済 第70話 買い物天国 いざ!鈍器ホーテ
「今朝は高橋が散々だったけど。今日は――遊び倒すにゃ!」
パンダが笑う。
リアとナルが同時に声を上げる。
「どこ行くの!?」
「楽しみ!」
パンダは胸元からドコデモゲートを取り出した。
「まずは軽くウォーミングアップにゃ。」
ゲートが開く。
「デパ地下に行くにゃ!」
――こうして、その日のうちに東京駅へ。
今回のメンバーは、パンダ、リア、ナル、真央、ポルガン、橘。
そして撮影担当として、テレビ局の照明スタッフが同行していた。
「皆さん、おはようございます!」
照明スタッフがカメラに向かって笑顔を見せる。
「今日は異世界の皆さんと東京駅のデパ地下を巡ります!」
その映像は、日本全国、世界各国へ生中継されていた。
デパ地下に入った瞬間、甘い香りが広がる。
「すごーい!」
リアが目を輝かせる。
「お菓子いっぱい!」
ナルも興奮して走り回りそうになる。
「ママー!全部食べたい!」
「全部は無理にゃ。お酒も入ってるのがあるしにゃ、全店舗で3袋ずつお買い上げすると深雪は喜ぶと思うにゃ!」
パンダが笑う。
真央は洋菓子売り場で足を止めた。
「見て見て!ポルガン、可愛いクッキー!私は全部5袋ずつおかいあげするわぁ」
「包装まで芸術ですね。」
ポルガンが感心する。
橘はメモを取りながら頷いた。
「これは異世界でも売れそうですね。」
パンダは試食をもらうたびに満面の笑み。
「これ美味しいにゃ!」
「これも!」
「これも買うにゃ!これはパンダの分もお買い上げにゃ」
照明スタッフが笑う。
「パンダさん、絶好調ですね。」
「今日は特別にゃ!」
リアとナルはお土産選びに夢中だった。
「これは深雪!」
「レオンパパにはこれ!」
「梅子にはクッキー!」
名前を呼びながら、一つ一つ丁寧に選んでいく。
真央が優しく微笑む。
「いい子たちね。」
ポルガンも頷いた。
「きっと喜ばれます。」
パンダは大量の紙袋を抱えて満足そうに言う。
「これでみんな喜ぶにゃ!」
橘が笑う。
「いい休日のスタートですね。」
――その日の買い物は大成功に終わった。
そして――
パンダがにやりと笑う。
「ここからが本番にゃ。」
リアとナルが同時に声を上げる。
「まだあるの!?」
「もっと行くの!?」
パンダは胸元から金色のドコデモゲートを取り出した。
「デパ地下は前菜にゃ。」
ゆっくりとゲートが開く。
「今日は――買い物天国にゃ!」
その先には、巨大な店舗の光景が広がっていた。
ドコデモゲートを潜ると、巨大な鈍器ホーテの店内が広がっていた。
色とりどりのお菓子。
山積みになった飲み物。
ずらりと並ぶお酒。
「うわぁぁぁ!」
リアとナルが思わず歓声を上げる。
「相変わらず、すごいにゃー!」
パンダも店内を見渡しながら笑顔になる。
すると次の瞬間――。
精神と時の空間に待機していた修行中の仲間達約二百人が、次々とドコデモゲートから現れ始めた。
「休みだー!」
「日本の店だ!」
「今日は食べ物買い放題だ!」
さらに龍の巣の医療空間からも、梅子を先頭に三十名の研究スタッフが姿を現す。
「やっと休日ね。」
「一ヶ月ぶりの外だ!」
店内は一気に活気に包まれた。
テレビ局のカメラは、その様子を世界中へ生中継している。
日本では昼の特番として放送され、海外でも同時配信。
異世界では、各地の集会所に設置された屋根付き街灯テレビの前へ、大勢の国民が集まっていた。
「始まるぞ!」
「勇者様と兵士達のお買い物だ!」
子ども達は最前列に座り、大人達も笑顔で画面を見守る。
その時、店内に掛かる音楽が途切れ、店内放送が流れた。
『ピンポーン♪』
レオンがマイクを持ち、穏やかな声で話し始める。
「皆さん、お待たせしました。
本日は一日だけの休日です。
今日は思う存分、日本のお買い物を楽しんでください。」
店内から拍手が起こる。
「ただし、いくつかルールがあります。」
全員が耳を傾けた。
「予算は一人三万円。
購入できるのは、食べ物、飲み物、お酒のみです。」
「はーい!」
「買った商品は、必ずビニール袋へ自分の名前を油性マジックで書いてください。」
「名前さえ書いてあれば、」
「パンダのパンダ柄スペアポシェット、」
「深雪の豹柄スペアポシェット、」
「梅子先生の白いスペアポシェット、」
「どれへ収納しても構いません。」
梅子が手を振る。
「研究所まで運ぶ手間がなくて助かるわ。」
レオンは微笑んだ。
「なお、受け取り漏れのないよう、各自ビニール袋には必ず名前を書いてください。名前のない袋は持ち主が分からなくなりますので、ご協力をお願いします。」
「そして、本日のお代は――」
全員が息を呑む。
「魔王様が負担してくださいます。」
「おおおおーーーっ!!」
店内が大歓声に包まれた。
パンダがガッツポーズをする。
「魔王様、太っ腹にゃー!」
「それでは皆さん!」
レオンが最後に宣言する。
「外の世界ではたったの三時間ですが、精神と時の空間では丸一日あります。龍の巣の皆さんは丸二日です。」
「時間はたっぷりありますので、慌てず、安全に、楽しく買い物をしてください。」
「はーーい!」
二百三十人を超える歓声が店内に響いた。
「それでは――」
レオンが右手を高く掲げる。
「買い物大会、スタート!」
その合図と同時に、店内中へ買い物かごを手にした人々が散らばっていく。
高橋は真っ先にペットフード売り場へ走る。
「今日は自分のお金じゃないけど、ちゃんと予算内で買います!」
魔獣用の餌を二万円分、次々とかごへ入れていく。
残り一万円ではビールや自分用のおつまみを選び、満足そうに頷いた。
深雪が笑う。
「今度は俺のお菓子じゃないんだな。」
「はい! 今回はちゃんとルールを守ります!」
その返事に店内は笑いに包まれる。
世界中の視聴者が見守る中、日本と異世界を繋ぐ史上最大の買い物大会が幕を開けた。
ど、ど、ど、鈍器ー!鈍器でなぐれー!
買い物天国!理性をがち殴りー!
高橋です。
ビールを一箱、三角ディレクターの分買いました。
お菓子使っちゃったお詫びです。




