済 第72話 最終回?! 日本惚れ惚れ!
翌朝――。
精神と時の空間・食堂。
「……あー、昨日は楽しかったなぁ。」
ウニクロの黒いワイシャツ姿。
少し無精髭の伸びた深雪は、大きなDASASOのラーメン丼へコヌトコで買ってきたサトウのごはんを入れる。
「昨日、日本で遊びすぎたせいじゃな」
ユリウス。
「完全に日本ロスね。」
ミカエラが溜息をつくと。
食堂中に溜息をつく者が現れた。
レオンが雷魔法で沸かしたお湯をマグカップへ注ぎ、さらに魔力で保温する。
深雪はその熱湯を、お茶漬けへ豪快に掛けた。
さらさらさら――。
「……最高。」
柴漬けを一枚。
ぽりっ。
「この柴漬けが合うんだよなぁ。」
幸せそうに頬張る。
隣ではレオンが、パンダから分けてもらった刺身盛り合わせをご飯と一緒に食べていた。
「深雪、お湯こっちにも少しくれ。あさげが飲みたい」
「いいぞー。」
深雪は笑う。
「レオンが雷魔法で沸かしたお湯なんだから、いくらでも使えよ。」
「魔力って便利だよなぁ。」
「俺も自由に使えたら良かったのに。」
お茶漬けをかき込みながらため息をつく。
「俺が使える魔力なんて、魅了と治療だけ。」
「つまんねぇ。」
「レオンみたいに、お湯沸かしたり、テレビ付けたり、スマホ充電したり、電気自動車動かしたり、空飛んだり出来たら楽しそうなのになぁ。」
レオンが笑う。
「十分すごい能力だと思うけどな。」
「いやいや、羨ましいって。」
二人は笑い合った。
⸻
「深雪も食べていいよ。」
パンダが刺身の盛り合わせを差し出す。
「修行、大変でしょ?」
「また日本へ買いに行けるし。」
レオンも頷く。
「遠慮するな。」
「いっぱいある。」
深雪は目を輝かせた。
「いいのか?」
「やっぱお前達優しいなぁ。」
イカそうめんを口へ運ぶ。
「うめぇ!」
「これ反則だろ!」
⸻
その様子を見ていた魔王真央が笑う。
「そうよね、深雪。」
「修行なんかより、買い物して、美味しい物を食べてる方が楽しいわよね。」
「本当に。」
ポルガンも大きく頷く。
「戦争とか呪いの処理なんて、馬鹿みたいですよね。」
「すっかり秋めいてきましたし。」
パンダも笑った。
「日本は桜と紅葉が綺麗なんだにゃ。」
「みんなにも見せてあげたいにゃ。」
レオンが刺身を口へ運ぶ。
「春は桜。」
「夏は向日葵。」
「秋は紅葉。」
「冬は雪景色。」
「日本って、本当にいい国だよな。」
食堂にいた全員が、
「はぁ……。」
幸せそうにため息をついた。
「美味しい……。」
「幸せだなぁ……。」
⸻
ミカエラがぽつりと言う。
「もう修行なんて、やめちゃいましょうか。」
「うん、そうじゃな。」
ユリウスも頷く。
「わし、酒しか買ってこんかったが……。」
「朝から飲もうかの。」
その瞬間。
プシュッ。
缶ビールを開ける音が食堂へ響く。
全員の視線が一斉に向く。
レオンだった。
「ユリジジイも飲んじゃえばいいじゃん。」
「刺身も食ってみろよ。」
深雪が笑う。
「朝からビールかよ!」
「完全に休日モード入ってるじゃねぇか!」
「俺にも一本くれ!」
「ほら。」
レオンが魔法でキンキンに冷やした後、一本投げる。
「ありがと!」
深雪は受け取ると、
プシュッ。
豪快に開けた。
ユリウスが恐る恐る言う。
「生魚など食べて腹は壊さんのか?」
深雪は笑う。
「日本の刺身は新鮮なんだ。」
「千回食って一回あるかないかだよ。」
「そうか。」
ユリウスも笑顔になった。
「なら、わしにもビールとやらを一本くれんか。」
「刺身も頂こう。」
「ほら、ユリジジイ。」
レオンが冷えた缶ビールを渡す。
「すまんの。」
⸻
「パンダも食べるにゃ。」
「ちょっとお刺身盛りすぎたにゃ。」
「リアもナルも食べるにゃ。」
「わーい!」
リアはイクラを見つけて大喜び。
「イクラだー!」
一方ナルは顔をしかめる。
「ウニきらーい。」
「ナル、お菓子食べる!」
「ははは!」
レオンが笑った。
⸻
しばらく静かな朝食が続いたあと。
レオンがぼそりと言う。
「……なぁ。」
「もう戦いなんかやめてさ。」
「みんなで日本へ移住しちゃわない?」
「「おおー!」」
全員が拍手した。
ミカエラも立ち上がる。
「では修行も終わりにしましょう!」
さらに拍手。
パンダまで立ち上がった。
「リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画。」
「もう必要ないにゃ!」
「みんな日本に住めばいいにゃ!」
大拍手。
魔王真央が微笑む。
「じゃあ、この小説も今日で最終回なのね。」
「この作品でポルガンに出会えて、本当に幸せだったわ。」
ポルガンも目を潤ませる。
「俺もです。」
「真央さん。」
食堂が静まり返る。
感動の空気。
パンダが前へ出た。
「それでは。」
「応援してくださった読者の皆さん。」
「ありがとうございましたにゃ。」
全員が深く頭を下げる。
「ありがとうございました!」
⸻
リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画
完結
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とことこ、とことこ。
廊下の向こうから、小さな足音が近づいてくる。
その手には――
DASASOのハリセン。
「……。」
高橋だった。
「パシーン!!」
まずレオン。
「痛っ!」
「パシーン!!」
深雪。
「いてぇ!」
「パシーン!!」
ミカエラ。
「きゃっ!」
「パシーン!!」
ユリウス。
「ぶほっ!」
「パシーン! パシーン!」
ポルガン。
真央。
パンダ。
次々と叩かれていく。
高橋は腰へ手を当てた。
「皆さん。」
「何を勝手に最終回にしてるんですか。」
「リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画。」
「まだ終わってません。」
「修行、再開です。」
食堂が静まり返る。
「……。」
「……。」
「……。」
レオンが肩を落とした。
「仕方ない。」
「働くかぁ……。」
全員が、夏休み明けのゾンビのようにのそのそと食器を片付け始める。
深雪も立ち上がり、大きく伸びをした。
「あー。」
「休みの後って、なんでこんな怠いんだよ。」
「俺、またあの踊り子の服着なきゃ駄目?」
高橋は真顔で答えた。
「いいえ。」
深雪の目が輝く。
「本当!?」
「その前に。」
「髭を剃ってください。」
「俺は、かっこいい三角ディレクターが見たいんです。」
深雪は苦笑いした。
「……なんだよ、それぇ。」
食堂に笑い声が響き、長かった休日は終わりを迎えた。
日本 惚れ惚れにゃー
パンダ




