↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/135

済 第55話 レオン、白魔法継承



魔王城でのお見合いを終えたレオンとパンダは、ようやく二人きりの時間を過ごそうと、千葉県のレオン邸へ戻ってきた。


玄関の扉を閉めた瞬間。


レオンはパンダの腰へ腕を回す。


「今度こそ、誰にも邪魔されないよな?」


パンダも嬉しそうにレオンの胸へ抱きついた。


「子供達が帰ってくるまで、まだいっぱい時間あるにゃ。」


「じゃあ――」


ピロン。


レオンのスマートフォンが鳴った。


二人は抱き合ったまま、動きを止めた。


「……誰だ。」


画面には、ポルガンの名前が表示されている。


パンダが頬を膨らませた。


「またポルガンにゃ。」


「出ないと、あとで面倒なことになりそうだな。」


レオンは仕方なく通話ボタンを押した。


「どうした、ポルガン?」


スマートフォンの向こうから、切迫したポルガンの声が聞こえてきた。


『レオンさん!』


『すぐに城へ来てください!』


レオンの表情が変わる。


「何があった?」


『先ほど爺から連絡がありました。』


『保護していた白魔法のモンク僧ユリウスが危篤状態です。』


『もう、ほとんど時間がありません。』


「白魔法のモンク僧か。どれほどの使い手なんだ?」


パンダも心配そうに画面を覗き込む。


ポルガンは急いで続けた。


『はい。ユリウスは、最後にレオンさんへ白魔法を継承しなければならないと言っています。』


『法王庁の地下には、俺達が想像していた以上に恐ろしい闇の力が溜まっています。』


『レオンさんの白魔法を、今よりも強化しなければなりません。』


レオンはすぐに頷いた。


「分かった。」


「今から行く。」


パンダはレオンの腕を掴んだ。


「パンダも行くにゃ。」


「ああ。」


レオンはパンダの手を握る。


二人の身体が白い光に包まれた。



アルメリア城――客室。


ベッドの上には、一人の老人が横たわっていた。


長く伸びた白髪。


深く刻まれた皺。


痩せ細った身体。


かつては屈強なモンク僧だったとは思えないほど、弱り切っている。


ベッドの側にはポルガンと、城の老執事が立っていた。


「ユリウス様。」


老執事が声を掛ける。


「レオン様がいらっしゃいましたぞ。」


ユリウスは薄く目を開けた。


「……来たか。」


掠れた声だった。


レオンは急いでベッドの横へ膝をつく。


「ユリウス。」


「僕に白魔法を継承したいって、本当なのか?」


ユリウスはゆっくりと頷いた。


「法王庁の地下で……見ただろう。」


「あの闇は……ただの魔物ではない。」


「三千年もの間、人々が積み重ねた憎しみ、悲しみ、妬み、絶望。」


「あれらが、瘴気となり……一つの意思を持ち始めている。」


レオンは地下で見た、広大な闇の空間を思い出した。


無数のダークスライム。


底の見えない亀裂。


肌を刺すような、濃密な悪意。


「僕の浄化魔法じゃ、足りないのか?」


「今のままでは……まるで足りぬ。」


ユリウスは震える手を持ち上げ、レオンの胸へ触れた。


「お前は黒魔法と白魔法、両方の素質を持つ。稀にみぬ才能の持ち主だ。」


「だが、白魔法の使い方が荒い。」


「魔力に任せて、ただ放っているだけだ。」


レオンは少し気まずそうに目を逸らした。


「確かに。」


ポルガンが小さく頷く。


「レオンさん、魔力配分が雑ですからね。」


「うるさい。」


ユリウスは僅かに笑った。


「お前に、儂の白魔法をすべて渡す。」


「浄化。」


「治癒。」


「再生。」


「結界。」


「生命力の分配。」


「長い年月をかけて身につけた、すべての術と経験を。」


パンダが心配そうに尋ねる。


「全部渡したら、ユリウスはどうなるにゃ?」


ユリウスは静かに答えた。


「死ぬ。」


部屋が静まり返った。


レオンは眉をひそめる。


「ほかに方法はないのか?」


「ない。」


「儂の身体は、もう限界だ。」


「このままでも、今日を越えられぬ。」


老執事が俯く。


「ユリウス様は、何年もの間、呪いを結界で封じ続けてこられました。」


「先王様の暴走を抑え、城の者達を守るために。」


ポルガンも唇を噛んだ。


「俺達のために、命を使い切ったんです。」


ユリウスはレオンを真っ直ぐ見つめる。


「迷うな。」


「儂の力を、お前が未来へ繋げ。」


「法王庁の地下に眠る闇を、必ず浄化しろ。」


レオンは拳を強く握った。


「……分かった。」


「必ず無駄にはしない。」


ユリウスは満足そうに目を細める。


「継承には、身体を通じて直接魔力を流す必要がある。」


「額を合わせるだけでは足りぬ。」


レオンが首を傾げる。


「どうすればいい?」


ユリウスは淡々と答えた。


「口づけだ。」


数秒、誰も喋らなかった。


レオンは目を見開く。


「は?」


パンダも目を丸くする。


「キスにゃ?」


ポルガンは真剣な顔で頷いた。


「古い魔法の継承方法です。」


「生命力と魔力を、最も近い距離で繋げる必要があります。」


レオンは痩せ細った老人を見る。


「ユリウスと?」


「そうだ。」


「口と口で?」


「そうだ。」


レオンは天井を見上げた。


「僕、最近キスで何でも解決してないか?」


パンダが背中を押した。


「ユリウスが死んじゃうにゃ。」


「早くするにゃ。」


「分かってるけど!」


ユリウスが弱々しく笑った。


「儂とて、若い女ならともかく……男と口づけする趣味はない。」


「早くしろ。」


「死ぬぞ。」


「分かったよ!」


レオンは覚悟を決め、ユリウスの身体を抱き起こした。


「いくぞ。」


「ああ。」


レオンはユリウスへ口づけをした。


その瞬間。


眩い白い光が部屋中へ広がった。


「うわっ!」


パンダ、ポルガン、老執事が眩しさに腕で顔を覆う。


レオンの身体へ、凄まじい量の白い魔力が流れ込んでくる。


治癒魔法の構造。


浄化魔法の制御。


結界の組み立て方。


魂と生命力の繋がり。


数百年にわたり、ユリウスが積み重ねてきた知識と経験が、濁流のようにレオンの中へ流れ込んだ。


レオンの黒髪が白い光に揺れる。


背中には、巨大な光の翼が一瞬だけ現れた。


やがて光が静まり、レオンはゆっくりと唇を離した。


「……凄い。」


自分の両手を見つめる。


これまで曖昧だった白魔法の流れが、はっきりと理解できる。


どれほど魔力を使えばいいのか。


どこへ力を流せばいいのか。


どうすれば対象だけを浄化できるのか。


すべてが分かる。


ポルガンが息を呑んだ。


「レオンさんの魔力が、完全に変わりました。」


「以前よりも、ずっと澄んでいる。魔力の量も増えている。」


ユリウスは満足そうに笑った。


「これで……良い。」


その身体から、急速に力が抜けていく。


レオンは慌てて支えた。


「ユリウス!」


「しっかりしろ!」


「儂の役目は……終わった。」


ユリウスは目を閉じかける。


しかし、その直前。


小さく呟いた。


「最後に……。」


「何だ?」


ユリウスの瞼が僅かに開く。


「鮭おにぎりが……食いたかった。」


レオンとパンダは顔を見合わせた。


「鮭?」


「おにぎり?」


老執事が涙を拭いながら説明する。


「以前、パンダ様からいただいた鮭のおにぎりが、たいそう美味しかったそうです。」


「もう一度食べたいと、ずっと申しておりました。」


パンダは慌てて四次元ポシェットへ手を入れた。


「あの時、レオンの指輪をくれたお爺さんだったのにゃ!」


「鮭おにぎりなら、いっぱいあるにゃ!」


包装された鮭おにぎりを取り出し、レオンへ渡す。


レオンは袋を開け、ユリウスの口元へ運んだ。


「ほら。」


「鮭おにぎりだ。」


ユリウスは震える口を開き、小さく一口齧った。


ゆっくりと噛む。


その顔に、穏やかな笑みが広がった。


「……うまい。」


「米とは……不思議な食べ物だな。」


もう一口。


しかし、飲み込む力が残っていない。


ユリウスの手が、静かに落ちた。


「ユリウス!」


レオンが名前を呼ぶ。


返事はない。


呼吸も、ほとんど止まっている。


老執事が膝をつき、泣き崩れた。


「ユリウス様……。」


ポルガンも俯く。


「間に合わなかった……。」


レオンはユリウスの顔を見つめていた。


「まだだ。」


「レオン?」


パンダが顔を上げる。


レオンはユリウスの胸へ手を置いた。


継承されたばかりの白魔法。


生命力を分け与える術。


今なら、以前よりも正確に使える。


レオンは静かに息を吸った。


「僕の寿命と魔力を分け与える。」


ポルガンが驚いて顔を上げる。


「待ってください!相手は エルフです!」


「どれほど必要になるか分かりません!」


「分かる。」


レオンは自分の胸へ手を当てた。


「ユリウスから教わった。」


「この人は、まだ死にたくない。」


「鮭おにぎりを、最後まで食べたいと思ってる。」


ユリウスの口元には、食べかけのおにぎりが残っている。


レオンはユリウスの身体を抱き起こした。


パンダが察して尋ねる。


「またキスするにゃ?」


「それが一番効率がいい。」


「今日は男と二回もキスするのか……。」


パンダが真剣な顔で頷いた。


「人命救助にゃ。」


「後でパンダが上書きするにゃ。」


「頼む。」


レオンは再びユリウスへ口づけをした。


今度は継承ではなく、生命を与えるために。


白い光が二人を包む。


レオンの生命力が、少しずつユリウスへ流れ込んでいく。


百年。


二百年。


三百年。


それでもユリウスの身体は、まだ生命を求めている。


「レオンさん!」


ポルガンが叫ぶ。


「もう十分です!」


レオンは離れない。


さらに生命力を流し込む。


四百年。


五百年。


その瞬間。


ユリウスの身体が激しく輝いた。


長く伸びていた白髪が、根元から艶のある銀髪へ変わっていく。


深く刻まれていた皺が消える。


痩せ細っていた腕と胸に、逞しい筋肉が戻っていく。


曲がっていた背筋が伸び、身体が一回り大きくなった。


ポルガンが目を見開く。


「若返っている……。」


レオンはようやく唇を離した。


ベッドに横たわっていたのは、もう老人ではなかった。


長い銀髪。


尖った耳。


整った精悍な顔立ち。


鍛え抜かれた、筋骨隆々の身体。


見た目は三十歳ほどの、恐ろしく美しいエルフの青年である。


ユリウスはゆっくりと目を開けた。


「……儂は。」


自分の手を見つめる。


「生きているのか?」


レオンは息を切らしながら笑った。


「五百年分の寿命と、魔力二百を分けてやった。」


「鮭おにぎりくらい、最後まで食え。」


ユリウスは驚いた顔でレオンを見つめる。


やがて大きな涙を流した。


「馬鹿者……。」


「力を託した相手から、逆に寿命を与えられるとは思わなかったぞ。」


レオンは残っていた鮭おにぎりを差し出す。


「ほら。」


「食えよ。」


ユリウスはおにぎりを受け取り、大きな口で頬張った。


「うまい!」


先ほどとは比べ物にならない声量だった。


「鮭おにぎり、うまいぞ!」


「もう一個あるか!」


パンダは四次元ポシェットから、次々とおにぎりを取り出す。


「鮭!」


「鮭マヨ!」


「焼き鮭!」


「いくらもあるにゃ!」


ユリウスは目を輝かせた。


「全部食う!」


老執事は目の前の銀髪の美青年を見つめ、口を震わせる。


「本当に……ユリウス様なのですか?」


「そうだ。」


ユリウスは胸を張った。


上半身の筋肉が大きく盛り上がる。


服は老人の身体に合わせたものだったため、胸と肩の部分が今にも破れそうになっている。


ビリッ。


実際に肩の布が破れた。


パンダが口を開けたまま見上げる。


「モンクジジイが、イケメンマッチョエルフになったにゃ。」


ポルガンも呆然と呟く。


「これはもう、ジジイと呼んでいいのか分かりませんね。」


ユリウスは二個目の鮭おにぎりを食べながら笑った。


「儂は七百六十二歳だ。」


「ジジイで間違いない。」


レオンは疲れ切った顔で床へ座り込む。


「見た目だけ若すぎるだろ……。」


ユリウスはレオンの肩へ逞しい腕を回した。


「レオン!」


「儂のすべてを受け継いだお前は、今日から儂の弟子に決まりだ!」


「そして命を分け合った、魂の伴侶でもある!」


レオンの顔が引きつった。


「伴侶はやめろ!」


「僕にはパンダがいる!」


パンダもレオンの腕へしがみつく。


「レオンはパンダの夫にゃ!」


ユリウスは豪快に笑った。


「はっはっはっ!」


「ならば儂は、白魔法の伴侶だ!」


「それも嫌だ!」


ポルガンは笑いを堪えながら、スマートフォンを取り出した。


「深雪へ連絡しておきましょう。」


「レオンさんが、イケメンマッチョエルフの老人と二回もキスしたと。」


「絶対に言うな!」


「テレビ局にも知らせますか?」


「知らせるな!」


ユリウスは三個目の鮭おにぎりを頬張りながら、レオンへ顔を近づける。


「安心しろ。」


「儂は男色ではない。」


「お前のことは、少し気に入っただけだ。」


「近い!」


レオンはユリウスの顔を手で押し返した。


パンダはその光景を眺め、ぽつりと呟く。


「ホモムンクジジイ、爆誕にゃ。」


「誰がホモムンクジジイだ!」


「術は継承した。だが、お前の身体は、まだ儂の術について来られん!」


「明日から三ヶ月余り――若の誕生日、運命の日まで、徹底的に鍛えるぞ!」


ユリウスの大声が、アルメリア城中へ響き渡った。


こうしてレオンは、伝説のモンク僧が持つ白魔法のすべてを継承した。


そして世界には、新たな脅威――。


鮭おにぎりが大好きな、七百六十二歳のイケメンマッチョエルフが誕生したのである。






ユリウスだ。

儂はまだジジイだぞ。

見た目が若くなっただけだ。

それと、ホモムンクジジイではない。

鮭おにぎりをもう一つくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。