第37話 黒薔薇の呪い
静かな空気の中、魔王はパンダ一家を城の最奥へ案内した。
重厚な扉がゆっくり開く。
そこは歴代魔王の肖像画が飾られた広間だった。
「これを見てくれ。」
魔王が一枚の肖像画を指差す。
そこに描かれていたのは、今とはまるで別人だった。
漆黒の肌。
青黒く艶やかな長い髪。
九頭身の引き締まった体。
鋭くも優しい瞳。
「……イケメン。」
思わずパンダが呟く。
「また出たよ、イケメーン。」
真央が苦笑した。
魔王も照れ臭そうに笑う。
「これは一年前の我だ。」
レオンは何度も現在の魔王と肖像画を見比べた。
「信じられん……。」
「本当に同一人物なのか。」
魔王は静かに頷いた。
「全ては、禁書の間へ入った日から始まった。」
その言葉に部屋の空気が変わる。
「禁書の間には、歴代魔王ですら立ち入る事を禁じられた、禁断の黒魔法が封印されている。」
「我は世界を守る方法を探していた。」
「そして……。」
魔王は遠くを見るように目を閉じた。
「封印されていた悪魔を目覚めさせてしまった。」
暗闇の中。
悪魔は不気味に笑いながら現れた。
『ようやく会えたな……魔王よ。』
その手には、一輪の黒い薔薇。
『この薔薇を受け取るがよい。』
『代わりに、お前には滅びの黒魔法を授けよう。』
魔王はその瞬間、自分でも理解できないほど膨大な黒魔法の知識が頭へ流れ込むのを感じた。
その代償として――
身体は醜い姿へ変わっていった。
悪魔は高笑いを残し、闇へ消えていった。
魔王はガラスケースの前で立ち止まる。
中には、一輪の黒い薔薇が静かに飾られていた。
花弁はまだ美しく咲いている。
しかし、数枚は既に散っていた。
「この薔薇が最後の一枚まで散った時。」
「我の命も終わる。」
レオンが真剣な表情で尋ねる。
「残された時間は。」
「長くても三年。」
「早ければ一年半だ。」
魔王は黒い薔薇を見つめた。
「それまでに白魔法をS級まで極め。」
「黒魔法A級ライセンスを取得できれば……。」
「呪いを解ける可能性がある。」
真央が小さく息を呑む。
「ナル君は、まだ小さすぎる。」
「でも……。」
「レオン様なら……。」
言いかけた真央は口を閉じた。
レオンは静かに尋ねる。
「何だ?」
魔王の妻、ミカエラが一歩前へ出る。
「お願い。」
「私の寿命を半分、あなたに渡します。」
「そして、私が今までに千年かけて覚えた黒魔法の半分を、あなたへ託したいの。」
「半分だけでも、今日からA級相当の知識を得られるわ。」
「後は実際に使いこなす修行を積めばいい。」
「受けてくれる?」
「駄目だ!」
魔王が慌てて叫ぶ。
「ミカエラ!」
「そんな事をしたら、お前の寿命が!」
ミカエラは優しく微笑んだ。
「あなたがいなくなった後、二千年も生き続けるなんて……。」
「そんな未来は、私には地獄よ。」
「残りの寿命が半分になってもいい。」
「あなたと同じ時間を生きたい。」
魔王は言葉を失った。
レオンは二人を見つめる。
そして、ゆっくり頷いた。
「分かった。」
「どうすれば、その知識を受け継げる?」
ミカエラは穏やかに微笑む。
「簡単よ。」
一歩近づく。
レオンは思わず身構えた。
次の瞬間。
ミカエラはレオンへそっと口づけをした。
青く美しい光が二人を包み込む。
無数の魔法陣が宙へ浮かび上がり、黒魔法の知識が光の粒となってレオンの身体へ流れ込んでいく。
「――っ!」
レオンは目を見開き、身体を硬くした。
膨大な知識が、一瞬で頭の中へ流れ込む。
白魔法とは異なる。
重く、深く、そして恐ろしく繊細な黒魔法。
パンダは何も言わなかった。
フェイ太郎はリアの左腕に抱かれながら、両手で自分の両目を隠した。
パンダはリアとナルの小さな手を、ぎゅっと握る。
二人にはまだ、この口づけに込められた覚悟の重さを知らなくていい。
部屋には、青い光だけが静かに揺れていた。
あーどうしよう、ファイナルファンタジーとか、ドラクエとか、ほとんどプレイした事ないんだよな。
黒魔法ってなんだっけ?白魔法ってなんだっけ?
家にたくさんゲームソフトあるけど。
今から、プレイすんの??無理だろ!!
そうだ!!チャッピーに聞けば良いんだ!!
助けてチャッピー!!




