済 第41話 消えたポルガン
ドコデモゲートを抜けると、澄み渡る青空が広がっていた。
目の前には大きな泉。
周囲には色とりどりの花が咲き、多くの人々が行き交っている。
「此処が泉の広場です。」
ポルガンが振り返り、一同へ微笑んだ。
「パンダ様が俺達の世界で初めて、コンビニを三店舗建てられた記念の場所です。」
「おお……。」
橘もコマチ会長も思わず見入る。
その時だった。
泉の水面が淡く輝き始める。
やがて黄金色の文字が浮かび上がった。
『ようこそ。エオンモール創設メンバー達。』
「これは……。」
橘が目を丸くする。
「魔法ですか?」
ポルガンは静かに首を振った。
「泉の男神様からのお言葉です。」
「男神様?」
「ええ。最近は御神託だけでなく、『こんな商品を売ってほしい』と商品リクエストまでくださいます。」
パンダが吹き出す。
「神様までお買い物する時代にゃね。」
「ですが、このような歓迎のお言葉を頂いたのは初めてです。」
コマチ会長は帽子を取り、深く頭を下げた。
「ありがたい……。」
それにつられるように、一同も静かに頭を下げる。
その時だった。
「わーい!」
アイスを片手に走ってきた幼い子供が、ポルガンへ勢いよくぶつかった。
べちゃっ。
アイスがポルガンの上着に付いてしまう。
「しまった!」
兵士達が一斉に駆け寄る。
「無礼者! 何をしている!」
怒鳴ろうとした兵士を、ポルガンは左手を軽く上げて制した。
「構わない。」
遅れて母親が青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「申し訳ございません! ポルガン様! 大切なお召し物を……。」
一方、子供は転んだアイスを見つめ、泣き出してしまった。
「うわぁぁん……。」
「お母さんに頼んで、やっと買ってもらったアイスなのにぃ……。」
ポルガンはしゃがみ込み、子供と目線を合わせる。
「泣くな。」
そう言って金貨を一枚差し出した。
「これで新しいアイスを買うといい。」
子供は驚いて目を丸くする。
「領主様の目!綺麗」
「ふふ。ありがとう。今度はアイスだけではなく、家族みんなの食べ物も買うんだぞ。インスタントラーメンも日持ちがするから、おすすめだ。」
「は、はい……。ありがとうございます。」
ポルガンは立ち上がる。
「誰か。着替えを。」
「はっ!」
兵士が急いで駆け寄り、ウニクロの上着を差し出した。
ポルガンは慣れた手つきで着替えを済ませた。
その様子を恐々見ていた、広場にいた人々がホッとした表情を浮かべる。
それを見ていたコマチ会長が微笑む。
「民に慕われている、良い領主様ですな。」
ポルガンは少し照れ臭そうに笑った。
「領主らしくなれたのは最近ですよ。まだまだ未熟者です。」
上着の襟を整えながら続ける。
「このウニクロの服も動きやすくて気に入っています。」
赤城が笑った。
「無印強品もおすすめだぞ!」
「無印強品?」
「家具も服も食べ物も良い。エオンモールに入る予定だから楽しみにしててくれ。」
「それは楽しみだ。」
ポルガンは嬉しそうに頷いた。
「テナントを決める前に、日本のエオンモールを何か所か見学させてもらうつもりです。」
一行はアルファード二台へ乗り込み、建設予定地へ向かった。
しばらく走ると、視界いっぱいに広大な森が広がる。
一本だけ真っすぐ延びる新しい道路。
その先には、まだ何も建っていない広大な土地があった。
「こちらがエオンモール建設予定地です。」
ポルガンが大地を見渡した。
「まだ道路しか完成していません。」
橘は周囲を見回す。
「ずいぶん広いですね。」
「隣国では、日本から農業技術を学びたいという声も上がっています。」
ポルガンは静かに続けた。
「この世界には、まだまだ開発できる土地がたくさんあります。もちろん、ただで教えていただこうとは思っていません。我々の世界にも珍しい資源や生物や植物があります。」
橘は頷いた。
「良いお話です。帰国したら農林水産大臣へアポイントを取ります。」
「こちらの世界に農家はいないのですか?」
「おります。しかし、まだ機械化は進んでおりません。」
その言葉に、コマチ会長が力強く頷く。
「任せてくだされ。」
その瞬間だった。
突然、空中から老人の声が響いた。
「──ポルガン様! 大変です!」
全員が驚いて周囲を見回す。
「どうしたのだ、爺?」
ポルガンだけは落ち着いた様子で空を見上げた。
老人の切羽詰まった声が再び響く。
「御父上が隔離部屋から脱走しました!」
ポルガンの表情が一変する。
「なんだと!」
その場の空気が一気に張り詰めた。
「分かった! 今すぐ向かう!」
ポルガンはパンダへ振り返る。
「すまない。パンダ。」
「う、うん!」
「皆さんの案内を頼む!」
「任せるにゃ!」
ポルガンは深く一礼すると、小さく指を鳴らした。
ポワン。
白い煙がふわりと立ち上る。
煙が晴れた時には、そこにポルガンの姿はもうなかった。
重機の動く音だけがこだまする建設予定地。
橘が呟く。
「……お父上に、一体何があったんだ。」
誰も、その答えを知らなかった。
どうも!
忘れられてる、可哀想な夫のレオンです。
子供達、深雪一家共に忘れられてます。
魔法の勉強頑張ってます!
今は白魔法に行き詰まってる所です。
頑張れ!俺!
ポルガンの父親居たんだ?




