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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。ギャグと哲学とファンタジーをぶち込みました。スマホ勢にも優しい小説です  作者: ヘタレパンダ


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済 第48話 初めての実戦(ACってなに?)



法王庁地下ダンジョン――第五層。


討伐隊は、地球の冒険音楽を響かせながら、ゆっくりと石造りの通路を進んでいた。


第一層から第七層まで存在していた魔獣は、昨日レオンが放った浄化魔法によって、ラスボスを除いてすべて消滅している。


残っているのは、古びた罠と宝箱だけだった。


深雪は、先ほど回収した宝石のような魔石をカメラへ見せながら歩いていた。


「確かに、宝箱は凄いよなー。」


「中にはレアアイテムが入ってるし。」


辺りを見回す。


青白い魔石に照らされた通路には、埃一つ落ちていない。


壁も床も天井も、異様なほど綺麗に磨き上げられていた。


「しかし、見事に澄み切った空間だよなぁ。」


騎士団長が苦笑した。


「先ほどの宝箱は、宝物だけ吐き出して死んでいましたね。」


通路の隅には、真っ二つに割れた宝箱の残骸が転がっている。


本来なら侵入者へ襲いかかる、宝箱型の魔獣だったらしい。


しかしレオンの浄化魔法によって魔獣部分だけが消え、中に入っていた宝物だけが床へ落ちていた。


「そーだなー。」


深雪は頷く。


「魔獣は全部消えてるなー。」


「まあ、いろいろ槍が飛んできたり、巨大な石が転がってきたりはしてるけど。」


その瞬間。


壁から無数の槍が飛び出した。


レオンは振り返りもせず、片手を上げる。


「燃えろ。」


ボォォォッ!


黒い炎が槍を包み込み、一瞬で灰へ変えた。


続いて、通路の奥から巨大な岩が転がってくる。


「邪魔だ。」


再び黒い炎。


巨大な岩は跡形もなく燃え尽き、黒い粉となって床へ散った。


深雪は呆れたように肩をすくめる。


「レオンが全部、黒魔法で燃やして塵にしてるからなぁ。」


レオンは得意そうに胸を張った。


「黒魔法なら任せろ!」


「ファイアなんて、ちょろいもんだぜ。」


そのまま大きな欠伸をする。


「ふぁあああ……。」


ミカエラが眉をひそめた。


「緊張感ないわね。」


「敵いないからな。」


レオンは眠そうに答える。


しばらく歩いていると、レオンの胸元にあるペンダントから、穏やかな音楽と優しい声が流れてきた。


『もったいないの精神で――』


少し間を置いて、また同じ声。


『もったいないの精神で――』


ミカエラは首を傾げた。


「ところで深雪。」


「さっきから何度も、『もったいないの精神で』ってレオンのペンダントから聞こえるけど、一体なんなの?」


後ろを歩いていた白魔法使いも頷く。


「それに、えーしー、えーしーと繰り返していますね。」


深雪は眠そうに答えた。


「ああ。」


「視聴率は高いから、番組そのものが差し替えにはならないと思うけど。」


「さっきからネットのコメントも静かなんだよなぁ。」


カメラへ顔を近づける。


「日本時間、もう夜中だろ?」


「みんなテレビつけたまま寝てるんじゃね?」


レオンも頷いた。


「そうだな。」


「誰も何も言わないし、俺達にも取れ高がない。」


深雪はため息をつく。


「だからテレビ局も、こんな時間に流せる普通のCMがなくなったんだろうな。」


「公共広告ばっかり流してる。」


ミカエラはさらに首を傾げる。


「公共広告?」


「商品を売るためじゃなくて、社会に呼びかけるCMだよ。」


「じゃあ、えーしーって?」


「公共広告を作ってるところの名前。」


「へぇー。」


ミカエラは少し納得したように頷いた。


またペンダントから声が流れる。


『えーしー。』


深雪は大きな欠伸をした。


「俺達も寝た方がいいかもなー。」


レオンも眠そうに目を擦る。


深雪は前を歩く団長へ声をかけた。


「団長さーん。」


「休憩所とかないのー?」


「朝から歩きっぱなしだよー。」


「トイレ休憩と軽食タイムは、何回かあったけどさ。」


深雪は感心したように後ろを振り返る。


「トイレまで浄化されて、古い設備なのにピカピカだったよなぁ。」


レオンの肩を叩く。


「すげーぜ、レオン。」


「歩くサンポール。」


レオンは半分眠りながら答えた。


「もう好きに呼べ。」


「諦めた!」


深雪が笑う。


騎士団長は地図を確認した。


「もう少し進んだ所に、兵士用の休憩所がありますよ。」


「休みますか?」


深雪が即答する。


「休もう!」


レオンも手を上げる。


「休もう。」


ミカエラも頷いた。


「賛成。」


騎士達も一斉に声を上げる。


「休みましょう!」


「腹が減りました!」


「酒はありますか!」


深雪はカメラへ向き直った。


「おい、スタジオー!」


「俺達、休むからなー!」


「聞いてるかー?」


「今、何時だよー!」


数秒ほど返事がない。


深雪が眉をひそめる。


「寝てんのかー?」


ようやく、慌てた声がペンダントから聞こえた。


『えっ?』


『あっ、はい!』


『聞こえてますよ!』


『休むんですね?』


『何時間ですか?』


深雪は笑った。


「今、絶対寝てただろ。」


『寝てません!』


「嘘つけ!」


スタジオから咳払いが聞こえる。


『それで、休憩時間は?』


「休憩所で飯食って、歯磨いて寝るわー。」


『分かりました。』


『こちらも眠れるので助かります。』


『ちなみに、日本時間は午前1時です。』


地球。

西暦2031年10月12日、日曜。

日付は、既に変わっていた。


『中継は一度切りますか?』


レオンがすぐに口を挟んだ。


「食事の様子は流さないの?」


深雪は呆れた顔で振り返る。


「どーせ、コンビニおにぎりだろ?」


「俺のスペアポシェットに入れてあるやつ。」


深雪が豹柄のスペアポシェットをポンポンと軽く叩く。


「違うぞ。」


レオンの目が輝いている。


「二日分の食事だから、普通のサンドイッチもたくさん入ってる。カップラーメンもだ!」


ミカエラが振り返る。


「本当に?」


「ああ。」


レオンは指を折りながら説明する。


「ミカエラのお気に入りの、セブンヌレブンのふわふわメロンパンも入れたって。」


さらに嬉しそうに続ける。


「特別に茨城のパン屋で買った、僕の大好きな焼きそばパンとコロッケパンも入れてくれたって。」


「台湾ネギパンと、トロトロ卵の入ったカレーパンも。」


レオンは口元を押さえる。


「涎が出る……。」


ミカエラも目を輝かせた。


「本当に!?」


「日本のパン屋さんって、凄く興味深いわねー。」


「いいわぁ。」


「大好きよ、パンダちゃん。」


そして急に真剣な表情になる。


「飲み物とか、スイーツは?」


「フルーツ酎ハイもいいわよねー。」


レオンは胸を張った。


「何でも入ってるぞ。」


「ビールも冷えたまま入れたしな。」


その瞬間、騎士団から歓声が上がった。


「ビール!」


「冷たい酒ですか!」


「パンもあるぞ!」


「スイーツとは何だ!」


深雪は頭を抱えた。


「なんか、ピクニックみたいになってきたなぁ。」


再びペンダントから公共広告の音楽が流れる。


『えーしー。』


深雪は顔をしかめた。


「あ、またACの音楽流れてる。」


騎士団長が前方を指差す。


「あそこです。」


「休憩所に着きました。」


石造りの扉を開けると、中には長い木製のテーブルと椅子。


壁際には簡素な寝台がいくつも並んでいた。


深雪はカメラへ向かって叫ぶ。


「スタジオー!」


「フルーツチッパーでも流せよ!」


「今から休憩だー!」


「飯食うぞー!」


数秒後。


明るく軽快な音楽が流れ始めた。


重苦しいはずの地下ダンジョンが、一気に休日の行楽地のような空気へ変わる。


深雪はスペアポシェットへ手を入れた。


「まずは、パン!」


焼きそばパン。


コロッケパン。


台湾ネギパン。


ふわふわメロンパン。


フルーツサンド。


卵サンド。


ツナサンド。


次々とテーブルへ並べられていく。


「飲み物!」


冷えたビール。


フルーツ酎ハイ。


麦茶。


烏龍茶。


ジュース。


さらにプリン、ゼリー、シュークリームまで現れる。


騎士達は目を輝かせた。


「これが日本のパン!」


「柔らかい!」


「中に料理が入っているぞ!」


「冷たい酒だ!」


「甘い!」


ミカエラはふわふわメロンパンを両手で持ち、満面の笑みを浮かべた。


「やっぱり、これ好き。」


レオンは焼きそばパンを頬張る。


「うまい。」


深雪は冷えたビールの缶を開けた。


プシュッ。


「なんか平和だなぁ。」


一口飲み、満足そうに息を吐く。


そしてペンダントへ呼びかけた。


「ポルガーン。」


「聞いてるかー?」


「お前の親父はどうなんだー?」


少し間を置いて、眠そうなポルガンの声が聞こえた。


『聞いてますよ。』


『相変わらず緩いですね。』


深雪は笑う。


「悪かったな!」


ポルガンは欠伸混じりに続けた。


『父上は大人しくなりました。』


『レオンさんの浄化魔法が、こちらまで流れてきたみたいです。』


レオンはパンを食べる手を止めた。


「僕の魔法が?」


『はい。』


『父上を押さえていた兵士達も、今は疲れて眠っています。』


『俺も、さっきまで寝ていました。』


『今、トイレに起きたところです。』


画面には、深夜にもかかわらず大量のパンや酒を楽しむ討伐隊が映っている。


ポルガンはため息をついた。


『こんな時間に、食べている映像を見たらまた太ってしまうので寝ます。』


『おやすみなさーい。』


ブチッ。


通信が切れた。


深雪はビールをもう一口飲んだ。


「おおー。」


「冷えたビール、美味ー!」


缶を掲げる。


「ありがとなー、パンダ!」


すぐにパンダの眠そうな声が返ってきた。


『うん。』


『深雪。』


『パンダも、もう寝るにゃー。』


『おやすみー。』


「おやすみー!」


通信が切れた。


休憩所には、楽しそうな笑い声と軽快な音楽が流れている。


魔物のいない地下ダンジョン。


冷たいビール。


大量のパン。


深夜二時の世界同時中継。


深雪は辺りを見回しながら、ぽつりと呟いた。


「これ……。」


「本当にダークキングスライム討伐番組だよな?」


誰も答えなかった。


全員、食べるのに夢中である。


深雪は空になったビール缶をテーブルへ置くと、勢いよく立ち上がった。


「よーし!」


「せっかく世界同時中継なんだから、盛り上げるぞー!」


騎士達が顔を上げる。


「おおっ!」


深雪は木のスプーンをマイク代わりに握る。


「スタジオー!」


「音楽!星度剣の鯉!」


数秒後。


軽快なリズムが休憩所へ流れ始めた。


「きたきた!」


深雪は笑顔で身体を揺らしながら、人気歌手・星度剣の代表曲を歌い始めた。


優しく、それでいて伸びのある歌声。


リズムに合わせて踊る姿は、普段のお調子者とは思えないほど格好いい。


騎士達は目を丸くする。


「う、上手い……。」


「こんな歌まで歌えるのか!」


「踊りも凄いぞ!」


手拍子が自然と広がっていく。


やがて休憩所中が拍手と歓声に包まれた。


「アンコール!」


「もう一曲!」


「深雪様ー!」


深雪は得意げに胸を張る。


「いやー、それほどでも。」


その横でレオンが立ち上がった。


「じゃあ次は僕。」


深雪が目を丸くする。


「え?」


「歌えんの?」


レオンはニヤリと笑う。


「舐めるな。チャスティ・バービー のSorre」


音楽が切り替わる。


世界的人気歌手・チャスティ・バービーのアップテンポな楽曲。


レオンは英語の歌を軽やかに歌い始めた。


発音は驚くほど綺麗。


甘く伸びる高音に、女性騎士達から歓声が上がる。


「きゃー!」


「格好いい!」


「レオン様ー!」


深雪は思わず拍手した。


「お前、そんな隠し芸持ってたのかよ!」


レオンは照れ笑いを浮かべる。


「若い頃、少しカラオケで練習した。」


「女口説く為にか?」


「違う!それはお前だろ!!」


「俺はこう見えても、歌って踊れるアイドルにもなりたかったの!まぁ、俺が主役になるより、誰かを主役にしたかっただけだけどね。例えばパンダとか!」


拍手はさらに大きくなる。


「アンコール!」


「もう一曲!」


「レオン様!」


しかしレオンは首を横に振った。


「今日は主役じゃない。」


そう言って深雪の背中を軽く叩く。


「深雪。」


「最後、お前が締めろ。」


深雪はニヤリと笑った。


「任せろ!紅蓮系ね!」


再び音楽が流れる。


今度は大人気アニメ主題歌として知られる**『紅蓮系』**。


深雪は真剣な表情へ変わった。


力強く響く歌声。


高音も低音も美しく伸び、休憩所全体へ響き渡る。


途中から騎士達が手拍子を始め、


最後は全員が立ち上がって大歓声を送った。


「ブラボー!」


「最高だ!」


「世界中の人が見てるぞ!」


深雪は照れ臭そうに頭を掻く。


「いやぁ、今日は喉の調子が良かっただけ。」


レオンは笑いながら肩を叩いた。


「嘘つけ。」


「普通にプロ並みだったぞ。」


ミカエラも微笑む。


「戦場の前とは思えないくらい、楽しい夜になったわね。」


休憩所は拍手と笑顔に包まれ、世界同時中継のコメント欄にも、


『討伐番組なのにライブが始まった!』


『深雪、歌うますぎ!』


『レオンまで歌えるの!?』


『最高の休憩時間!』


という書き込みが次々と流れていった。


深雪はスペアポシェットを覗き込んだ。


「もう一本飲もーっと。」


冷えたビールを取り出す。


その時、手元が滑り、缶を大きく振ってしまった。


レオンが横目で見る。


「おい、吹き出すぞ。」


「平気平気!」


深雪は気にせず、缶の蓋へ指を掛けた。


プシュゥゥゥッ!


「うわっ!」


勢いよく噴き出したビールが、深雪の顔から髪まで豪快に降りかかった。


一瞬、休憩所が静まり返る。


レオンが呆れた顔で叫んだ。


「何やってんだよ! 深雪の馬鹿!」


ミカエラは口元へ手を当てる。


「あらあら、大変。」


深雪は濡れた前髪をかき上げた。


「冷てぇー!」


レオンが尋ねる。


「着替えるのか?」


「えー、もういいよ。眠いから。」


深雪は缶の中を覗き込み、残念そうに眉を下げた。


「ちぇー。随分減っちゃったー。」


そのまま残ったビールを一気に飲み干す。


「片付け、片付け。」


空き缶と散らかったゴミを集め、ゴミ用の黒いビニール袋にまとめ、スペアポシェットへ仕舞った。


休憩所に用意された寝台に横になったレオンが、深雪を呼ぶ。


「深雪!」


「うん!」


深雪はカメラへ顔を向ける。


「カメラマン、撮るなよ。」


そう言いながら、レオンの隣へ寝転がり、その身体へぴったりとくっついた。


カメラマンは返事をする。


「はーい。」


しかしカメラは止めない。


「仲がいいんだか、悪いんだか。」


レオンと深雪がじゃれ合う姿をしばらく映したあと、カメラマンは笑いながら告げた。


「中継、一旦切りまーす。」


レオンが鼻をひくつかせる。


「深雪、ビール臭いぞ。」


深雪が悪戯っぽく笑った。


「えへへ。キスしたくなったか?」


直後、目を見開く。


「あ! やば!」


深雪は慌てて音声スタッフを見る。


「音声も切れよ!」


それからレオンの胸元を指差す。


「それとレオン、ペンダントオフな。」


「了解。」


レオンがペンダントを操作する。


音声スタッフも親指を立てた。


「了解です。」


機材のランプが消える。


ペンダントから流れていた音も止まった。


さっきまで笑い声と音楽で賑やかだった休憩所が、急に静かになる。


深雪はレオンへさらに身体を寄せた。


やがて穏やかな寝息だけが、第五層の兵士用休憩所に響き始めた。








フェイ太郎だみゃ

ゆるゆるだみゃ

おやすみなさいだみゃ

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