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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


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済 第73話 修行だ!④ 花火



精神と時の空間・休憩施設。


外はすっかり夜だった。


窓の向こうには星空が広がり、その下には、屋根を大きく開放した巨大訓練施設――時のアリーナが見える。


休憩室のテーブルにはiPadが置かれ、画面の中には魔王城にいる魔王の姿が映っていた。


「法王様から、気になるメールが届いたのだが。婿殿、身体の調子はどうだ?」


「ええ。魔王様、今のところは問題ありません」


ポルガンはそう答えると、自分の胸元へ手を当てた。


身体の奥に刻まれた呪い。


普段なら、二十歳の誕生日へ近付くたび、少しずつ呪いが強まっていることを感じられる。


しかし、精神と時の空間へ入ってから、その感覚に変化が起きていた。


「気付いたことがあるのですが、この空間にいる間は、呪いのカウントが止まっているようです」


「止まっている?」


「はい。こちらでは何日も過ごしているのに、呪いが進行している感覚がありません。この空間そのものの力なのでしょうか?」


ポルガンは、iPadの中の魔王を見つめながら答えた。


その隣に座っていた真央が、ぱっと表情を明るくする。


「じゃあ、パパもこの空間で暮らせば、黒い薔薇の呪いのカウントが止まるのかもしれないわ!」


魔王は、静かに首を横へ振った。


「真央。気持ちは分かる。しかし、この空間だけで生き続けることはできない」


「パパ、どうしてなの?」


「精神と時の空間は、外の世界に支えられて存在している法王が作っている、魔法空間だ。もし外の世界が滅びれば、制作者の法王の魔力も尽きる。」


「そうなれば、この空間も一緒に消えてしまう。もともと空間を作れる期間は地上時間の二ヶ月で限界らしい。」


真央の笑顔が消える。


休憩室の空気が静まり返った。


ポルガンは俯きかけた顔を上げた。


「やはり、逃げ続けることは解決にならないんですね。外の世界の呪いそのものを、何とかしないといけないんだ」


「ああ」


魔王は短く答えた。


「分かりました。では魔王様、昨日は鈍器ホーテのお会計をしてくださり、ありがとうございました。こちらからの通信を切ります」


ポルガンがiPadへ手を伸ばす。


「待って、ポルガン!」


真央が慌てて、その腕を掴んだ。


「まだ切らないで」


真央は椅子を寄せると、iPadの画面へ顔を近付ける。


「パパ。私たち、頑張るから。パパも頑張ってね」


「分かっている」


「みんな、パパが鈍器ホーテのお買い物のお金を払ってくれて、喜んでたよ」


「そうか」


「それとね……真央は、パパのこと尊敬してるから」


魔王の表情が、僅かに緩んだ。


「ふむ。テレビで皆が買い物をしているところも見ていたぞ」


「見てたの?」


「ああ。わしも、楽しかった東京視察を思い出した。日本は素晴らしい国だな」


「今度は一緒に行こうね」


「プロメテーウス様を救うことができたらな。その時は、日本人にも我々の世界の良さを見てもらおう」


「うん!」


真央は嬉しそうに頷いた。


「では、今度こそ通信を切るぞ」


「パパ、おやすみなさい」


「おやすみ、真央。婿殿も、娘を頼んだぞ」


「はい。お任せください」


ポルガンが頭を下げる。


iPadの画面から魔王の姿が消えた。


真央とポルガンは、しばらく何も言わず、暗くなった画面を見つめていた。


やがて、時のアリーナの方角から、明るい音楽が聞こえてくる。


ポルガンが窓へ視線を向けた。


「舞の訓練が始まっているようですね」


「見てみよっか!」


二人は立ち上がると、並んでベランダへ向かった。


2階に有る休憩室のベランダからは、時のアリーナがよく見える。


東京ドームほどの大きさを持つ巨大な施設。


今夜は開閉式の屋根が大きく開かれ、アリーナのステージの向こうに、本物の夜空が広がっていた。


巨大ステージでは、薄化粧を施された、美しい深雪と踊り子たちが舞の訓練をしている。彼等は全員、インカムを着けていた。

舞の指導が演出家から、逐一されているようだ。


深雪は聖具の衣装を身に纏い、美しいタンバリンを鳴らしながら、京扇子を翳した踊り子たちの中央で身体を動かしていた。


その背後にある建物の壁と、ステージ全体には、色鮮やかな映像が投影されている。


海の上を進む巨大な船。


水面から跳び上がるイルカ。


夜空を流れる星。


光り輝く城。


映像に合わせ、三人の白魔法使いも霧、風を操り、踊り子たちの舞をさらに美しく飾っていた。


まるで、ネズニーシーで行われる夜のショーのようだった。


モニタールームで確認しながら、プロジェクションマッピングを操作しているのは、リアとナルだった。


二人はステージから少し離れた操作席に並び、タブレットの画面を夢中になって触っている。


そのすぐ隣では、パンダが二人の操作を見守っていた。


「次はこれー!」


リアが映像を切り替える。


壁一面に満開の桜が映し出され、風に舞う桜の花びらが深雪と踊り子たちを包み込んだ。


「ナルは、これがいいー!」


ナルが別の映像を選ぶ。


今度は、夜空いっぱいに打ち上げ花火が広がった。


あくまでも、建物の壁とステージへ投影された映像の花火。


赤や青、金色の大輪が次々と開き、踊り子たちの背後を華やかに彩る。


ナルはその映像を見つめていたが、突然、何かを思い付いたように顔を上げた。


「そうだ!」


ナルが勢いよく立ち上がる。


「こんなのも、できるかも!」


ナルはパンダの四次元ポシェットから、自分用に買ってもらった打ち上げ花火コレクションを取り出した。


打ち上げ花火を一つ選び、両手で握って夜空へ向けた。


ナルが魔力を流し込むと、打ち上げ花火から熱を持たない光の玉が勢いよく飛び出した。


ヒュルルルルルル――!


夜空へ駆け上がった光が、時のアリーナの遥か上空で弾けた。


ドォォォン!


大きな音が、精神と時の空間の夜空へ響き渡る。


巨大な金色の花火が開き、アリーナだけでなく、その周辺まで明るく照らした。


休憩施設の壁と窓が、僅かに震える。


「わあ……!東京のタワマンから見た、隅田川花火大会みたい!」


真央が声を上げた。


打ち上げ花火の音を聞き、休憩施設の使用人たちも次々と廊下や玄関へ出てくる。


「何の音でしょう?」


「時のアリーナの方です!」


「綺麗……」


料理人や侍女、清掃を担当していた使用人たちまで仕事の手を止め、夜空を見上げていた。


ナルが上げた金色の花火が消える前に、今度はリアが両手を空へ向ける。


「ナルだけずるーい! リアもやるー!」


ヒュルルルルルル――!


ドーン!


青と桃色の花火が同時に開き、夜空へ巨大な花を描いた。


「もう一回!」


「ナルもー!」


リアとナルは、プロジェクションマッピングの操作を放り出し、夢中になって打ち上げ花火を上げ始める。


パンダは二人を見比べると、呆れたように肩を落とした。


「仕方ないにゃー」


空いた操作席へ座り、二人が途中まで操作していたプロジェクションマッピングを引き継ぐ。


パンダは黙ってプロジェクションマッピングを切り替え、本物の花火に合わせて映像を同期させた。


パンダが操作すると、ステージの壁へ映し出されていた花火の映像が、本物の打ち上げ花火と同じ色へ変化した。


本物の花火が夜空で開くたび、ステージや建物にも光の花が広がる。


白魔法使いたちは、そのまま舞の演出を続けていた。


離れた休憩施設まで、打ち上げ花火の音が何度も届いた。


ドーン!


ドォォォン!


真央とポルガンは、並んで窓の前に立ち、その光景を見つめていた。


「夜の訓練も綺麗ね」


「本当だね」


二人の顔を、花火の光が赤く、青く、金色に染める。


真央は、そっとポルガンの手を握った。


ポルガンも、その手を優しく握り返す。


真央は少し迷うような表情を浮かべたあと、繋いでいない方の手を小さく動かした。


身体を屈めて。


そんな合図だった。


ポルガンは首を傾げながらも、真央に合わせて身体を屈める。


「どうしました?」


真央は答えなかった。


背伸びをすると、そのままポルガンの唇へ、自分の唇を重ねる。


ポルガンの目が、大きく見開かれた。


ドォォォン!


夜空に、ひときわ大きな花火が開いた。


金色の光が雨のように降り注ぎ、二人の姿を窓越しに照らす。


短い口付けのあと、真央は恥ずかしそうに顔を離した。


「……初めてだからね。」


「え?」


「私の、初めてのキス。」


ポルガンの頬が赤くなる。


「俺もです。」


「本当に?」


「嘘です。」


「もぉ!ポルガン君!」


二人は見つめ合い、もう一度、少しだけ顔を近付けた。


その時――。


コンコン。


休憩室のベランダに続くガラスの扉が叩かれる。


真央とポルガンは、慌てて身体を離した。


「真央様、ポルガン様。入ってもよろしいですかみゃ?」


扉の向こうから、娘娘の声が聞こえる。


「娘娘ね、入りなさい!」


真央が返事をすると、扉が開いた。


娘娘が部屋へ入ってくる。


「パンダ様の命令で、お二人を迎えに来ましたみゃ。時のアリーナで、皆様がお待ちですみゃ」


娘娘は二人の赤くなった顔を交互に見た。


「……お二人とも、暑いんですかみゃ?」


「ち、違うわ!」


真央が慌てて答える。


ポルガンは口元へ手を当てながら、窓の外へ視線を逸らした。


娘娘は不思議そうに首を傾げたが、すぐに笑顔を浮かべる。


「急いでくださいみゃ。リア様とナル様が、凄い花火を上げてますみゃ!」


「ええ。今、ベランダから見ていました」


ポルガンが答える。


「それでは参りましょう」


真央が立ち上がり、再びポルガンの手を握った。


今度は、先ほどよりも強く。


ポルガンも微笑み、その手を握り返す。


三人は、打ち上げ花火が鳴り響く夜の中、時のアリーナへ向かって歩き出した。


娘娘に案内された真央とポルガンは、時のアリーナへ到着した。


巨大なアリーナでは、夜間訓練が続いている。


こちらの訓練場では、レオンを中心に、ミカエラ、ユリウス、兵士たち、白魔法使い、黒魔法使いたちが訓練を行っていた。


兵士たちの手には、昨日、鈍器ホーテで買った手持ち花火が握られている。


兵士たちが手持ち花火へ白魔法を流し込むと、色鮮やかな火花が周囲を美しく浄化し始めた。

魔力によって燃焼時間も増幅され、一度火をつければ十五分ほど楽しむことができる。


夜風に揺れる火花は眩しすぎることもなく、夜間訓練にはちょうど良い明るさだった。


「隊列、維持!」


ユリウスの号令が響く。


白魔法使いたちは、手持ち花火を媒体にして周囲を浄化しながら前進する。

その後ろでは、黒魔法使いたちも見様見真似で白魔法を使い、花火から広がる浄化の範囲を少しずつ大きくしていた。


「いい感じね。」


ミカエラは訓練する兵士たちを見回し、満足そうに微笑む。


「昨日は鈍器ホーテで買い物したから、夜の訓練にして良かったわね。たまには夜の訓練もやりましょう。」


兵士たちから笑顔がこぼれる。


「綺麗ですね!」


「夜の訓練も悪くないな!」


「花火のおかげで周りも見やすい!」


楽しそうな声が、夜のアリーナへ響いていた。


その時だった。


ドォォォン!


夜空に大きな花火が咲く。


レオンは空を見上げ、思わず笑みを浮かべた。


「リアとナルか。」


続いて、青と桃色の花火が夜空を染める。


遠く離れた場所でも、二人らしい花火だとすぐに分かった。


レオンは足元へ置いてあった袋から、昨日買った十本入りのロケット花火を取り出す。


一本一本を丁寧に並べると、静かに聖魔法を重ねた。


「綺麗に咲いてくれ。隅田川花火大会みたいに!」


ヒュルルルルル――!


十本のロケット花火が次々と夜空へ駆け上がる。


パァーン!パンパーン!


金、青、銀、紫。


聖魔法によって増幅された花火は、まるで夜空いっぱいに咲く巨大な花のようだった。


遠く離れたモニタールーム。


夜空を見上げていたリアが、大きく目を輝かせる。


「あっ! パパだよ!」


ナルも嬉しそうに飛び跳ねた。


「ほんとだー! パパだー!」


二人は顔を見合わせる。


「返事しよう!」


「うん!」


二人は、パンダの四次元ポシェットから取り出して床いっぱいに広げていた、自分たち用の打ち上げ花火コレクションから新しい花火を選び出した。


ナルが一つ。


リアが一つ。


それぞれ魔力を流し込む。


ヒュルルルルル――!


ドォォォン!


ドォン!


一つの打ち上げ花火から、何発もの大輪が次々と夜空へ咲き誇る。


赤。


桃色。


金。


虹色。


夜空いっぱいに咲き続ける花火は、まるで「ありがとう」と返事をしているようだった。


パンダはプロジェクションマッピングを操作しながら、その光景を見上げる。


「仲良し親子だにゃ。」


深雪は踊りを止めることなく、美しいタンバリンをシャラシャラと鳴らし続ける。


踊り子たちも、演出家の指示に合わせながら舞い続けた。


高橋は、その幻想的な舞台へ夢中でカメラを向けている。


「……いい。」


思わず漏れた、その一言。


深雪と踊り子たちの舞。


パンダが操る映像。


夜空へ咲き誇る本物の花火。


そのすべてが一つの舞台となり、ファインダーの中で完成していた。


一方、レオンたちの様子は照明スタッフと音声スタッフが、それぞれの持ち場でしっかりと撮影している。


互いを信頼しているからこそ、高橋は自分の担当へ集中していた。


夜空では、まだ幾つもの花火が咲き続けている。


その美しい光景を見上げながら、誰もが思った。


――こんな夜の訓練も、悪くない。


こうして精神と時の空間の夜は、笑顔と花火に包まれながら、更けていくのだった。








娘娘だみゃ!

ポルガン様、ラーブラーブ。

高橋もファイヤーだみゃ。

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