済 第38話 逃げ出した白魔法の教師
地球
西暦2031年10月06日月曜。
それから一週間後――。
レオンは魔王の妻、ミカエラの指導を受けながら、黒魔法と白魔法の勉強を続けていた。
一方パンダは、いつものようにリアとナルを千葉の幼稚園へ送り届ける。
「フェイ太郎、お願いするにゃ。」
「キュイ!」
フェイ太郎が小さく鳴くと、風魔法がふわりと二人の身体を包み込んだ。
リアとナルは空中へゆっくり浮かび、そのまま幼稚園の門まで運ばれていく。
「いってきまーす!」
「いってくるねー!」
「帰りも迎えに来るにゃよー!」
パンダは二人に手を振ると、魔王城へ向かった。
音楽室へ入ると、レオンとミカエラがコンビニのフルーツサンドを食べながら、真剣な表情で話し合っていた。
「レオーン、ミカエラー。」
「どうしたにゃー?」
パンダが尋ねる。
ミカエラは苦笑した。
「レオンに白魔法を教えていた先生が、逃げ出しちゃったのよ。」
「えー!?」
「どうしてにゃ?」
「記憶力が凄すぎるの。」
「昨日、一冊教えたら、今日は全部暗記。」
「しかも応用問題まで全部解いちゃったのよ。」
「先生が『私が教えることはもうありません』って泣きながら帰っちゃったわ。」
パンダは目を丸くした。
「あー、なるほどにゃ。」
「黒魔法の方はどうにゃ?」
レオンはフルーツサンドを一口食べ、笑顔で答える。
「さっき黒魔法学校の入学試験を受けてきた。」
「全問正解だ。」
「一週間で!?」
「ミカエラに黒魔法の知識を貰ったからって、化け物だにゃ!」
「応用力試験もあるってポルガンが言ってたにゃー。」
レオンが苦笑する。
「パンダ。」
「お前、まだポルガンと仲が良いのか?」
「イケメンだけどにゃー。」
「十九歳で、あんなたくさん髭生やした男はパンダの好みじゃないにゃ。」
「大丈夫にゃ。」
「それよりポルガンがね、白魔法を教えられる人に心当たりがあるって。」
「法王様とLINEして、七つくらいの国から偉い人を集めてくれるって言ってたにゃ。」
「それは助かる。」
レオンは烏龍茶を飲み干すと、ニヤリと笑った。
「パンダ。」
「ちょっと見てろ。」
「僕の指輪の性能実験をする。」
「ミカエラ。」
「僕にキスしろ。」
「えっ?」
パンダが目を丸くする。
ミカエラは少し笑うと、レオンの膝へ腰掛けた。
そして、そっとレオンへ深く口づけする。
パンダの表情がみるみる歪んだ。
レオンは左手を見せる。
「ほら。」
「青いままだろ?」
「凄い指輪だ。」
爽やかな笑顔だった。
「レオンの馬鹿ー!」
「知らんにゃ!」
パンダはぷいっとそっぽを向く。
レオンは笑いながら言った。
「お前がポルガンと仲良くするのも、こういう事だからな。」
パンダは振り返る。
「違うにゃ!」
「パンダとポルガンは親友にゃ!」
「変なこと言うと怒るにゃよ!」
そう言うと、スタスタ歩き始めた。
「あっ!」
「ポルガンが『銀河Hey You伝説』見終わったって報告しようと思ったのに!」
「レオンの馬鹿!」
パンダは怒ったまま走って行ってしまった。
レオンは大きくため息をつく。
「ミカエラ……。」
「頼む。」
「膝から降りてくれ。」
「パンダのことを見ていたら、魔力が抑えられなくなった。」
その瞬間――
レオンの左手にはめられた指輪が、ゆっくりと青色から桃色へ変わり始めた。
ミカエラは慌てて立ち上がる。
「あら、大変。」
「このままだと、ハンサムがゴブリンになっちゃうわね。」
レオンから少し距離を取る。
すると、指輪は少しずつ青色へ戻っていった。
その時だった。
ブルッ。
レオンのスマートウォッチが震える。
画面を見る。
『エオンモール作るの決まったよ。』
送り主――パンダ。
レオンは思わず吹き出した。
「……仕事だけは、本当に早いな。」
パンダです。
……
ポルガンです。
パンダさん怒ってますよ。
レオンさーん。




