのに会話を再開する事が出来ず黙する事になった。

 「あのように会話が出来るとはなんともはや羨ましい限りです」

 「あのようにとは?私にはただ馬龍殿があの女性を酷くあしらっていたように見えましたが」

 黙していた俺の代わりに閻忠が口を開く。


  お前の言い方も随分酷いが、否定は出来ないな


 特別そうしているわけでもないが自然と程銀と話すと少々冷たい態度を取りたくなってしまう。

 「えぇ、だから羨ましいと思えたのです。わたくしは役人などという職業上あまり対等に話せる友人と言うのものを持つ事が出来ませんでした。あのような口を開けば周りにはわたくしを蹴落とす良い材料。ですからわたくしもわたくしに対する人間も敬語ばかりで・・・」

 「そうでしたか。確かに屋敷に詰めている文官達が馬龍殿のような口調をする所を見た事がありませんね」

 なんだか普段からずっと粗暴な口調だと思われるのは見過ごせない。

 「時と場所を選んでいるだけだ。それでは俺が礼を知らないように聞こえるが?」

 「時と、場所ですか。確かに選ばれていますね。ですが選んでいる時点で礼を知らないといえると思います。こちらの董君雅殿はそれをせずにいるのですよ」

 「閻忠、お前ここに来てから俺に対して遠慮がなくなってきてないか?」

 「気のせいでは?」 

 「お前なぁ・・・」

 と、なんとか反論を口にしようとしたところ董君雅の笑い声が遮る。

 「くっくくく。あっいえ、すみません。ですがやはり羨ましい。馬龍様わたくしにもお二人と同じように話していただけませんか」

 「同じように、ですか?」

 「はい、敬語など使わず。お願いできませんか?」

 そう言われ良いものなのだろうかと閻忠に目で確認をしてみる。

 「馬龍殿の好きにされるのが良いと思います。ただ私は馬龍殿に敬語で話されるよりも自然な話言葉でいてくれた方が楽だと感じます」

 俺の敬語はそれほど不自然だろうか。

 紅姉さんにも楼杏にも敬語を使わないで欲しいと言われた。


  なんだかちょっと凹むぞ・・・


 「・・・わかった。実際俺もそちらの方が楽だし董君雅殿が良いというなら敬語はやめにしよう」

 敬語でしゃべると言うのも少々窮屈ではあったが、それなりに言葉を選んでいると余裕と言うものがない気もしていた。

 「えぇっとその呼び方も出来れば・・・」

 「呼び方?」

 「殿は要りません。そのよろしければ好きなように呼んで欲しいのです」

 好きなようにと言われてもどうしたらいいものかとこめかみを掻きながら考える。

 「あの出会って間もありません真名を預け合うという事もできないでしょう。ですから友人のように愛称などつけていただけると嬉しいのですが・・・・・・」

 そう俺に照れ笑いを浮かべる。

 「あ、愛称ですか」

 「馬龍殿、敬語になってます。董君雅殿の願いを反故にするのですか?」

 「ぐっ、閻忠あんまり俺を虐めるな」

 つい敬語で答えてしまったのを閻忠が言及してくる。

 中々手厳しい相手だと思ってはいたが閻忠に対して少々余計な言葉を教えてしまったのかもしれない。

 少しそれを反省しつつ思考を切り替えて愛称を考えてみる。


  愛称、愛称ぅぅ。董君雅だから董君?だと雅をとっただけだ


 「んん~・・・・・・・」

 うなり声を上げながら頭の中をかき混ぜる。

 愛称なんて誰かにつけたことというのは難しいもの。

 身体的特徴とか性格とかなにかきっかけがあれば思いつくかもしれないとちらりと董君雅の方を見るが、期待に満ちた少年のような瞳で見返される。


  うぐっ。そんな目で見ないでくれ

 

 眩しいまでに無垢な感情が伝わって来て少々やりづらい。

 一先ずの特徴と言えば、色白で髪の色はやや薄い紫。中性的な顔立ちと細めの身体。


  もやしっ子とか呼んだら・・・だめだよな


 普段思考しているのとは違った方向で頭を使わねばならない。

 頭から煙が出ているのではと思える程に思考は高速で空転し続ける。

 「んっ?!」

 と、不意に何か降りてきた。

 だが、そもそもこの世界での愛称とはどういったものなのかと我に返った。

 「お決まりになりましたか?!」

 期待が溢れて弾けた笑顔によほど俺達のやり取りが羨ましかったのかと実感してしまえた。

 だがそれを見るとよりハードルが上がっているようで言葉にするのは少々気が引けた。

 「いや、だがなぁ、やはり董君雅と呼ぶのは・・・」

 「馬龍殿、勿体つけているのでしょうか?」

 閻忠が逃げ道を塞いでいる。

 これはボス戦なのだろうか、逃げるという選択肢は封じられているようだった。

 「はぁもうわかった」

 観念した。

 これ以上閻忠を優位に立たせているのも癪だったのもあるが踏み出してしまえば怖いものなどない・・・はず。

 「・・・董々、というのはどうだろうか」

 「董々・・・それがわたくしの愛称ですか。なんと良い響きでしょう。馬龍様有り難うございます」

 董君雅の様子を伺っていると喜んでくれたようでほっと胸をなでおろす。

 不満を口にされなければいいだろうと思っていた反面こうも喜ばれると気恥ずかしさの方が先にたつ。

 この世界ではまだないから大丈夫だろうが、改めて思うと俺のイメージでは大手便器メーカーのような響きだというのは伏せておく。

 「よ、喜んでくれたのであれば、董々でいいか」

 「はい!!」

 なんとなくこの董君雅という人物は並みの感性の持ち主ではないのではないのだろうと確信した。

 他の役人が出会って間のない人間に愛称などを付けさせるなど有り得ないし、それ以前に楼杏に聞いた話では昇進の話を何度か蹴って小役人に納まっているといっていた。


 多少の警戒は必要なのだけれど、あんな笑顔を見せられては中々・・・


 人生思ったようにはいかないのだと何度目になるかわからない結論が頭の中を過ぎると目の前に何かが横切る。

 それは鳥の乗った大皿。

 「はい、お待ち」

 「俺たちはまだ注文してなければ採譜も見てないんだが」

 皿を運んできた給仕に文句を言うがお構いなしに次々と皿を並べ始める。

 「料理が大好きな馬龍がこの店に来たって事は”乞食鳥”が目当てだよね」

 相変わらず変な給仕をしてる。

 「にひひっ。他にはこの店のお勧め。安定のお店よりずっと美味しいから安心していいよ」

 「もうあの店はお前の知っている店じゃない。次に店主の料理を食べたら舌が飛び出す事になるから謝罪する覚悟をしておけな」

 「あははっ、それは楽しそうだね。覚悟しとく」

 そう言いながら料理を並べ終えると程銀が隣の椅子を引いて座る。

 「・・・何故座る」

 「ん?料理を食べるから?立ったまま食べるのは疲れるよ」

 前提からして間違っている。

 給仕が客と一緒に料理を食べるのはおかしい。

 「程銀、殿は給仕をされているのでしょう。馬龍殿はそれを言っているのですよ」

 「ん?あぁ、よっと」

 閻忠が俺の言いたいことを代わりに指摘してくれると程銀は自身のしていた前掛けをひょいっと取り去る。

 「ちょ、お前、まさかまた・・・」

 「うん。辞めてきた」

 余りに思い切りがよすぎる程銀の行動力に眉間を抑える。

 「はぁぁ、だとしてもだ。同席するのを許してはいないぞ」

 「えぇぇぇぇ、椅子だってまだ二つも空いてるしせっかく馬龍の名前を使ってやめてきたのに」


  使うな!!


 怒りは心の中で木霊したが冷静を装ってから程銀をあしらうことにした。

 「今入ってきたばかりの俺の名前を使ってどうする。・・・それに今日は董々と話もしたいし他所にいけ」

 「別に馬龍達が話してるの邪魔しないからぁ。馬龍、閻忠さん、董々お願~い」

 様々に両手を合わせて俺達に頼み込む程銀。

 色々と言いたい事はあるが俺が呼び捨てにされているのはもう慣れたが、閻忠には”さん”が付くのは少し棘を感じている所為だろう、だが董々をいきなり愛称のままに呼ぶというのは失礼だと思うが。

 「わたくしは構いません。女性が増えると言うのは場が華やかになりますし、賑やかしい食事と言うのは好きですから」

 「私も宜しいのではないかと、個人的に程銀殿と馬龍殿の関係を知りたいですし」

 まさかの閻忠の裏切りで賛成3の反対1。

 わざわざ借りを流してまで追い払ったと言うのに程銀の行動力を侮っていた、前の店の顛末を鑑みればこうなる可能性もあった。

 仕方なしと溜め息をもらす。

 彼女の”事情”というものを公にしないのであればこの場であれば問題はないだろうそう希望的観測をする事にした。

 「わかったよ。好きにしろ」

 「にひひっ、またあたしの勝ちぃ」

 そう言って笑顔で俺にVサインを作る。

 怒りなどを通り越して呆れてしまう。

 「久々に楽しい食事になりそうで嬉しい限りです」

 だが程銀の笑顔は伝染し董々は満面の笑みを浮かべ。

 「馬龍殿の色々な面が見れそうで私も楽しみです」

 閻忠もそれに釣られてるかのように含みのある笑顔を浮かべる。

 俺は俺で苦笑いを浮かべながら目の前を皿を眺める。






 これほどまでに様々な笑顔が溢れる食卓は後にも先にもこれが最後になるとも知らず。






 ・・・



 ・・・・・・





 「・・・・・・それでね、馬龍は『俺の方が美味い料理が作れる~』なんて言うから、あたしは泣く泣く進行役をして」

 「相変わらず、というべきか剛毅な事を言いますね」

 「言っていない。勝手にこいつがそう店主を煽ったんだ。それにこいつは泣く泣くどころか嬉々としてやっていた」

 他愛のない話。

 閻忠に程銀との出会いを聞かれ俺はうやむやにしてしまおうとしたが程銀は気にせずに話し始めた。

 かなり誇張し、改変されているそれを俺は訂正する。

 だが、その様子も含めて董々も閻忠も興味深げに聞くので料理に集中する事が出来ず多少の不満はあったが、悪いものでもないとほんの少しだけ感じてしまっていた。

 「それでどうなったのです?」

 「馬龍は『負けたら地面に両手をつけて町中を回ってやる』って」

 「・・・・・・」

 「訂正されないという事は言ったのですね」

 言った。こう改めて話されると幼少期の黒歴史を覗かれているようだ

 「くくくくっ。それは凄い。是非機会があればとわたくしも食してみたいと思ってしまいます」

 「だよね。だからあたしも馬龍の料理気になって」

 完全に主導権を程銀に握られて董々と話をする事ができない。

 と、不意に視界にこちらに歩いてくる少女の姿が目に入った。

 他の給仕が追加の注文でも取りに来たのだろうかと思ったが店の前掛けもつけていないので違うと分かった。

 「あのぉ、とうさま」

 声を掛けられたのは董々。

 董様という事は役所で働く一人だろうかと二人を見比べる。

 役人と言うのは若いと感じるしどちらかと言うなら翠よりやや歳上くらいに感じる。

 だが気の弱そうな呼びかけとその肌の白さがより幼さを感じさせる。

 「食事中失礼します、孟高様」

 ともう一人その後ろから顔を出す。

 最初に声をかけてきた娘とは対照的に利発的な娘だ。

 緑色の髪を左右に分けて眼鏡を煌かせる。


  この世界の人は妙に髪の色が鮮やかな気はしていたが・・・これは現状を解くヒントになるのか?


 「仲穎に文和さん、良いところに来ました」

 「可愛らしい子だね。董々の子?」

 冗談と分かりきった口調で程銀が言う。

 董々の見た目からしてあれだけ大きな子がいるわけない。

 だが・・・改めてみれば色の白い子のほうは髪の色も肌の色も似ている気がしてきた。


  あれ・・・?まさか・・・?


 「はい。仲穎はわたくしの子です。それでこちらの文和さんは仲穎の補佐をしてくれています」

 「えっ?ほんとに?!たはは、馬龍当たっちゃったよ、どうしよ」

 「いや、どうする必要もないが・・・」

 なぜか恥ずかしげに笑いながら俺に答えを求めるが俺もそれに答えることは出来そうにない。

 見れば閻忠も驚いているようだった。

 それほどまでに董々の姿からは想像が出来なかった。

 とりあえずは気を取り直して挨拶をする。

 「えぇっと、俺の名前は馬龍、字は雲成。姉は西平が太守、馬騰という」

 「私は安定郡太守、皇甫義真様の臣。閻忠と申します」

 「あたしは程銀」

 俺の挨拶に閻忠、程銀と続く。

 子供相手だというのに敬語のままの閻忠と対照的に誰に対しても変わらない挨拶の程銀は字すら言わない。

 「僕は賈ク、字は文和」

 「へぅぅ、あの・・・私は董卓、字は仲穎です」

 その名乗りを聞いて思考が吹き飛ぶ。

 董々に子供がいたという衝撃はあったがそれ以上の衝撃だった。


  董卓・・・と言ったのか?この気の弱そうな子があの”暴虐”だと・・・


 「董卓ちゃんに賈クちゃんだね。いやぁ二人とも可愛いね、二人も一緒にご飯食べようよ、って馬龍どうしたの?」

 「いや、問題ない。董々の子なら歓迎する。どこぞの元給仕とは違ってな」

 そう了承をすると一先ずと二人は席に座る。

 思考が混乱の兆しを見せているところに程銀とのこのやり取りは助け舟に感じた。

 多少乱れはするがそれでも思考が止めずに済む。

 改めて董卓を見る。

 見る限りでは普通の娘だった。

 正史で聞いた武力があるのなら気配はあるだろうし、席まで着く流れは礼儀正しく三国志で聞く暴君振りの一端も鑑みることはできない。


  まだほんの一瞬だから秘匿している可能性も充分あるがそれでも、想像ができないな


 思考をかき混ぜ想像していると頭の中にチクリという痛みと共にゴロゴロという異物が入り込んだような心地の悪い違和感に反射で眉を顰めた。

 「馬龍殿、どうかされましたか?」

 「いや・・・なんでも・・・。っ!」 

 頭が痛む。

 董卓と名乗る少女の顔を見るとその名前を浮かべるごとに痛みが増していく。


  っなんだ・・・これは。



  なんで痛みがっ・・・考えることが・・・



 思考を痛覚が邪魔をする。

 これは俺の求める解に関わっているそれだけは確信できたがそれ以上に思考がまとまらない。




  董卓・・・この少女が解を持っている・・・





  いや・・・








  董、卓は・・・暴君と呼ばれ・・・董卓は・・・

 

 


 

 思考が何かに書き換えられていく。

 自身が考えるべきこととは違う方向へ。 






 



  董卓。・・・董卓を・・・せ













  董卓を・・・






  


  ・・・殺せ







 金色に光る瞳が少女を捉えていた。









NextSceen

++才ありし軍師と、催の猛将++



言い訳の出来ないです。

でも謝罪含め言い訳をさせていただきますと

更新が予定よりも遅くなりました。


書く時間があまりないのは前々から分かっていたのですがそれに輪をかけてせっかくの休日に風邪を引きました。

しかもしつこいです。未だ鼻が崩壊した名残を残しています。

少しずつ執筆を再開していますのでお許しください。



とりあえず、ですが本編のほうの言い訳も少し

閻忠と董君雅、董卓さんに賈クさんの登場回になります。

閻忠の目的、董君雅の人柄というのが少しだけでもかけていればいいなというところです。

これから少しだけ穎川で話がありますしもう少し登場人物が増えますので一話で出しておかないと大変なことになってしまうので今回四人出てきてもらいました。


蛇足と補足。

えぇっとこれは活動報告で書こうと思いましたが活動報告がまとまらないのでここにちょっとだけかいておきます。

董卓さんの字”仲穎”の穎は穎川郡の穎から来ているらしいです。

なんでも父が穎川郡に赴任できたのが嬉しくてそうつけたとの事。

以上蛇足のような補足のような話でした。



風邪にも負けずノロウィルスにも負けず、

作者はそんな人になりたい。

体調管理は大切です。手洗いうがいをしながら次話です。




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